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[ 文庫 ]
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坂の上の雲〈5〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 1999-02
参考価格: 670 円(税込)
販売価格: 670 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 375円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 4.5
ついに旅順陥落。そこには敵も味方もない ついに旅順陥落。
日露両軍の兵士が「負けてもいい。勝ってもいい。ともかくもこの惨烈な戦争がおわったのだ」という感覚を共有したことに鮮烈な印象を受けると同時に、旅順を巡る戦いのすさまじさを想起させる。 旅順攻防収束 児玉の参戦により戦術を大きく転換し、勢いづく日本。
ステッセルの官僚的思考によって、余力を残しつつ降伏に傾くロシア。
それにしてもトップの人の性格や能力が、これほど戦争に影響を与えるものなのか、
っと感じさせる巻です。
日本人論 司馬は、戦争遂行における日本人の行動を見つめながら、ロシア人と日本人の違いをなんども語っている。それはひとつの日本人論の姿となっている。 人災の、滑稽混じりの恐ろしさ。 日露戦争の一つの山場である旅順開城が主に描写されている。
その司令部(乃木希典・伊地知幸介)の無能をフィクションらしく極大化し、それがドミノ式に起こしていく旅順における人災の怖さというものを見事に描き出したという点では、司馬遼太郎の文芸作品の真骨頂であると言えるだろう。
何しろ冗談のように人命が浪費されていく描写の中で、その浪費の責任者達の責任感・緊張感・現実感覚のなさを(フィクション内の事実として)くどいほど書き連ねるのである。
最初はホラー映画も真っ青の戦慄を覚えるのだが、そのうち頬が笑いながらひきつる感覚を覚えた。
能力の劣る上司を戴くという人災の、滑稽混じりの恐ろしさというのは、強烈だった。
そうそう忘れられそうにない。 児玉源太郎物語 3巻あたりから登場の児玉源太郎。
今の主人公は、彼であるといっていい。
書き進むうちに、この輝く人物をほうってはおけなくなったのだろう。
遼陽に戦い、二○三高地を落とし、旅順を攻略。
苦労しながら辛くも勝ち進む日本と同時に
バルチック艦隊の長く苦しく足並みの悪い旅路が描かれる。
多くのエピソードが示唆を与えるこの戦争は、作者も
物語を選りすぐるのに苦労したのではないか。
そう感じる5巻でした。
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[ 文庫 ]
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坂の上の雲〈7〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 1999-02
参考価格: 670 円(税込)
販売価格: 670 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 218円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 4.5
奉天会戦 陸戦においては、とにかくクロバトキンは全くのヘボ役者として描かれている。
司馬遼太郎の言う「クロバトキンの恐怖体質」を上手く利用して、日本軍はロシア軍を翻弄、本来であれば勝てない相手にとりあえず勝った。
この作品は本論(日露戦争)だけでなく、この戦争を取り巻く状況解説が非常に面白い。そろそろ講和の時期を探る日本に対するルーズベルトの動き、考え方などがその一例である。
この戦争を巡る周辺状況をみると、決して日本の実力だけで勝ったわけではない。喧嘩の相手も選ぶ必要がある。「敵の敵は味方」、この言葉を思い出した次第である。 奉天会戦 日露戦争における奉天会戦が一応の決着をみせます。
物量も兵士の数も極端に不足し、軍隊全体が疲れきった日本。
もはや作戦など役には立たず、ひたすら耐えて全身していく姿は、
どこか太平洋戦争時の日本を彷彿とさせます。
この戦争は勝ったというより、机上では負けるはずのないロシアが、
その官僚体制の腐敗から勝手に自滅するという幸運によって終息したもの。
これを勝利と誤解し、何事も精神力で乗り切れると誤解した所に後の悲劇が
あるのだと思うとやるせない気持ちになります。
奉天 1会戦で、両軍合わせてひとつの都市の人口に相当する兵士が
戦死した日露戦争も最終章に近づいてきた。
乾坤一擲、ぎりぎりの勝利。
日本は、人材に恵まれていたのだろう、
ロシア軍を、日本の大山のような人物がが率いていたら?
