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[ 単行本 ]
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小説作法ABC (新潮選書)
・島田 雅彦
【新潮社】
発売日: 2009-03
参考価格: 1,260 円(税込)
販売価格: 1,260 円(税込)
Amazonポイント: 12 pt
( 通常2〜5週間以内に発送 )
中古価格: 520円〜
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・島田 雅彦
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カスタマー平均評価: 4.5
もしかすると本書を読んで作家になる人が出てくるかもしれない
法政大学における著者の講義を録音・加筆・編集して誕生したのが本書だそうです。じつは私は、最初こいつは世間によくある中身の薄い即席マニュアル本か、とたかをくくって読みはじめたのですが、最後の「私が小説を書く理由」のところに差し掛かると、珍しくもきちんと正座して「島田よくも書いたり!」と感嘆しながら拝読させていただいた次第です。
読み終えての感想は、これは最近新聞連載が終わった彼の大作「徒然王子」に勝るとも劣らぬ本気の作品ではなかろうか、ということでした。この本は、これまで作家が営々と蓄積してきた豊かな経験と該博な知識と教養、そして知情意のすべてを投入した見事な現代文学論であり、著者は、「風変わりな人生論」という側面をあわせ持つ本格的な小説制作の技術書兼プロ作家養成用の教科書を堂々と完成させたのです。
「小説家は死ぬまでおのが脳と肉体を実験台にして、愚行を重ね、本能や感情や論理の分析を行うアスリートである」と語る著者は、本書を全国の大学、高校、カルチャーセンターなどでテキストにしてほしいと「あとがき」で書いていますが、谷崎潤一郎の「春琴抄」の恐怖の失明シーンをはじめ、随所に続々登場する古今東西の文芸作品の引用文を味読するだけでも十分に私たちの文学趣味を満足させてくれる内容をもっています。
著者はまず第一講でいきなり文学を、神話、叙事詩、ロマンス、小説、百科全書的作品、風刺、告白の七種類に分類し、それらの代表選手としてそれぞれ「スターウオーズ」、「家なき子」、「ドラクエ」、「ドン・キホーテ」、「白鯨」、「ガリヴァ旅行記」「私小説」を挙げて私たちに軽いジャブを浴びせます。
それからおもむろに第二講で「小説の構成法」を論じ、以下「小説でなにを書くのか」「語り手の設定」「対話の技法」「小説におけるトポロジー」「描写/速度/比喩」「小説内を流れる時間」「日本語で書くということ」「創作意欲が由来するところ」までの全一〇講をよどみなく語り来たり、語り去るのです。
私はこれまで文学や小説作法を学校で教えることなど到底不可能だと決めてかかっていたのですが、もしかすると本書を読んで作家になる人が出てくるかもしれない、と思うようになりました。
そして最後の最後に著者が、
「作家は(村上春樹のように)幸福の追及に向かうか、(笙野頼子のように)夢の荒唐無稽と向き合うか、それが問題です。前者は妥協の反復を、後者は戦いの反復を強いられます」と述べ、
「しかし優れた作家たちは果敢に夢の荒唐無稽に向き合い、自分を縛る象徴システムを壊すような作品を書き続けるでしょう。その覚悟ができたら、果敢に自分の無意識の底まで下りていきましょう。そして、おのが欲望、本能を解放するのです」
と、自分自身を激しくアジテーションするとき、私は久しぶりに文学者の真骨頂に接したという熱い充足感を覚え、叶うことなら著者と共に私たちの文学の未来を信じたいと思ったことでした。
余談ながら、かつて私はたった一回だけですが、著者に仕事でインタビューしたことがあります。そのとき彼は、私が最初の質問を発する前にビールを注文し、そいつをいかにもうまそうに喉を鳴らしてごくりと一口飲んでから、「すみません、いつもインタビューを受けるときは必ずビールを飲むことにしているんです」と言いましたので、私はボードレールの「巴里の憂欝」の中に出てくるあの有名な詩を思い出しました。
『君はつねに酔っていなければならぬ。それが君のゆいいつの大事な問題だ。酔い給え。酒に、詩に、美徳に、その他何にでも。時の重さにくたばらないために……。』(拙訳)
島田雅彦は、その人生の重大事をよく心得えつつ、最長不倒距離を目指して疾駆しているあの指揮者ロリン・マゼールを想起させる超クレバーな作家と言えるでしょう。そのクレバーさが彼の芸術のゆいいつの欠点であるとはいえ。
パンチがほしい。 小説作法としてあるので、途中で課題も出てくる。いわゆる演習問題である。しかし最低限でまとめてきたという感じが終始漂っている。ので、何となく物足りない。
上手に作ってあるのは間違いない。しかしながら・・・エッ、これかよ!というインパクト・パンチがほしい。ちょっと残念である。 読書上級者を目指す人への―読書作法ABCとしても☆ デビュー以来、第一線で活躍し続ける作家にして、大学教授。
