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[ 文庫 ]
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荒野へ (集英社文庫)
・ジョン クラカワー
【集英社】
発売日: 2007-03
参考価格: 700 円(税込)
販売価格: 700 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 478円〜
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・ジョン クラカワー ・Jon Krakauer
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カスタマー平均評価: 4.5
聖域、発見の日々 全米ベストセラー作品。
餓死というセンセーショナルなニュースは全米を駆け巡った。
裕福な家庭で高学歴を修め、将来を約束されていたのにアパートを引き払い
名を忍ばせ、貯金を寄付し、財布の紙幣を燃やしてしまう。
極寒のアラスカで自己を信じ自分を試す。
自然界に精通する人々からは無知で無謀と批判的なメッセージを浴びるのだが
彼のピュアな精神性はどんな理屈にも屈しない光を帯びる事となる。
荒野に散りばめられた痕跡を辿って作者のリサーチがはじまる。
次第に明らかになるクリスの足跡・・・
この原作も映画もともにすばらしい仕上がり、読後クリスの言霊は私たちが永遠に
引き継いでいくであろう。 彼はなぜ死んだのか? 裕福な家庭に生まれ育ったひとりの青年が、放浪の旅の末アラスカの奥地で一人餓死する。
彼がなぜ現代社会に背を向け、結果孤独に死んでいくことになったかを、彼と触れ合った人たちのインタビューや、
残されたメモから少しずつ紐解いていく作品です。
主人公(クリス・マッカンドレン)不在のため、彼の心の奥を知ることは不可能です。
そこで作者は旅の途中で彼が知り合った人たちや、両親、家族、友人のコメントから不在の存在を形作っていきます。
さらに自分が彼と同じ年代で体験した感情をシンクロさせることで、主人公の極めて近いところまで意識を近づけていきます。
中心がないが故に浮かび上がってくる一人の青年像を、多視線の構成で描いているのがこの作品の魅力だと思います。
また彼が死んだ本当の理由(ミス)が最後に明かされており、ミステリーの要素も持った作品です。
映画「In To The Wild」はまだ観ていませんが、ショーンペンがこの作品をどう映画化したのか非常に興味深いです。 冒険の本質 人類が多くの地を踏破して『未踏の地』がほとんどなくなった現在、冒険には地政学的な意味はなくなっている。それでもなお、人々が冒険者を讃えることがあるとするならば、冒険者が何に駆り立てられて旅たったのか、そして冒険によって何を得られたか、に共感できた場合ではないだろうか?
若者が旅たった経緯は綿密に調査されており、何が原因となって旅たったかは伝わってくる。しかし、いくつかの原因がわかるだけで、それらが若者を旅に駆り立てた様子が臨場感をもって書かれているわけではない。
一方、若者が自然との対峙によって何を得たのか?もしくは得られなかったのかについてはほとんど記載がないのではなかろうか?冒頭に『著者はできるかぎりでしゃばらないようにしている』との断りがあるが、冒険や苦行の過程が解っても、冒険の本質が上手く伝わらなければ元も子もない。
このノンフィクションで重要なのは、若者の死因が無知によるものではないことを弁明することでも、若者のえん罪を明らかにすることでもないはずだ。若者がこの旅よって何を得られたかについての共感なくして、本当に全米は震撼したのだろうか? ストイックな生き方 頭でっかちで視野の狭い若者の早過ぎる死。
準備不足で大自然に旅立った、未熟者の末路。
家族のことや周りの人の迷惑を考えない、自分勝手な旅。
色々と疑問に感じることの多かった本書ですが、読み終わってみて、これがノンフィクションで有ることを思い出す。
本書の主人公『クリス』のように、ストイックなまでに自分の人生哲学を追い求め、極限まで自分を追い込み、命を賭けるまで一生懸命になれるものが自分にあるだろうか・・・。