大功のみを考え、小節にかかわらないような人物が組織のトップに必要であることを
痛感します。
いよいよクライマックス 第7巻は陸戦のクライマックスともいえる奉天会戦と、日本海海戦までのバルチック艦隊と日本海軍の動向を描きます。
陸戦については、ロシア軍を率いるクロパトキンの官僚意識、軍人としての精神力の弱さにより、日本が勝利する様が描かれます。ただ、これはあくまでも局地的な勝利であり、日露戦争の勝利を意味しません。戦中でありながら児玉源太郎が帰京して終戦工作を行うなど、日本としては実力の限界まで戦ってやっとここまでの感があります。著者のいう「戦争における勝利の定義」というくだりを読んで、戦争とは終わらせるために始めるもの、ということをその国の指導者が認識していなければならないと痛感しました(始めないにこしたことはないのですが)。
途中、終戦工作に関する項では、米国やフランス、ドイツの思惑が紹介され、ヨーロッパ、米国、アジアの力関係や、他国をいい意味でも悪い意味でも道具として考える世界政策(外交政策)の様子がよく理解できる記述になっています。
また、後半は、日露戦争のクライマックスである日本海海戦に向けた日露双方の海軍の様子が描かれ、最終巻に向けて気分が盛り上がる一冊となっています。 陸戦の日本 日露戦争の陸戦で日本は勝ったのだろうか?
戦史を詳細に検証しなかった日本陸軍の過ちはここからはじまったのではないかと思わせる事実ばかりでおどろいてしまった。
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[ 文庫 ]
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旅をする木 (文春文庫)
・星野 道夫
【文藝春秋】
発売日: 1999-03
参考価格: 500 円(税込)
販売価格: 500 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 250円〜
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・星野 道夫
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カスタマー平均評価: 5
アラスカの自然を感じる 実際に星野さんが見、聞き、体験されたことが書かれており、読んでいるとアラスカの自然がありありと目に浮かぶようです。紀行文が好きな方、旅行にいきたいけれど時間の無い方、ちょっとリラックスタイムに読むと雄大な自然に身を浸した気分になれるかも知れません。
また日記、もしくは手紙のような形式で書かれているのでどのページから読んでも良いのと、読むのに区切りがつけやすいのもこの本を大変読みやすくしています。
中高生にもお勧めです。 ひたひたと胸に満ちてくるものがあるエッセイの数々 1978年にアラスカ大学に入り、アラスカに移り住んでから十五年。この地の自然と人々の暮らしにすっかり魅せられ、旅を続けてきて、いつしかここに根を下ろそうとしている著者が、アラスカでの思い出を振り返り、自分とアラスカとを結ぶ強い絆を歌い上げたエッセイ集。静けさをたたえた文章の中から、ふつふつと湧き上がり、立ち上がってくるアラスカへの熱い思い。文章の隅々まで、森と氷河の自然に包まれたアラスカの大地の息吹が浸透していて、胸にひたひたと満ちてくる素晴らしい味わいがありました。
十五年前、アラスカという未知の土地にやって来て、暮らし始めた頃の自分のひたむきな姿を、アルバムの一頁目を開くようにして綴った「新しい旅」。本書の冒頭に収められた、1993年6月1日の日付が文末にあるエッセイから、アラスカをめぐる著者の旅の軌跡に引き込まれましたねぇ。なかでも、次の文章の底に流れる著者の思い。静かに、豊かに胸に沁みる思いの深さ、澄んだ眼差しの美しさが忘れられません。
<頬を撫でる極北の風の感触、夏のツンドラの甘い匂い、白夜の淡い光、見過ごしそうな小さなワスレナグサのたたずまい・・・・・・ふと立ち止まり、少し気持ちを込めて、五感の記憶の中にそんな風景を残してゆきたい。何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時を、大切にしたい。あわただしい、人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れていることを、いつも心のどこかで感じていたい。> p.231 「ワスレナグサ」より
著者・星野道夫という人間への思いのこもった巻末解説、池澤夏樹の「いささか私的すぎる解説」と題した文章がいい。本文庫の表紙カバーの絵、ほんめ つとむの「およぐシカ」の装画も、とてもいい。 心地良いエッセイ 文明社会に浸って生きている私には、
カルチャーショックを覚えずにはいられません。
アラスカに行ってみたくなりました。
やっと心地良い安心して読めるエッセイと出合えました。
本当に贅沢で豊かな生活を感じます。 「もうひとつの時間」を感じたい 木村伊兵衛賞を受賞しているというから、カメラマンとして相当な腕を持つ人だったのでしょう。
名カメラマンが良いエッセイを書くという例は他にも見受けられます。感性の磨き方が共通して
いるのかも知れません。
そういう人たちが名エッセイストという境地に達するかどうかはともかくとして、本書は今は亡き
名カメラマンが書いた、読者の心にまっすぐ届くエッセイであり、編まれているのは名文です。
アラスカの自然をこんな平易な言葉で、光景が目に浮かぶほど、風が頬に感じられるほど、寒
さが肌に刺さると思えるほどありありと描けるのは、すごいです。
著者の言う「もうひとつの時間」は確かにある。それを感じてみたくなりました。
偶然の必然性 星野道夫のエッセイ集。
ひとつひとつのエッセイが自然、人間、つながり。
人が成長する上で、捨てていったなにかを作者はもっているようで知らない土地のアラスカであるが懐かしさが込み上げてくる名作。
今あなたが過ごしている時、他の場所のゆったりとした時間を感じる時がありますか?