しかも、チャン・ツィイーと二人で雑誌の表紙を飾るほどの、ナイス・ミドルである著者の最新作は
大学の講義をベースに、自身の作家人生の中で習得した「小説作法」を教授する本作。
タイトルのとおり、本書の記述のほとんどが小説の書き方に割かれます。
ですから単純に考えれば、読み手にはあまり関係のない話―
とも思えます。
しかし、たとえば
料理を、直感的な好き嫌いで判断するのではなく、
その善し悪しを吟味しようとするのであれば
料理の作り方や食材についての知識が必要であるのと同じように
小説を深く味わおうとするのであれば
作家がどのような点に留意し、苦悩したのかを知らなくてはいけない。
そうした観点からすると、
本書は作家が最低限留意すべき点―読者が小説を読むときに注意すべき点―
が紹介された、読書作法ABCとも言えます。
個別の記述については、興味深い点が毎ページあり
何度も読み返したくなるのですが、
とりわけ記憶に残ったのは、
筆者の無意識まで読み解くことで、読者と筆者の理想的な関係が築かれる
―という箇所。
そして
(あまり本筋には関係のない)韓流ドラマで記憶喪失が描かれるのは、軍役のメタファーだ
―という指摘。
なるほどなぁと感心しきりです。
小説家を目指す方のみならず
より一歩上級の自覚的な読書をしようとする方に
ぜひとも、ぜひとも読んでいただきたい著作です☆☆
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[ 単行本 ]
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向田邦子全集〈1〉小説1 思い出トランプ
・向田 邦子
【文藝春秋】
発売日: 2009-04
参考価格: 1,890 円(税込)
販売価格: 1,890 円(税込)
Amazonポイント: 18 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,500円〜
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・向田 邦子
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カスタマー平均評価: 0
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[ 単行本 ]
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海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉 (塩野七生ルネサンス著作集)
・塩野 七生
【新潮社】
発売日: 2001-08
参考価格: 1,995 円(税込)
販売価格: 1,995 円(税込)
Amazonポイント: 19 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,100円〜
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・塩野 七生
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カスタマー平均評価: 4.5
ヴェネツィアの誕生と、驚異の政体、細やかな風俗描写 西ローマ帝国末期の5世紀、ゲルマン蛮族の侵入から逃れるためにやむを得ず干潟の上に逃れた人々がいた。今では観光都市として賑わうヴェネツィアの始まりである。
この上巻では、イタリア都市に恋する著者が勃興から13世紀までを生き生きと描いてくれる。
なぜヴェネツィアだけが比較的安定して1000年以上存在出来たのか。徹底的な商人気質のヴェネツィア人が、宗教からの適度な距離を保ち、専制君主の出ない共和国政体に自らを変革したことが最も大きな原因であろう。
公平さを保つための仕組みには関心するばかりである。元首や政治家の選出にはクジ引き(!)と選挙を繰り返す。任期も短い。再選の条件も厳しい。公務員に決定・指導権はなく、あくまでも政治家になった貴族が主導する。性悪説に基づく相互監視体制が元首も含めた政治家・国民に対しても敷かれる。
政治や戦争を中心とした歴史物であるが、女性ならではの観点から当時の女性の風俗についての考察も見逃せない。 納得した 3年前、何の予備知識もなく立ち寄ったベネチアで感じた、「何で島なの?」「どうして街中テーマパークみたいなんだろう?」という疑問に答えてくれました。領土をほとんど持たない都市国家ベネチアが1000年以上も存続した、学校の歴史では教えてくれなかった史実に感動して夢中で読んでしまいました。テーマごとに書かれており、年代が前後して頭が混乱してしまい、ベネチアの隆盛期がよくわからなかったのが残念。 1000年の歴史を感じる名作 かつて地中海世界に燦然と君臨した都市国家、ヴェネチア共和国。その1000年余の歴史を丹念に追った傑作歴史文学。