リアルタイムでそんな人物がいたことに、人生というものを考えさせられる一冊であることは間違いありません。 アラスカの地へ 実話に基づく話はとても興味が惹かれます。
クリス・マッカンドレスはまだ若き青年であり、チャレンジ精神旺盛な若者であったことは言うまでもありませんが、私が驚いたのはクリスは本当に自由な場所を求めてアラスカの地へ辿り着いたにもかかわらず、日記にはアラスカの事よりもその日捕まえた食糧の事のほうが詳細に書かれていたことです。
クリスと同様私たちも日々不本意な出来事に遭遇したり、人々の争い事に巻き込まれたりと煩わしさを感じることがありますが、もし万が一私がアラスカへ行って土地が与えてくれる食糧で生きていかなければいけないとしたら、喜怒哀楽を感じる前に毎日の食糧確保に一喜一憂する毎日を送っていると思います。
アラスカでのクリスの日記の内容が、食糧の事が大半だったことに頷けます。
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[ 単行本 ]
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風の中のマリア
・百田 尚樹
【講談社】
発売日: 2009-03-04
参考価格: 1,575 円(税込)
販売価格: 1,575 円(税込)
Amazonポイント: 15 pt
( 一時的に在庫切れですが、商品が入荷次第配送します。配送予定日がわかり次第Eメールにてお知らせします。商品の代金は発送時に請求いたします。 )
中古価格: 1,200円〜
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・百田 尚樹
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カスタマー平均評価: 5
楽しく、ためになる! 「永遠の0」で深い感銘を受け、購入しました。
今回はスズメバチのワーカーが主人公。オオスズメバチの驚くべき生態を踏まえつつ、マリアの潔い生き方、、戦士としての勇敢な姿が描かれています。
いつ命を落としても不思議ではない過酷な日々の中、マリアは必ず巣に戻ってくる。多くの仲間が1匹、1匹、と命を落としていく。その様は「永遠の0」の主人公を髣髴とさせます。
メスだけの帝国にやがて訪れる崩壊の日。その日に向けて大きな戦いが…。
こんな小説もあるんだ!と舌を巻きました。
ハチの生態なんて、普通に書かれたら全く興味ありませんが、こうもドラマチックにされてしまうと、「ためになった」を通り越して感動でした。 百田尚樹がまたやってくれました! 百田尚樹の名前は「BOX!」で知った。前作は、実に爽やかで純粋な青春小説だったが、今回の主人公は何とオオスズメバチのマリア(笑)。冒頭で、彼女たちが普通に会話を始めて、こりゃなんだと瞬時固まったが、読み進める内にページをめくる手が止まらなくなった。
マリアは成虫してから30日とは生きれない運命、ハンター=戦闘マシーンの異名に相応しい並外れたスピードとスタミナ、戦闘能力を持ち、女王に仕え、妹たちの成長に尽力し、日々獲物を追い続ける。
まるで「ファーブル昆虫記」のごとくハチの生態を細部まで緻密にレクチャーしたと思える描写、戦闘こそ唯一無二の日常、正に闘う為に生まれてきたと思える身体能力が生み出す狩猟シーンの生々しさとリアル感。
たかだか30日間の一生にも拘わらず、自然界のサイクルの激しさと、食うか食われるかの生存競争、交尾と産卵のみで一生を終える様々な虫たちの短き運命を見続けるマリア。限られた時間をただ戦闘にのみ命を燃やすその儚さと過酷さを、感傷的にではなくひたすら毅然と凛々しく描いていくが、それでいて死んでいく(狩られていく)者たちへの痛みや鎮魂も感じさせる。
「私たちは何の為に生まれてきたの?」。物語の中で、何度も繰り返されるこの自問、ある使命感の下で一生を捧げてそれに殉じる生き様を通じて、生きる事の尊さと意義を改めて考えさせられる秀作。
そして、誇り高いアリアたちの姿に、そう"たかがハチの一生"に感動させられ胸が熱くなる、これは冒険小説でもあるのだ。
エンタメ本としても、児童文学としてもお薦め!