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[ 文庫 ]
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台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい (小学館文庫)
・蔡 焜燦
【小学館】
発売日: 2001-08
参考価格: 650 円(税込)
販売価格:
中古価格: 398円〜
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・蔡 焜燦
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カスタマー平均評価: 5
胸をもう張ってます 愛日家と称する人々がいることは日本人として非常に嬉しい。記述には彼の強い思いが綴られていて、読む人を熱くさせる。ただ実際の台湾には日本教育を受けていない台湾老人も少なくなく、かれが代表でないことを引き算して読む方がいい。
とはいえこの本で元日本人に激励され自信を持つのも少々情けないと思うが・・・。 日本人よ胸を張ろう! そして… 台湾人よ立ち上がれ!
戦争に関しては、
立場や心情、思想などによってとらえ方が異なると思います。
当事者でなければ、
戦争に関する情報が正しいのかという判断は難しいでしょう。
(当事者であっても難しいのかも知れませんが…)
この本を読んで私が感じたのは、
「戦後の日本は、良い面や悪い面も含めて歴史を正しく認識する“努力”が必要だ!」
ということです。
単純に「日本が悪い!」と言って、他の情報をシャットアウトするのではなく、
良い面にも目を向け、その上で取捨選択する必要があると思います。
書かれている内容が100%正しいのかどうかは、私にはわかりません。
ですが、この本は色々なことを考えさせてくれます。
日本という国に自信が持てます。
ぜひ読んで、日本と台湾について考えてみてください!
最後に…
「金美麗さん…かっこよすぎです!」
「日本人よ、最も大切にすべき隣国は台湾だ!」
「台湾人よ、立ち上がれ!」
個人的な評価は、文句なしの星5つです。 中国人と台湾人の気質の違いのルーツ 心に残った言葉
p.56 一流の人材を次々と台湾に送り込む
→日本政府が台湾を単なる植民地として搾取するつもりではなく、自国の領土として
扱っていたことが分かります。企業の海外進出についても、一線級の人材を送り込む
会社は本気で海外に市場を拡大しようとしています。一部の会社は、なんとなく時代
の流れで社員を駐在させて、成果について厳格でないため、特に董事長・総経理クラ
スの人間の天国になっています。トップとしての責任感や自覚を持ってもらいたいと
思います。
p.64 後藤氏は、「金を残す人生は下、事業を残す人生は中、人を残す人生こそが
上なり」後藤新平の座右の銘
p.70 欧米列強諸国の植民地経営は、愚民化政策の下に一方的な搾取を行うばかりで、
現地民の民度向上、教育など考えの及ばぬところであった。
日本の台湾統治は、「同化政策」の下に、外地(台湾)も内地と同じように教育系統を整
備し、その民度を向上させるべく諸制度改革などあらゆる努力が払われたのである。
p.78 台湾人にとって「墓」をまもることは、子孫の大事な務めであり、これを怠るもの
は親不孝者としてみなされ、周囲からの信用を失うことにもなりかねない。
p.164 「公」に身をおくものはいかなることがあろうとも高潔であり続け、社会の模範
たるをしっかり認識していたので、日本統治時代には贈賄・収賄などというものは存在
しなかった。
p.218 戦後、台湾では、日本精神なるものが薄れてゆき、自分さえ良ければよいとい
う中国式に染まりつつある現状を憂いています。
p.225 中国社会は全てが「金」と「権力」の社会なのだ。
→確かに中国は自己中心的な人が多いです。「内」と「外」の垣根が非常に高い。身内
や友人に対しては非常に親切な人が、ひとたび「外」の人に対して信じられない態度を
する。中国の共産主義の時代に、特権階級だけが得をしている姿を見てきた影響かもし
れません。
ルールが無ければ、人が見ていなければ何をしてもいいという超合理的な国民が中国人
だと思います。「徳」「倫理」という概念を勉強すべきでしょう。もとは儒教の国なの