フランク族の侵入から逃れた人々が、干潟に移住したのがヴェネチアの起源。以来、その歴史は、常にとどまることのない不断の努力によって支えられていた。
海運と交易をもって歴史に名乗りを上げた創成期。
海軍力をもって十字軍に参戦、コンスタンティノープルを占領し、ライバルのジェノヴァを抑えて地中海の制海権を握った成長期。
無敵の海軍で地中海を我が海とし、芸術の繁栄も極めたルネサンス期の全盛期。
新興国オスマン・トルコとの闘いに苦しみながらも、工業国家、そして農業国家へと構造転換することに成功した後期。
国家としては小さなものになりながらも、観光都市として最後まで輝き続けた晩期。
そして18世紀末、ナポレオンに占領される事で、国家は静かにその終わりを迎える。
本書の面白さは、国家をあたかも一つの人生のように眺め、国家体制や産業構造の変遷も含め、国自体を一つの人格としてトータルに描いている事。人間と同じように、国家における幼年期?青年期?中年期?晩期がつまびらかに描写される。そしてその歴史は、素晴らしい人生がいつの時期も輝き続けるように、時代ごとに異なった輝きをもって、1000年の時を刻み続けた。
本書は人物本意のありがちな歴史本ではない。むしろ個人より組織というものが大事にされていたヴェネチア共和国を描くにあたっては、過剰な人物への思い入れは正確な描写の妨げとなる。国家自体を一つの人格として描くというこの手法、ヴェネチアを描写するのに最適な手法と感じさせられる。
本書を読んで、筆者塩野氏のヴェネチアへの限り無い愛情を感じると共に、かつてこのような奇跡のような国が存在したことを知って、自分自身へのかけがえのない財産となった。日本では知名度の低いヴェネチア共和国であるが、その歴史はまさに人間の可能性を感じさせられるたいへん素晴らしいものだ。もっと多くの人に知られてよい歴史だと思う。
本書は通算2回読んでいる。一回目は10年以上前に日本で、二回目はヴェネチア旅行の際に旅のおともとして。本書を読んでから、私もすっかりヴェネチアびいきである。
塩野氏の歴史文学では”ローマ人の物語”と並ぶ双璧だと思う。一生を共にしていけるような素晴らしい本に出会えた事に感謝して5点満点献上。 海と結ばれた栄光の都市国家千年の興亡史。ここから日本が学べることは。。。 以前に「文芸春秋」に、”有力者のえらんだ日本のわかいひとたちにおすすめの歴史書”、みたいな特集があり、トップ3にはいっていたのです。それで初めてよんだのですが。。。
日本とおなじように海洋国で、貿易により繁栄を築いた栄光の国、ヴェネツィアの興亡史。強烈におもしろく、一気に読ませていただきました。
フン族の王アッテイラの攻撃から都の形成、貿易の成功による経済大国としての繁栄、途中でレパントの海戦やコンスタンティノープルの攻防を含む十字軍の戦いのサブストーリイも魅力的で、そして政治・外交能力の低下とともに影響力が下降してついにせめ滅ぼされるまでの壮大な歴史絵巻。
ヴェネツィアの成功の歴史は実に、戦後から近年までの日本と酷似しているのです。国家の原動力は強力な経済の活気であり、そしてともに海洋国家で大海という天然の国境に守られていましたが、ともに同じ運命を歩みかねないのではないか。。。少々心配になります。
日本人の先輩たちがこのくにの未来を背負うこれからのかたがたにぜひよんでほしい、と選んだのは同感で、よくわかります。名著であり、星5つ、絶対のおすすめ歴史モノです。
ローマ人の物語シリーズが終わることを心配な方へ・その3 これまでこのレビュー・タイトルで、「神聖ローマ帝国」と「ビザンツ帝国」の本について書きましたが、ローマ人の物語シリーズが大団円を迎えた後、お薦めする作品の大本命は同じ作者による本作ということになるでしょう。残念ながら文庫本は品切れのようですが、私が持っている文庫本版で上下巻併せて千頁を超す大作。ゲルマン民族に追われ、撃退して独立を保ってから、ナポレオンに滅ぼされるまでの、ヴェネツィア共和国(いかに徹底して君主制を排除したかも丁寧に書かれています。)の悠久の千年の歴史は、必ずや読者を惹きつけてやまないでしょう。ヴェネツィアを中心に、ライヴァル国(例えば同じイタリアならジェノヴァ等の他の海洋国家、イタリア外ではビザンツ帝国やオスマン・トルコ)との抗争、他のイタリア都市国家や法王との集合離散など、イタリア千年の歴史を俯瞰するのに格好の本です。作者には「レパントの海戦」等、本書に取り上げられた1エピソードに焦点を合わせた一連の好著がありますが、まずは本書でマクロ的にヴェネツィアを中心とするイタリアの通史を抑えてから、個々のエピソードの本を読むとよいのではないでしょうか。聖地巡礼パック旅行やヴェネツィアの女たちといった章もあり、本書は当時の人々の生活に目を配ることも忘れていません。これだけ充実した内容でこの分量、一度読み始めるとまさに巻を置くこと能わず、読書の醍醐味を味わうことができるでしょう。
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[ 単行本 ]