こんなにドラマチックだなんて・・・! 主人公はメスのオオスズメバチ――TVで紹介されたとき、その興味だけで読み始めたのですが、ぐんぐん引き込まれて最後まで止まることができませんでした。登場する虫たちすべて無理に擬人化もされず、オオスズメバチの働き蜂の生涯を追いかけているだけなのに、それだけでこんなにドラマチックな物語ができるなんて・・・! すごいです。筆者の力量にも、スズメバチの生態も、どちらにも脱帽です。
物語の面白さに魅かれて読み終えると、スズメバチだけでなく、ミツバチや他の虫の生態にも詳しくなれる上、「利己的な遺伝子」ばりの遺伝手学的な説明もすんなり頭に入ってきます。これでスズメバチの写真でもついていたら、立派な科学書ともいえるかもしれません。
ハンターとして生きるオオスズメバチのワーカーの一生 自分自身は子供を生むことができず、女王が生んだ妹たちを育てるためだけに短い一生の全てを捧げるオオスズメバチのワーカー。その中でも、ハンターとして他の生き物を狩り、ひたすら妹たちのエサを運ぶだけのマリアの一生。全ての生き物は恋をして自分の子孫を残すためだけに生きるというのに、オオスズメバチのワーカーは自然界の掟に従うことも許されず、ワーカーとして妹たちのために戦い抜いた短い一生は、力強くも切なくて感動的な物語で、最後まで飽きることなく一気に読んだ。物語の核となるオオスズメバチの生態もしっかりと描かれており、オオスズメバチ以外のキイロスズメバチやミツバチ、そしてエサとなる他の生き物のこともよく調べられていてとても読みやすかった。 すごくおもしろい。でも。 まさしく、「みなしごハッチ」のオオスズメバチ版。
ただし、ハッチは幼児用アニメでしたが、こちらはそれを大人対象にした感じ。
主人公は働き蜂(戦士)なので、メス。
つまり「オオスズメバチ版 女の一生」ということもできます。
生まれてから死ぬまでのメスの一生のドラマ。
母や姉妹への尊敬と愛情、恋や出産へのあこがれ、自らの闘い(一生の仕事)への誇りと未練。
メスの蜂を擬人化した視点で描いているので、人間の女性のドラマみたいです。
すごくおもしろかった。
でも。
……虫、蜂やアリなんかの生態をそのままなぞっただけ、ともいえますね。
蜂やアリの一生は、素人の私がちょっとのぞいてみただけでも、すっごいおもしろい世界なんですよ。まさしくドラマ満載の世界。
それをすなおにテキスト化したらこの本になるんじゃないだろうか……
というような感想から、どうしても離れられませんでした。
こんなにおもしろいと思う反面、何がそんなにひっかかるのかというと、
この本、まるで、「ドラマの骨格だけを読んでいる感じ」が最後まで消えないんですね。
この先、この本を、アニメ化とか、漫画化とか、もっといえば、もういちどこれをノベライズすることもできるんじゃないの、と思わせるくらい、
「ドラマの血肉部分にあえてふみこまない距離感をずっと保ち続けている」んです。
つまり、二次制作者によって書き込む隙間がありすぎる脚本みたいな。
そういうポリシーの描き方なんでしょうか。
文章は、短く読みやすいです。
中学生の時、英語の副読本として読んだ、短いカラー絵本の和訳解答が、こんな感じの文章だった。
すごくわかりやすくて正確だけど、常に乾いた距離感がある。
これはこれでおもしろい文章ですが、さいごまで、ずーーーっとこのままの調子で続くのはちょっと悲しいと思いました。
何か、作者のほんとうにいいたいことは、読者の目からはかくされているような感じ。
それは読む人の何かに任されている、のかもしれませんが。
「源氏物語」みたいに、一度外国語に翻訳されてから、それがもう一度日本語になおって出てきたら、こんな感じの文章になっちゃいそうです。
そこに残された謎のような、秘密のようなものについて知りたくて、読み終わったあと、これの続編が読みたいと思ったり、この人の似たような他の作品を読みたいと思ったりするわけですが、
この作者の前作はボクシングの話だったとかなので……
たぶんもう、虫の話の続編とかはないんでしょうね。
この世界や、この虫たちの視点を、もっと突っ込んで広げてほしかった。
それが残念です。
ちなみに、繰り返しますが、すっごいおもしろいです。
読み終わるまで、本が離せなくなります。
読み終わったあと、また何回も読みました。
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[ 文庫 ]
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昼下がりの密会 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション ウ6-3)
・トレイシー・アン・ウォレン
【二見書房】
発売日: 2009-04-20
参考価格: 1,000 円(税込)
販売価格: 1,000 円(税込)
( 在庫あり。 )
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・トレイシー・アン・ウォレン
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カスタマー平均評価: 5
愛と誤解が交差する濃厚ストーリー 未亡人のヒロインが弟の借金を返済するために、資本家のヒーローと愛人契約を結ぶところから始まるストーリー。
彼女にとって屈辱的ともいえる愛人契約ですが、亡き前夫との間では得られなかった快楽の世界を初めて知ることに。
それにともない二人は徐々に身体だけでなく心も互いの虜になっていきます。
しかし、幸せなときは長くは続きません。原因は試練だったり誤解だったりとさまざま。
愛と誤解と憎しみがたっぷりと含まれている濃厚なお話でした。
前半は二人の情事がほとんど。後半は前半の甘々が嘘だったかのような切ない展開になります。この転落ぶりに目が離せなくなって一気読みでした。
濃いストーリー展開がお好きな方はぜひお手にとってみてください。
この作品は「ミストレス・シリーズ」と呼ばれるシリーズの第一作目らしく、今後も楽しみ!