ですから。 そんなに崇高だった日本人は、今いずこ...。 最近仕事の関係で知り合ったTさんという台湾人の若者がいます。30代前半の彼は大変な日本ファンで、中でも日本のTVドラマに対しては自ら認める「中毒」ぶりです。これまで見た日本製ドラマは数知れず、主演俳優の名前やあらすじなど、私の半端な知識など到底及びもつきません。そして、驚く私を前に微笑みながら彼曰く、「自分のまわりはそんな台湾人だらけです」と。
なぜなんだろう。日本は戦争中に台湾に対しても酷いことをしたのではなかったか!?それがこの本を手にしたきっかけでした。そして自分の考えが根本的に改められました。そうなのか、かつては日本はそうだったのか、と。
Tさんは日本による統治時代を直接知る世代ではありません。むしろ、中国による反日教育に晒された世代のはずです。しかし、かつての統治時代を知る台湾人たちの日本への想いは、そうたやすく中国の偏狭な政策で捻じ曲げられるものではなく、後の世代へ脈々と受け継がれていったのでしょう。
台湾が戦後、中国によって変わっていったように、日本も米国との関わり合いの中で多くのものを失っていったと思います。この本は、他国からの干渉に翻弄される前の純粋な日本と台湾が、戦争という大混乱期にあっても互いに敬い慈しみ合った貴重で驚くべき記録です。また、かつて存在したそのような崇高な日本人は一体どこに行ってしまったのか、大いに考えさせられる本です。 私達は自信を持ってもいいのかも知れない。 私も小林よしのり著「台湾論」とともに読むことをお勧めする。
この二つの本は兄弟である。
内容に関して言えば、非常に簡潔でわかりやすく衝撃的である。
そして圧倒的に面白い。
(面白いという言葉は適切ではないかもしれないが)
映像として映画にでもならないかと期待している。
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[ 単行本 ]
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幕末史
・半藤 一利
【新潮社】
発売日: 2008-12
参考価格: 1,890 円(税込)
販売価格: 1,890 円(税込)
Amazonポイント: 18 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,350円〜
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・半藤 一利
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カスタマー平均評価: 5
まるでその場にいたような・・・ 教科書で習う「明治維新」の背後には、一筋縄では括れない沢山の登場人物による多重な裏があるのだろう。本書の面白さは、そういった重層を解きほぐす手練が、まるでその場にいたように縦横無尽に登場人物と一緒になって幕府瓦解と新体制創設のドラマ展開を楽しんでいることにある。例えば、薩長同盟盟約に出てくる「皇国」について、《幕府が支配している日本に対する、朝廷が支配する日本、というくらいの意味であって、私たちが意識している天皇というほど、この時代の人たちは天皇を意識していなかったのではないか》とか、「ええじゃないか」狂騒曲に言及しつつ《この大騒ぎは、薩摩藩の人たちが倒幕に向けて暗躍するためのカムフラージュで、秘かに金も流れていたのではないか》と、かつての薩長中心史観に半畳をいれてみたり、決断の土壇場で二転三転する徳川慶喜に呆れ返ったり、大久保利通と西郷隆盛の最後の面談に示される二人の大人気なさに苦笑したり、そんな中で一貫して男らしい香気を放つ勝海舟に穏やかに共鳴したりして、臨場感に溢れている。
幕末について凡その知識はある筈だが個々の先人が何をなしたのかについて語る自信のない自分には、居眠りする暇もない寺小屋風講義であった。 面白くてとても為になる幕末・明治10年史
東京生まれの東京育ち、しかも祖父が戊辰戦争で官軍と奮戦した越後長岡藩出身という著者ならではの、じつに面白くてとても為になる幕末・明治10年史である。
当然ながら基本的には薩長嫌いの著者は、漱石や荷風同様、明治維新を「維新」ととらえるよりは、徳川(とくせん)家の瓦解、という視点からこの「暴力革命」の日々を眺めていくことになるわけであるが、しかしご本人がそう芝居がかって意気込むわりには、西郷も大久保も木戸も坂本も否定的に描かれているわけではない。
また著者ごひいきの勝海舟を引き倒していることもない。むしろ類書よりも彼らの行蔵を温かく親切に見守っている趣もあり、この人の懐の深さが思い知られるのである。