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海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉 (塩野七生ルネサンス著作集)
・塩野 七生
【新潮社】
発売日: 2001-08
参考価格: 2,100 円(税込)
販売価格: 2,100 円(税込)
Amazonポイント: 21 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,332円〜
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・塩野 七生
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カスタマー平均評価: 4.5
したたかなヴェネツィア、しかし国防に失敗 上巻に続いて、ヴェネツィアの繁栄から緩やかで優雅な死までを描いた大作である。塩野女史が他の作品に描いた東地中海の歴史物語をヴェネツィア側からじっくり堪能できるのが楽しい。
下巻では、スペイン等の強力な海洋帝国の出現とトルコとの戦いにより、徐々に海洋国家の実力を失い、イタリア本土の農園経営によりヴェネツィア人気質が変化する様子が描かれる。最後はナポレオン相手に非武装中立を唱え占領され、静かにその歴史の幕を下ろす。
しかし、数百年に渡って貴族が無償で共和国の国政に携わる気概、民主主義の主体かつ人財プールとしての元老員、非常時には10人程度で迅速に国家方針を決めてしまう委員会等は、国体として参考としたいものだ。我が国の参議院も国家的人財プールたることを願って止まない。
しかし、ヴェネツィアがイスラム占領下のエルサレム聖地巡礼パックツアーまで実施していたとは驚きである。しかも滅亡寸前の平和時には、ヴェネツィアそのものを観光地化した才覚には本当に呆れるばかりだ。外資を呼び込む観光立国の先駆けだ。 塩野女史のベネツィアへの愛情がこの本の魅力です 私の敬愛する竹田青嗣氏によれば、世の中の価値観は「真・善・美」に集約されるという。
この考えが正しいのであれば、歴史の場合、「善・悪」の価値観で評価するのではなく「真・偽」の価値観で認識すべき「事象」のように思う。
「情」と「理」の対立軸でいうならば、「情」で評価するのではなく、「理」で評価すべきなのではということ。
塩野女史の著書を通読していると、彼女の歴史観というのは、、常に「善・悪」や「情」でなく、「真・偽」及び「理」の視点で認識しようとする姿勢があり、非常に気に入っている。
しかしながら、塩野女史は、「善・悪」で評価はしないものの、「好き・嫌い」で評価しているところは読み手も共感できるところだ。本人も言及している「カエサル」好きはともかく、「ヴェネツィア」に対する彼女の愛情はこの著書を読みながらひしひしと読者に伝わってくる。
下巻の394ページより、
「栄枯盛衰が歴史の理ならば、せめてこのヴェネツィアのように、優雅に衰えたいものである。そして、ヴェネツィアが優雅に衰えられたのは、ヴェネツィアの死が、病気や試練をいく度も克服してきた末に自然死を迎える人間の、死に似ていたからではないだろうか。」
あらゆる苦難を国民の団結と知恵で切り抜けてきたヴェネツィア。私はこの「第13話 ヴィヴァルディの世紀」の最後に記されたこの文章を繰り返し読みながら、すっかりヴェネツィアの虜になってしまった。 最盛期を迎えた国家が衰退に向かい滅亡するまで・・ ジェノヴァとの制海権争い、オスマントルコとの断続的な戦争を戦い抜くヴェネティアだが、時代はすでに大航海時代にはいっていた・・・。海運の衰えを工業や農業の発展で補い、18世紀にヴェネティア文化は爛熟に至った。同世紀末、ナポレオンのイタリア侵攻により同国の独立は終わりを告げる・・・。「歴史家は、国の衰退はその国の国民の精神の衰微によるという。だが、なぜ衰微したかについては、われわれが納得できるような説明を与えてくれない。」 著者は、隆盛を極めたひとつの国家が終焉を迎えるまでを丹念に描いていく。こうも言う。 「少なくともヴェネティア史に関するかぎり、このような単に精神の衰微や堕落のみに立脚した論にどうしても賛同することができない。」 こうした視点で描かれる歴史は、前巻に増して、諫言・警句・教訓に富み、飽かせない。 「20世紀のわれわれは、君主制はすべからく悪である、という色めがねを外すことから始めなければならない。」 「社会の上下の流動が鈍り、貧富の差が固定化し、結局はその社会自体の持つヴァイタリティの減少につながる。こうなってはもはや、いかなる改革も、いかなる福祉対策も効果はない。」 「英雄待望論は、報われることなど期待できない犠牲を払う覚悟とは無縁な人々が、自己陶酔にひたるに役立つだけだからである。」 歴史に学ぶ、とは言い古された言葉だが、そうした知的好奇心を満足させてくれる名著。 「栄枯盛衰が歴史の理ならば、せめてこのヴェネティアのように、優雅に衰えたいものである。」 見事! ヴェネツィアの興亡 ヴェネツィア共和国の誕生から成長、大発展までを描いた本。政治、文化、一般庶民の暮らしぶりまでさまざまなな側面を描いています。