しかし、このシリーズの第二作目が出る前に同作者の「トラップ・シリーズ」の第三作目、完結編をぜひ出版してほしいです。
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[ 単行本 ]
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原色3人女
・蝶々
【小学館】
発売日: 2009-04-21
参考価格: 1,365 円(税込)
販売価格: 1,365 円(税込)
Amazonポイント: 13 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 900円〜
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・蝶々
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カスタマー平均評価: 2
この人はエッセイ書きだと思った 蝶々さんの飄々としたキャラや軽快な文体が好きなので買いました。
悪くはないです。でも内容とオチは・・・物凄く「ありがち」。
おまけに登場人物の一人に恐らく自分を立てているのですが、
本っっ当にナルなんだなぁと呆気にとられる程、客観的に自分を褒めてうっとりしています。
小説という媒体を使う必要性を感じない。
この人はエッセイ作家だと思った本でした。
時々、ハッとさせられる表現や比喩、元気をもらえるような箇所もありますよ。
でも中古で十分(^^; うーん、、、、 以前雑誌に連載されていた時なかなか私好みでしたので読んでみました。が、
全体的に荒削りです。少しも想像力膨らみません。
情景が目に浮かんだり、そういったのがないので読んでいて退屈でした。
おそらく全ては作者の体験談なんでしょう。見たり、聞いたり、したことをかいているのだろうな、だから発信者の書き方ではなくレポート的です。
女子が上がる。。。。一体何処で上がればいいのか理解に苦しみました。
表紙はかわいいと思います。
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[ 文庫 ]
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日本文学史序説〈上〉 (ちくま学芸文庫)
・加藤 周一
【筑摩書房】
発売日: 1999-04
参考価格: 1,470 円(税込)
販売価格: 1,470 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,380円〜
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・加藤 周一
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カスタマー平均評価: 5
日本文化通史 単なる狭義の「文学」ではなく、文学を中心に、宗教、思想、絵画、彫刻などにも及ぶ日本文化通史である。にも拘らず極端に長くもなく、文庫本で上下2巻というのも、苦なく通読可能な範囲だ。大きな流れを損なわず、過不足なくディテールを展開する。個々の書物のさわり・核心を掴んでしっかり紹介してくれているが、常に流れの中での描写なので、俗にある「ダイジェスト版」の唐突感はまったくない。随分勉強させてもらった、という感じだ。各国語に翻訳されているのもうなずける。哲学理論を構えて、「対決」姿勢を示す批評が流行っているが、それは凄くスリリングで良いけれど、このような、忌憚のないところで楽しんで読める書物も欲しい。しかもレヴェルは高いのである。と言うわけで、良いことずくめのようだが、不満もある。現代に近づくにつれ、特に戦後になると、一体作家の評価はどうなってるんだ、と呆れかえるような評価が続出する。大体、朝日・岩波系の「知識人」には点が無闇に甘い。 高校生にすすめたい日本思想史 本書は単なる文学史というよりも優れた日本思想史です。