明治史を成り上がりの薩長とそれ以外の諸藩の内紛の歴史、つまり戊辰戦争の拡大ヴァージョンとして語ることは一面的であるかもしれないが、まさしく「長の陸軍、薩の海軍」、昭和になっても官軍閥が強力に存在していたのは間違いがない。
永井荷風は「大日本帝国は薩長がつくり、薩長が滅ぼした」と語ったそうだが、太平洋戦争直前の海軍中央部は薩長の揃い踏み。こいつらが日本をめちゃめちゃにした挙句、最後の最後に国家滅亡を救ったのが関宿藩出身の鈴木貫太郎、盛岡藩の米内光政、仙台藩の井上成美の賊軍トリオという不思議な暗合も因縁めいて興味深いものがある。
著者いわく。「これら差別された賊軍出身者が、国を救ったのである。」
勝てば官軍負ければ賊軍勝たず負けず不戦で行きたし 茫洋
わかりやすいが、著者の狙いが成功したとは言えず。 すでに書かれたレビューの通り、一般の方に向けた講演を文字に起こして書籍化してあるため、非常にわかりやすく幕末史(ペリー来航から西南戦争まで)を通読できる良書と言える。
ただし、著者が前書きで記している「薩長史観」からの脱却、「西郷隆盛は毛沢東と同じ」、「坂本龍馬に独創性はない」といった独自の歴史観が本文で説得力を持って展開されているとは言いがたい。
たしかに着想は勝海舟から拝借したものだとしても、薩長同盟を成功させ大政奉還実現に向け奔走した坂本龍馬の偉業を損ねるほどのことではない。また、「明治維新は薩長による暴力革命」と著者が独自の史観を提示しようと、江戸城は無血会場が実現し江戸が火の海になることが避けられたことや、前政権のトップが死罪にならないなど、その平和的な政権交代は世界史的に特筆すべきことであることは変わらない(相対的な比較として)。
第十一章は「新政府の海図なしの船出」と手厳しい表題だが、主要メンバーのほとんどが30代という体制で一からの国づくりを断行したことは、本書を読んでもやはり感嘆すべきことだという印象は覆らなかった。「欧州でこんな大変革をしようとすれば、数年間は戦争をしなければなるまい」(P392)と言わしめた廃藩置県がなぜ成功したのか、著者の洞察は甚だ浅いと言わざる得ない。
とは言え、幕臣である以前に日本人として行動し続けた勝海舟の開明さに改めて感服するとともに、賢い将軍との評価も高い徳川慶喜の意外なほどの優柔不断さ、岩倉使節団が欧州渡航中にちゃっかり勝海舟や榎本武明ら旧幕臣を新政府に登用した西郷隆盛のしたたかさなど、今まで認識が不十分だった点について新たに知ることが出来たなど、大変興味深い記述も多々とあった。
いろいろと試行錯誤はあったせよ、本書を読んでの率直な感想は「すごいぞ、ニッポン!」。幕府も薩長も、非常時には身分を問わず抜擢したことも特筆すべきことだし、「日本は未開国だ」とあなどっていた米国人に対し、浦賀の筆頭与力が「ところであなたの国のパナマ運河に沿った地峡横断鉄道はもう完成しましたか?」と質問して驚かせた、というくだりには、思わずニヤリとさせられた。 いい本であることは認めます 確かに幕末史を概観するにはいい本です。
しかし、べた褒めのレビューが多いので、あえて苦言をいくつか・・・
1.大和行幸に触れながら天誅組について触れてないのは片手落ちかと
2.戊辰戦争を端折り過ぎです。幕末の通史としてのこの本の最大の欠陥じゃないかと思います。西南戦争まで描くのをあきらめても、戊辰戦争はきちんと描くべきだと思います。
筆者の使命の一つと思われる薩長善玉幕府悪玉史観の打倒という見地から見てもこの省略は納得できません。
3.司馬遼太郎さんに触れて、「作り話がうまい」とか「嫌なこと(都合の悪いこと?)を書かない」とか批判めいた言いいまわしはいかがなものかと・・・・
司馬さんは歴史”作家”なので、史実にフィックションを交えたり、テーマに統一性を持たさすため”省略”をするのは、職業上の許された特権だと思います。
ただ、司馬さんの場合、書き方が巧妙で、読者が史実だと錯覚する傾向があるのでそういう読者に対する警鐘にはなるかもしれません。 わかりやすい幕末史 冒頭のはじめの章で、「反薩長史観となることは請合いであります」と筆者は書いていますが、
決してそのようなことはありません。
入れ替わり立ち替わり歴史の表舞台に立つ人々が変わり、開国派、攘夷派、公武合体論などなど、
主義主張もわかりづらい幕末史を、丁寧に解説しているのが本書です。
評者も司馬遼太郎の「龍馬がゆく」「燃えよ剣」「世に棲む日々」などを読んで、
それなりに幕末の歴史はわかったつもりでいましたが、
本書を読んで、幕末の歴史の流れがどういったものだったのか、ようやく理解できました。
ただ、薩長の新政府立ち上げから、大久保利通の暗殺までの記述が、
少々、駆け足で進んでしまったかなと思います。