筆者の文章は読みやすく、その分量にもかかわらず、まったく読むスピードが落ちませんでした。歴史の紹介だけではなく、ヴェネチアに対する筆者の洞察も秀逸。数年ごとに読み返したくなります。また、この本を読んでからヴェネツィアへ旅行へ行くと旅行がとても豊かになります。 なるほど(下) ん〜〜。正直言って戸惑ってしまった。この本の前半部分、これが同じ人が書いたものかと。著者がもっとも信頼していた編集者が物故したのは、みなさんご承知の通り。編集者が違うとこうも違うものかと。全編を流れる文章のリズムと「節」立てが、明らかに違うのである。しかも、文章が硬直しているのである。さすがに、150ページ過ぎたあたりからは、七生流に流れはじめるのではあるけれど。 この本は、いろいろな意味において、彼女の作家生活にとって大きな転機になっているのは、間違いない。彼女曰く「スペンシェラータ(気楽なとか、無責任なという意味)ではもはやなくなった、つまり大人になったということでしょう。」 まったく、なるほど、である。
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[ 単行本 ]
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フライデーあるいは太平洋の冥界/黄金探索者 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2)
・ミシェル・トゥルニエ ・J・M・G・ル・クレジオ
【河出書房新社】
発売日: 2009-04-11
参考価格: 2,940 円(税込)
販売価格: 2,940 円(税込)
Amazonポイント: 29 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 2,244円〜
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・ミシェル・トゥルニエ ・J・M・G・ル・クレジオ
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カスタマー平均評価: 0
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[ 文庫 ]
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イギリスだより―カレル・チャペック旅行記コレクション (ちくま文庫)
・カレル チャペック
【筑摩書房】
発売日: 2007-01
参考価格: 777 円(税込)
販売価格: 777 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 380円〜
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・カレル チャペック ・Karel Capek
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カスタマー平均評価: 5
チャペックもイギリスで考えた おおかたの日本人からすれば、イギリスという国は同じく島国、同じく君主制という事でそこそこ愛着を持っている。さらに議会制民主主義の先輩の国ということで、政治のお手本のような国。チャペックはチェコという小国に生まれた事から、民主主義の大先輩というこのイギリスという国をとても羨ましく思っているようだ。他の旅行記と同じく、お得意のイラストがいい。21世紀になっても彼のエッセイは心に染みる。
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[ 単行本 ]
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チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)
・ロアルド・ダール
【評論社】
発売日: 2005-04-30
参考価格: 1,260 円(税込)
販売価格: 1,260 円(税込)
Amazonポイント: 12 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・ロアルド・ダール ・Roald Dahl ・Quentin Blake ・クェンティン・ブレイク
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カスタマー平均評価: 3.5
10才の感想文 ダールコレクション(2)です! 私は話がわりと短い「舌かみ村の牧師さん」から読み始めたんですが・・・・・・
とぉ?っても面白かったです!英語だと一文字で意味が全然違ってきてしまうので、笑えます。(意味が分からない人は本を読んで下さい。)チョコレート工場の秘密の話に戻って、この話は映画で有名になりました。映画で知った人も多いと思います。映画と違う所見つけるのも楽しいし、勿論、本だけ読んでも十???分っ楽しめる事間違いなし!!