日本人がどのような歴史的状況の中でどのような思想を紡ぎ出してきたのか、文庫二冊で概観でき、充実した読後感が得られること請け合い。国語の参考書としてのみならず、入試で日本文化史、とくに論述問題を出す大学を受ける高校生におすすめです。 鎌倉時代は優れた思想が綺羅星の如く現れた。 私は著者の全集で読みました。日本文学史の授業で習った作品は随筆や小説が多かったが、この本により、非論理的であると考えられてきた日本語は使う側によって十分論理的になることが例証された。 特に注目すべき点は、鎌倉時代の僧たちの著作である。著者の言うとおり、この時代の仏教者たちの著作は深い思索と宗教実践によって得られた経験を思想体系にまとめている。しかしこれらの優れた作品は中等教育では教えられていない。残念である。 印象的なのは、第二次世界大戦中国家主義思想に利用されてしまった日蓮である。彼は初めて仏教は国のためにあるのではなく、国が仏法のためにあるべきだと主張したそうである点は興味深い。つまり国家が中心なのではなく仏法が中心なのである。彼は今までになく、釈迦の教えに忠実であり、社会的にも実践していった点は学校の国語でも社会科の時間でも習うことができなかった。 このような点からも本書は一読する価値があり、古典への導入となる良書である。 自然科学的方法による日本思想文化史序説 日本文学史を自然科学的思考法により解析した日本思想文化史序説。時空的比較に特徴があり、日本の土着思想が外来思想との対比で論じられ、仏教と儒教と神道はしばしば引き合いに出され、菅原道真のシナ語の詩文と紀貫之のかなを利用した叙情詩が比較される。下巻では、宮沢賢治が柿本人麿に比較される。上巻は元禄文化まで。
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[ 単行本(ソフトカバー) ]
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外務省ハレンチ物語
・佐藤優
【徳間書店】
発売日: 2009-03-27
参考価格: 1,470 円(税込)
販売価格: 1,470 円(税込)
Amazonポイント: 14 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 948円〜
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・佐藤優
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カスタマー平均評価: 3
佐藤優版「お笑い外務省」 佐藤氏の著作の系列からいうと余技的な又は夜店的な作品と思いますが、それなりに楽しく読ませて頂きました。内容的には、(1)モスクワの日本大使館勤務時代に自ら偽造領収書を作成し裏ガネ作りに加担したことを認めたくだり(90頁)や(2)外務省幹部の情報には守衛さんが一番詳しい(95頁)、(3)免疫のない女性外交官こそセックスで失敗しがち(130頁)といった指摘が目を惹きました。(尤も、例えば「週16回」の話(179頁)や「3階トイレ」の話(203頁)のように他の著作で既に使われたエピソードも散見されるので、その意味では若干「二番煎じ」的な感じがしないでもありません。)
佐藤氏自身の自分評と思しき部分も面白い。「加藤氏はカルバン派のキリスト教徒なので、性的に平均的外務官僚よりは禁欲的だが、権力闘争で相手を徹底的に叩きのめすことに快感を覚える人物だ。カルバンが異端者を火あぶりにするのを好んだのに似ている。人間としては加藤氏の方が陰険だ」(136頁)。
それにしても、(全ての外交官がそうではないのかも知れませんが)外交官の蓄財メカニズム(例えば、スティルマン美紀恵氏)の下品さは何ということか(158頁、186頁など)。こういうのは本当に許せない。 下品な暴露本にがっかり 佐藤優はインテリでありたぐいまれなる能力の持ち主である。
しかし今回の作品はあまりに大衆迎合した下品な暴露本という印象をうける。
外務省のひどさは想像できるがそれをあえて著者が暴露するメリットはあるのだろうか?