ぜひ次回は、じっくりと「明治史」を解説して下さい。
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[ 文庫 ]
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坂の上の雲〈8〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 1999-02
参考価格: 670 円(税込)
販売価格: 670 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 567円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 5
このような時代もあった 司馬遼太郎先生の作品は「竜馬がゆく」に続いて二作目ですが、最高傑作との評価に違わず、素晴らしい小説でした。最後の八巻では、終わるのが寂しく、わざとゆっくり読みました。今の混沌とした将来の見えづらい時代に、何かしら示唆を与えてくれる内容ですね。
今の日本に足らないもの 本著は全8巻からなる大作です。
明治の中期から末期に至るまでの日本の一般人の生き様を、精緻に縦横無尽の筆致で描いた著者が言いたかったのは、この時代の国民性にあると思います。
明治維新後に薩長閥でなかった伊予(今の愛媛県)の若者の生き様を通じて、この時代を描いていますが、当時全盛を謳歌していた薩長に属していない人間でも必死にこの国の将来を考え、自分がなすべき役割を精一杯やりぬいた結果を見逃してはいけないと思います。
むしろ、彼らを主役に据えることで、日本全体の雰囲気がよく出ていたと思います。
世界史上の奇跡といわれる「明治維新後の日本の胎頭」は彼らなくしてなしえなかった事実です。
膨大な資料や証言を元に司馬氏ならではの洞察力というエッセンスをちりばめ、全編を通じて飽きない20世紀の日本文学の名著です。
ぜひ一読したい作品です。
バルチック艦隊撃破 本書も遂に日本海海戦で大団円を迎える。結果を知っていても8巻にわたる長編の終わりをかみ締めながら読んだ。
かみ締めるといえば、初版の解説がまとまって本巻に掲載されており、これまでの振り返りができたと感じる読者も多かったと思う。
司馬遼太郎は、戦争そのものを描くと同時に、当時の日本人像を描こうとしていたのは間違いない。恐らく、太平洋戦争における日本人との対比を考えながら、そして現代の日本人のことを考えながら・・・・。
本書がビジネスマンの間でも高い評価を得ているのは、戦中戦後の日本人が忘れかけている良き資質を思い起こさせてくれるからだと思う。
明治の指導者は、冷静で論理的、しかも外交上手。与えられた仕事場で思う存分働き、国家を強くしていく・・・・。自分たちにもそのDNAが残されているのではないかと考えると、とても嬉しくなる。
一途な精神性がうらやましい。 こんなことを言ってはいけないのかも知れないが、当時の日本人がうらやましく思えてくる。全国民と国家が何の疑いもなく、一つの方向に向いてまい進している世界。自分の人生に疑問を持って、世界を放浪しようとするような子供はきっといないのだろうと思う。
驚きなのは、これほど多くの人が海外に出て、諸外国から良いところを学ぼうとしていたこと。自身が海外に居るだけに、当時の日本人がどのようであったのか、非常に気になる。 弱者の戦略 日露戦争のときの日本は弱小国であった。そのことを日本軍は重々承知していた。そこで日本軍は弱者の戦略を使った。限界まで知恵を絞り、今までにない方法で敵を倒す。全巻を読み終わったあとは爽快感に溢れていた。
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[ 文庫 ]
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坂の上の雲〈6〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 1999-02
参考価格: 670 円(税込)
販売価格: 670 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 434円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 5
明石元二郎のスパイ活動 この巻は日露戦争そのものの記述もあるが、むしろ傍論の方が面白い。バルチック艦隊の苦闘や明石元二郎のスパイ活動の描写が面白い。