ロアルド・ダールさんは文章の中に皮肉が入ってる事が多いんですが、逆に私にとっては新鮮で面白かったです。なんか上手く説明出来ないんですが・・ 意地悪な皮肉じゃなく、皮肉すら笑いに変えてしまえる凄さ?(って疑問系にしてど?すんだ!)後書きでも訳者さんが言ってらっしゃるんですが、ロアルド・ダールさんは言葉遊びをよく使うので、とてもリズムがいいし、面白いです。 英語だとよくわかるのかなぁ?訳している人によって違うんですが、それをくらべるのもいいんじゃないかなぁ??と思います。
まとめると→ まぁよーするにロアルド・ダールさんの作品はとっっっても面白いですよーーーー!!! という事が言いたいのです。読んでみる価値は、あると思います!! 訳批判は的外れ めったに小説を読まない私が、薦められて読んだこの本。
映画化されていることは知っていましたが、映画を見る前に読みました。
いけすかない他の子供たちが見事に消えていく様が非常に愉快でした。
しかもなかなかブラックで…痛快です。
登場人物の名前、実に名訳ですね!
頭にすっと入って来やすい。挿絵とも相俟って、ばっちり頭に記憶されました。
映画ではそのままの発音だったのでがっかりでしたが・・・
ブクブトリー、アゴストロング、イボダラーケ、テレビスキー、そしてバケツ。
こっちの方が子供にはベターなのでは?
ここでのレビューを見ますと、旧訳での雰囲気が台無しとかありますが、
もともとブラックな要素を持った作品だと思うので、特に問題ないと思います。
映画の方がよっぽど危ない(笑)と思いますし。
旧訳を読んだ人にはどう感じられるかわかりませんが、
初めて「チョコレート工場の秘密」を読む方には違和感の無い1冊だと思います。
自信を持ってオススメします。 映画を見てから読んだ方がよいかも ダールの作品は、マチルダは本で読んだだけで十分楽しかったのですが、
チョコレート工場の秘密は、少しわからない部分がありました。
しかし、2本の映画を見てからは、本が分かりやすくなりました。
飜訳は誰のでもよいと思います。
子供に読ませるのなら、分かりやすい方を勧めるか、
挿絵がかわいいのをすすめるかの2つの方法があります。
問題は、内容が大切です。
ダールは、この作品で、何を伝えたかったでしょうか。
少なくとも家族愛は、映画を見て分かりました。
その意味で、映画はすばらしいと思いました。
ダールの皮肉は、奥が深く、私のような凡人にはわかりません。
そのため、訳者がどのような努力をして訳出しようとしたかは、その訳者の努力の話であって、読者の努力は必要ないように思います。
読者は、自分が気に入るか、気に入らないかだけで十分。
本を読んで、チョコレート工場の秘密がわかる人の方が少ないと思います。
ぜひ、映画を見てから読んでください。
映画は横に置いといて 映画は
大量に出てくる大塚範一似のウンパルンパだけでも爆笑
ティム・バートン監督らしい子供向けにみせて大人が見れる作り方が秀逸だわ
ウォンカ高い倍率で招待するから
どれだけビップなおもてなしかと思ったらアレですからね(笑)
けどユーモア全開でもウォンカの回想と最後でちゃんと感動できる
ただ原作知ってると
ウォンカは謎のままの方が良かったと思う方もいるかもですね
しかしあそこまで綺麗に工場を映像化されてちゃ否定的な言葉はでにくいですね
本当にチョコレートが魅力的に見えるもの
それの原作
映画の余韻を残しながら読むと危険
空っぽで読めばこの作品の魅力に触れられる
映画には映画の原作には原作の良さを感じてください ウォンカが魅力的 ジョニーデップ主演の「チャーリーとチョコレート工場」を見て、
ウォンカさんと工場内の世界観が素敵で、原作が読んでみたくなって読みました。
とてもいいですね!
映画も、原作も両方楽しめました。
子供のころに読みたかったなぁ。
挿絵もかわいいので、子供も手にとりやすいんじゃないでしょうか。
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[ 単行本 ]
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マチルダは小さな大天才 (ロアルド・ダールコレクション 16)
・ロアルド ダール
【評論社】
発売日: 2005-10
参考価格: 1,470 円(税込)
販売価格: 1,470 円(税込)
Amazonポイント: 14 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 462円〜
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・ロアルド ダール ・Roald Dahl ・Quentin Blake ・クェンティン ブレイク
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カスタマー平均評価: 5
子供の才能を伸ばすには マチルダは両親に期待されていない女の子です。
それにも関わらず、才能豊かでした。
ある日、両親への怒りから、物を動かす能力を身につけてしまいます。
その才能を利用して、意地悪をする校長先生とも、両親とも独立し、
校長先生からいじめられていた校長先生の姪の先生と一緒に暮らすことになります。
少し、どぎついところもあるようにも思えますが、
嫌みな感じがしないところが不思議です。
自分が子供からどんな目で見られているか、
子供の能力を伸ばさないような親ではないか、
一度考えながら読んでみると、大人でもおもしろいかもしれません。
あなたは、お子さんのどこを伸ばそうとしていますか?