正当派のノンフィクションを期待したい。 佐藤優の「最高傑作」 著者自身は「初の官能小説」と自虐的に紹介しているが、本質は外務省キャリアのカネと女をめぐる不正の糾弾にある。ときに権威を振りかざしながら、ときにせこく、欲望に向かって突進するエリート外交官の悪事(と間抜けぶり)の知られざるディテールがこれでもかと書き込まれている。あっという間に読了した。
「国家の罠」に始まる一連の佐藤作品が評価されるのは、単なる政敵の糾弾にとどまらず、敵たちの悪事の描写を通じて、人間の本質を冷徹に見つめようとする視点があるからだと思う。モスクワ大使館の幹部職員の妻が、新たに赴任した大使館職員の妻があいさつする際に「黒いハンドバックの中から白い手袋の先を2?3センチのぞかさねばならない」という、一般人には理解不能なプロトコルを要求するシーンが描かれているが、これを読んで「人間とは何か」と考えこんでしまった。
相変わらず、佐藤自身は「冷静な判断力をもち、欲望に左右されない無敵のヒーロー」として描かれている。ただ、それを差し引いても、外務省キャリアの悪事に関する豊富なディテールは読むに値する。
佐藤優にとって、外務省の不正を真正面から採り上げることはある意味宿願だったろう。しかし、なぜこの時期に出版したのか。深い意味があるのかもしれない。 佐藤優バブルの崩壊 佐藤優が登場してきた時は凄みがあった。
田中森一の「反転」とともに、国家権力とは何か、国策捜索とは本当にあるのかと
議論が盛り上がり、一方ではエネルギー価格の上昇に伴い、ロシアが勢力を盛り返し
ロシアへの関心が高まってきたことと重なり、まさに爆発的に支持が拡がった。
しかし、この本は頂けない。多分関係者であればすぐ分かるのだろうが、外務省の職員の
個人名を臭わせ、全編にわたり、お金と女がらみのスキャんダルを撒き散らしている。
佐藤優の本の中では、別作品と見た方が良い。
このような本を世に出すようでは、佐藤バブルも崩壊が近いのかも知れない。
今後の復活を期待したい。
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[ 単行本 ]
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望郷の道〈上〉
・北方 謙三
【幻冬舎】
発売日: 2009-03
参考価格: 1,680 円(税込)
販売価格: 1,680 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 945円〜
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・北方 謙三
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カスタマー平均評価: 5
かっこよすぎる男と女 北方氏の作品の多くが歴史小説になってからは
あまり読みませんでしたが、デカデカと新聞に
広告が載っていたので、久しぶりに買ってみました。
面白かったです!
あの時代にはこんなにカッコいい男と女がいたのか?
しびれます!
男性も女性も楽しめる作品だと思います。
読んでください 北方作品は20代のころからハードボイルド,歴史小説と読んできましたが、
今回の作品は、自分の人生にとっての一冊になりました。
宮本輝の「流転の海」・伊集院静の「海峡」シリーズを超える名作の誕生です。
是非、読んでください。 熱い時代の、熱い日本人の物語 かっこええ?。
新聞連載時から気になってはいたが、改めてまとめて読むと、ぐいぐいと物語に引き込まれ、ページをめくるのがもどかしいほどだ。
主人公・藤正太もかっこいいが、嫁の瑠が痺れるほどかっこいい。
博徒稼業をうら若き女性の身で継承した女親分。腹の座っていることといったら比類ない。
小説のエピソードのうちどれだけが事実かは知りようもないし、穿鑿することに意味もないのだが、話半分にせよ北方氏は「ものすごい」曾祖父母を持っておられるのだなぁと感服した。本当に、明治の時代にはこういう人たちがいたのかと思うと嬉しい。
熱い時代の、熱い日本人の物語。読んで損はない。 やっと届きました 待望の本が届きました。(まだ読んではいませんが・・)
新聞の掲載が終わった後、単行本の出版を首を長くして待っておりました。
一昨年来、新聞に掲載されている頃、毎朝読むのが楽しみで
朝2回読んで2回泣いて、夜(帰宅後)1回読んで1回泣いていました。
人生とは何か?、生き方とは何か?、信念とは?、男とは?・・・等々
考えさせられる事の多い小説でした。
掲載の途中、会社の朝礼のスピーチでその素晴らしさを
何度か紹介した程です。
これからは(本があるので)、何度でも、好きな(泣ける)所を読む事が出来ます。
そして、読み終った後の深い感動を、繰返し味わう事が出来る喜びでいっぱいです。
一人でも多くの方に、その感動を味わって戴きたいと思います。
これを読み終える事で一回り大きな人間になれると思いますので・・
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余談ですが・・
実は「ご不在連絡票」が3/24に届いてたのに、「色々手違いがありまして・・」
とぬかしまして(途中の経緯は略)、結局届いたのが3/26 22:10。
「有難う・・」と言って受取りましたが(一回り大きくなったものですから?)