特に明石元二郎である。スパイらしからぬ真直ぐな態度で任務を遂行しようとする姿が、意外にもレジスタンス活動を展開する人たちに受け入れられる。同時に、大国ロシアに立ち向かう小国日本に対する海外の目が優しいことにも気づく。
専制国家は滅びる 派手な戦闘の描写こそ少ないですが、諜報や外交など戦争は戦闘だけではないことが丹念に描かれていて興味深く読めました。
もともと国力として劣勢の日本は、国家存亡をかけて全身全霊で事にあたる姿はどこか健気です。
ルーズベルトの言葉「専制国家は滅びる」通り、ロシアの官僚制度の弊害がどんどん表面化してきました。国家より自分の保身を優先するあまり、国としての機能を失いつつあります。
この甘さが、国力を超えた所にある日露戦争の結果を導いたのだろうと如何にも納得できました。
明石元二郎物語 戦いのほうは、敵の退却により黒溝台での凄惨きわまりない危地を、あっさりと脱する。
この巻では、むしろ、明石元二郎が主役といってもよいくらいのサイドストーリーが展開されます。
とにかくこの人が、興味深い人物として描かれていて、印象が深いです。
革命に与えたこの人物の影響は、本当のところどの程度なのか?
もう少し勉強したい気持ちになりました。 日露戦争のサイドストーリー 第6巻は、読むペースが明らかに遅くなりました。
黒溝台の戦いでは、ようやく好古率いる騎馬隊の戦闘が描かれるのですが、残念ながらその機動力を活かした痛快な戦闘というものではなく、馬を降りて歩兵として戦うことで圧倒的な兵力をもつロシア軍に対抗するという地味なもので少し拍子抜けしました(少ない兵力で戦うにはそれしか方法がしたのですが)。日本軍最大のピンチとなったこの戦いは、ロシア軍内部の権力闘争の影響もあり日本の不思議な勝利で終わります。いわば敵失による勝利といえましょう。
後半は、これまでの苛烈な戦闘についての描写が一休み。バルチック艦隊の遠大な航海、ロシアでの革命活動を促したスパイの活躍、軍艦マーチを奏でる軍楽隊の様子など、日露戦争に関連するサイドストーリーが語られます。戦場での戦闘ばかり読んできた4?5巻に比べ、登場人物も話題も一気に広がる印象で、読むのに苦労しました。
戦争とはおそろしい 戦争とはおそろしい。
ちょっとした気のゆるみが多くの兵士を死に至らしめてしまう。
戦争指揮官の責任の重さはとてつもなくおおきい。
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[ 単行本 ]
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のぼうの城
・和田 竜
【小学館】
発売日: 2007-11-28
参考価格: 1,575 円(税込)
販売価格: 1,575 円(税込)
Amazonポイント: 15 pt
( 通常2〜5週間以内に発送 )
中古価格: 743円〜
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・和田 竜
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カスタマー平均評価: 4
面白いけど。 確かに面白い。のぼう様こと成田長親を始め、その部下たちの快進撃は爽快だ。
序盤は人物紹介となっており、歴史に疎いものにはかったるいが、
戦が始まるとそれぞれのキャラが立った戦術でスラスラよめる。
しかし、小説好きには物足りないと思う。
面白いけど、何か足りない。
よく言えば、非常にシンプルで歴史ものが苦手な人でも読みやすい。
悪く言えば、人物描写が浅く、底が浅い。
ライトノベル以上歴史小説未満というか。
映画化企画進行中なものを小説に書き直したというから納得。
普段、あまり本を読まない方でスッキリしたい方にはおすすめ。 熱くなる本! R?40が選んだ本屋さん大賞1位という帯につられて読んでみました。
歴史好きのつもりだったのですが、
忍城のことは初めて知りました。ものすごく面白い題材だと思います。
本作についての感想ですが、
文章は読みやすいですし、それぞれの登場人物が躍動する様や、
のぼう様のだらしないけど憎めない性格を表現するのはうまいなあと思いました。
また、読んでいてものすごく心が熱くなるシーンもあり、
素晴らしい作品であることには間違いありません。
ただ、ちょっと石田三成の描き方も含め、納得いかないところがありましたので、
星4つくらいにしておきます。