マチルダの両親と、学校の校長先生は、反面教師として、マチルダの才能を伸ばしました。
優しくすることだけが子供の才能を伸ばすのではないという教訓を含んでいるかもしれません。
小5の娘に勧めたら・・・ 我が家の娘は、割と本を読むのですが、そんな娘に勧めたところ、「今までで読んだ本の中で、一番面白い!」と、一気に読んでいました! 問題だと思う点が無いわけではありませんが、お薦めです♪ マチルダカッコイイ!! マチルダのどんなことにも負けない小さな勇気がカッコイイ!!ぜひよんで見てほしい☆ 考えさせられる本 天才なのに高ぶらない、賢い少女マチルダ。
高圧的な大人に、その頭脳を使って対抗する話がとても面白くて、読みやすいです。
そんな読みやすさの中にも、大人の子供に対する言葉の暴力、無関心、そして
肉体的な暴力など、色々考えさせられることがあります。
7歳の息子にそのまま読み聞かせても理解できないようですが、
内容を話してあげるともっともっとと先を知りたがります。
自分で読んで理解できる歳になったら薦めてあげたい1冊です。 マチルダ最高 ダール作品の中で、一番好きな話です。(2番は『おやさし巨人』)
子供が小さい時に、布団の中で毎日少しずつ読んであげていたのですが、
続きを読むのを、とても楽しみにしていました。
5歳で図書館の本を、全て読み尽くしたマチルダ。
頭脳も天才的なのに、なんだかとっても可愛いの。
理不尽でお仕置き好きな校長への反撃、ハニー先生とマチルダの素敵な関係。
是非、出会って欲しい一冊です。
映画にもなっています。こちらもお薦め。
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[ 単行本 ]
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安部公房全集〈30〉1924.03‐1993.01
・安部 公房
【新潮社】
発売日: 2009-03
参考価格: 8,400 円(税込)
販売価格: 8,400 円(税込)
Amazonポイント: 84 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 7,880円〜
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・安部 公房
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カスタマー平均評価: 4.5
弱者への愛 私も、安部公房全集が完結したことを、まず祝いたいと思う。
編年体というユニークな方針(長女の安倍ねり氏の発案)の全集の第1巻が刊行されたのが、1997年7月で、この最終巻は、2009年3月の発行である。足かけ約12年にして完結した。
かつて、とりわけ若い人たちの間で、争うようにして読まれた安倍文学は、この力作とも呼べる全集の刊行にも関わらず、いまやほとんど忘れ去られているように見える。辛うじて純文学という死語の下に、「三島」という名前が想起される時代にあっては、それもまた当然なのかもしれないのだが。
付録の「贋月報」で、三浦雅士氏が、安倍の言葉を紹介している。「二十世紀の大きな主題は弱者の救済であり、弱者への愛なんだ」。その世紀は聳え立つ知的構築物に翻弄された世紀だった。マルクス、フロイト、人によっては、それはフーコーであったり、デリダだったりしただろう。まさに翻弄されたのであり、人々は生の方向をその中で、見失っただけのことだった。そして、いま二十一世紀、私たちは、素朴な善いこと、悪いことという感受性しか頼るものがなく、その感受性にしたところで、ほとんど崩壊している、そのような「危機」の中にある。その意味で、「弱者」とはまさに私たちのことなのだ。
母親の子供殺しの時代に対する時、殺人が記号以上の意味を持ち得なくなってしまった時代に対する時、「弱者」という言葉は、唯一の導きのように、私には感じられる。
私は、安倍作品、特にその長編小説を読み直してみよう、そう思ったのだった。 刊行開始から12年・・・感涙の完結 結局、当初予定の〔別巻〕ではなく、第30巻の扱いとして刊行。別巻だったら、外函どのようなデザイン?などと思い描いて数年・・・ようやく正真正銘の最終巻の出現である。今回収録の補遺では、埴谷雄高宛書簡19通、主役の男をアメリカ人高校教師に変更した幻の〔砂の女〕シナリオ、同じく映画〔他人の顔〕の別シナリオが目玉だろう。安部ねりの伝記・年譜は大方の予想をはずしてコンパクトな内容、しかし凝縮された中に新たな情報を多く含み、無論第一級の資料たりえている。書誌は参考文献・索引含め600ページ超、確かに圧倒的だが、誤りや漏れが散見される。修正版の作業に着手した安部ファンも少なくないだろう。付録のCD?ROMは新潮社のテレフォンサービスの肉声音源を収録(懐かしさに震えました)。また本全集の函裏、見返し写真すべて収録していて、ひとまず合格点かな。