これからもこの作家さんには注目していきたいと思います。 めちゃくちゃ読みづらくないですか? 皆さんライトノベルのようだとか書いてありますが、僕にはかなり読みづらかったです。僕は司馬遼太郎や山岡壮八、藤沢周平とかの時代小説も読むので時代小説が苦手では無いのですが、ページを進めるのが苦痛でした。中盤までまったく感情移入できないし、登場人物に魅力を感じませんでした。
後半は読みやすくなってきますが、あれだけの苦しんでたどり着いた後半の割には、「ああそう」という感じでした。 これは・・・ 歴史にとても興味があり、歴史小説も多く読んでいる私にとっては、
納得のできないところがいくつかありました。
内容も、もう少し納得できるようにして欲しいというか…消化が悪いです☆
私は、いつもざっと読んでから読み返すタイプですが、これは読み返す必要はないかな、と思います☆
表紙にインパクトがあるし期待し過ぎていたせいかもしれません。
軽い気持ちで読み進めると、ドラマのようで楽しいと思います。 キャラが際立っている 登場人物のキャラがみんな際立ってました。のぼう様こと成田長親は最後のまで器の計れない人物、そんなとらえどころのないキャラとして一際存在感がありました。個性のはっきりしている登場人物が繰り広げる物語であるゆえ非常に読み進めやすく、一気に最後まで読めました。
忍城側の人間だけでなく、敵役である三成,吉継も魅力的な男として描かれています。物語の最後に登場人物のその後が簡単に描かれているのも好感が持てました。
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[ 単行本 ]
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あの戦争から遠く離れて外伝―「孫玉福」39年目の真実
・城戸 幹
【情報センター出版局】
発売日: 2009-03-25
参考価格: 1,575 円(税込)
販売価格: 1,575 円(税込)
Amazonポイント: 15 pt
( 通常2〜5週間以内に発送 )
中古価格: 2,365円〜
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・城戸 幹
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カスタマー平均評価: 5
もはや「外伝」ではない。真実の重さが伝わってくる1冊 大宅賞を獲った「あの戦争から遠く離れて」(城戸久枝著)は、
自力で帰国を果たした中国残留孤児であるお父上(孫玉福=城戸幹)の物語と、
そのお父様の中国時代の奇跡を追う著者(城戸久枝さん)の物語が交錯する好著だった。
この「孫玉福39年目の真実」は、「あの戦争から遠く離れて」の外伝という位置づけである。
確かに「あの戦争から遠く離れて」の前半部分(城戸幹さん中国時代の物語)を
幹さん本人が語ったもの、という意味からすれば「外伝」かもしれない。
しかし、娘(城戸久枝さん)が描いた父(城戸幹さん)本人の手記だけに、
ものすごいリアリティを持って迫ってくる。
もはや「外伝」とはいえない。
城戸久枝さんの「あの戦争から遠く離れて」を読んだとき感動したが、どこかで、
「実際に、お父さんの幹さんは、表現できないような苦しみと苦悩を経てきたんだろうなあ」
と思ったものだ。
「書名」の「孫玉福」に「スンユイフー」という中国読みのルビが振られている。
それはおそらく城戸幹さんの強い意志のあらわれではないだろうか。
中国人・孫玉福として生きた20年間への強い誇りでもあると思う。
数奇な運命……とひと言で片付けるにはあまりに重い事実。
久々に読み応えのある手記だった。
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[ 単行本 ]
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見残しの塔―周防国五重塔縁起
・久木 綾子
【新宿書房】
発売日: 2008-09
参考価格: 2,520 円(税込)
販売価格: 2,520 円(税込)
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( 在庫あり。 )
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・久木 綾子
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カスタマー平均評価: 0
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