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[ 単行本(ソフトカバー) ]
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朗読者 (新潮クレスト・ブックス)
・ベルンハルト シュリンク
【新潮社】
発売日: 2000-04
参考価格: 1,890 円(税込)
販売価格:
中古価格: 1円〜
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・ベルンハルト シュリンク ・Bernhard Schlink
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カスタマー平均評価: 4
ドイツ文学 パトリックジュースキント以来、久々に感動できるドイツ文学にめぐり合えました。本書を読んだ動機は映画を見る時間がなかったからでしたが、一気に読み、そして、すぐに読み返したくなる結末。ありえない、いえ、いえ、ありふれた日常の何気ない中に潜む闇、戦争の深い傷、原文を読みこなせる語学力が欲しい私でした! 朗読をすることの先に 舞台はドイツで、15歳の少年が21歳年上の女性に会い、やがて性交する関係にいたります。性交の際、ハンナは少年に、古典文学を朗読するように頼み、少年はそれを実行します。ある時、ハンナは失踪し、少年が長じてから、法廷で再会します。ハンナはナチスの犯罪のどこかで関与していたらしく、その罪を問われていました。そして、ハンナは服役します。ハンナはそこで読み書きを覚え、少年だった男に手紙を書きます。男はそこで初めて、ハンナが読み書きのできなかったことを知ります。ハンナの手紙に対して、男は古典を朗読したテープを送ります。ハンナが出所する日、男は会いに行きますが、ハンナは縊死していました。彼女は男からの手紙を欲していましたが、彼はそれを書くことはありませんでした。
男は古典を朗読しながらも、自分の言葉を獲得できなかったのです。ハンナが求めていたのは、借り物の言葉ではない、かつて共に時間を過ごした男の言葉でした。しかし、彼は彼女に書き送るための言葉を見出すことができませんでした。
言葉によって人間は生き、また死にます。愛する者からの言葉、借り物でない言葉が届けられないとしたら、そこには絶望が生まれてしまうのではないでしょうか。この作品はいろいろな読み方ができるでしょうが、タイトルが暗示することは、そういうことのように思えます。 戦争の傷跡 オスカーにノミネートされているケイト・ウィンスレット主演の映画原作です。
15歳の少年が、ある日自分の倍以上の年の女性と深く恋に落ちます。
女性は、少年にいろんな本を朗読させるのですが、少年はなぜ頼まれるのかわかりません。それでも女性のために朗読を繰り返します。でもある日、女性はふと姿を消してしまいます。
数年後、法学生になった少年は裁判所で被告となった女性と再会します。女性は、ドイツナチの強制収容キャンプで自ら働いていたのです。不意の再会に、少年は動揺を隠せませんが裁判の間に、女性の秘密があきらかにされていきます…。
男女の愛はもちろんのこと、筆者は、自らの体験から、ドイツの戦前生まれの世代と戦後世代とのギャップ、そこに生まれからみあう複雑な感情を描いています。自分の親、そして国に対する感情を、どう処理していいのか、怒りをどこに向けていいのかわからずにもがいています。
女性は、自らが犯した罪を彼女ならではの方法で、償っていきます。彼女の潔さ、強さが素晴らしいです。 最低 新潮の100冊に入っていたから読んでみたけど、これまで読んできた文学の中で最低の部類に入る本だと思いました。
特に前半の性描写は嫌気を覚えた。後半もむだにネチネチした感じ。結局何が言いたいのか判らなかった。
こんな書き方で「戦争と向き合ってる」ってなんて著者がふざけるのもいい加減にして欲しいと思った。この本は戦争を餌にしたただのエロ本。戦争を考えるべきは著者の方。内容に絶望。腹立たしい読後感。
最低な性描写です。安易に戦争とか言わないでください。ドイツ文学に失望しました。憤慨 普通の「ベストセラー小説」 題名ともなっているキーワードであるのに、文盲であるから朗読者というのは
あまりにもひねりがない。
主人公の葛藤の仕方もすごく直球でnaiveというかsimplemindというか。
これがブリキの太鼓以来の名作というのはどういうものだろうか。
世界の中心で愛を叫ぶいうようなベストセラーという意味なのか。
15歳と36歳という出会いは非常に深い意味を持ちうる設定だが、
深い意味が入っていないので共感を呼ばないのだろう。
同じテーマを持つ村上春樹の海辺のカフカはよく出来ていると思った。
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