胸中は、「xx急便 岩国店!! ええ加減にせえよ!!」と憤慨したのです。
正太ならどうしたでせうか?ネ
そして、予定より2日と6時間遅れので上記感想になった次第です。 ハイ
2009.03.26 22:20 (Caro 59才 ♂)
P.S.下巻にも同様の掲示をします。
“物語”を読む、醍醐味! 私、日経新聞を読み始めて25年、
通勤イコール日経ヨクヨムの生活です。
でも、朝刊の最終面から真っ先に読むってコトは、
滅多にまず無いんです。
だけど、この小説の連載中は、最終面まっしぐら!
ワクワクしながら読んだり、
ヨッシャァ!って、
思わず快哉を胸中に叫んだり、
反対に義憤に拳を固めたり、
ある日は翌日まで、どこか心の中で心配していたり、
またある朝は通勤電車の中で涙が止まらなくなって困ったり・・・
こんな連載小説は初めてでした。
だから、これから、この本を読まれる方は、
そう言う意味で、とってもお幸せだと思います。
疾風怒濤の物語が、
無駄をそぎ落とした強靭な文章に乗って、
我々の琴線を揺り動かしにやって来ます。
「日本の大衆文学の伝統に、新たな地平を切り拓く大傑作」
なんて、月並みとも思われる賛辞が、
ドンピシャで当てはまってしまう、
まさしく読書の至福・醍醐味を味あわせてくれる一冊です。
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[ 単行本(ソフトカバー) ]
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華鬼2
・梨沙
【イースト・プレス】
発売日: 2008-10-17
参考価格: 1,050 円(税込)
販売価格: 1,050 円(税込)
Amazonポイント: 10 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 770円〜
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・梨沙 ・カズキヨネ
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カスタマー平均評価: 5
続きが楽しみ! 第2巻では、主人公を拒否し続けていた華鬼(かき)と、華鬼に戸惑い続けていた主人公がラストにかけてお互い徐々に心を開いてきた…の…か…?という感じです。
ついにきました。
それまで読者は焦らされてきたので(私だけ?)、なんだかニヤニヤしてしまいました。
もう、続きが楽しみで仕方ありません!
ネット小説では荒さも目立ちましたが、丁寧に加筆されていて、人物や世界観などより深く描かれているという印象を受けました。カズキヨネさんの挿絵ともマッチしているし、主人公や華鬼以外の登場人物もみんな魅力的です。
今月には待望の第3巻が発売されるので、すごく楽しみです! 伊織姐さんに星5つ! 1、2巻と続けて買い放置していましたが余裕が出てきたので読みました。 面白かったです! 同名のPCゲームと勘違いし買ったのがきっかけでしたが…。暗い主人公はあまり好みじゃないのですが、華鬼に対する健気な態度にやられてしまいました。 ツン100%の華鬼が花嫁神無によってどこまで変わる………というか素を出していけるかが楽しみです。 響と四季子の存在が鬱陶しくてたまりませんが……………華鬼一派が存分に蹴散らしてくれるだろうと祈っております。 桃子が裏切りそうで怖いですが…。 挿し絵はカズキヨネ氏だし…ゲームにならないかな……と考えるのは私だけでしょうか? 負傷した国一がどんな変化をみせたか気になります!早く続きを! 文脈がなってない文章ですがここまで読んでいただいて幸いです。 待ってました。 約一年ぶりの新刊です。
次からのはもう少し早く出るそうですよ。 鬼頭生家編 1年2ヶ月ぶりの新刊です。
カズキヨネさんの美しいイラストが目立っています。
久しぶりの新刊ということもあって、前編を読み直しておこうかとも思いましたが、
簡単なあらすじと本編の中でも人物説明があったので、
その必要はありませんでした。
舞台は学校から華鬼の生家に移ります。
あいかわらずのシリアス展開ではありますが、
場所によっては結構あまあまですので、思わずニヤニヤしてしまいました(笑)。
「鬼」という独特な設定のためが、各キャラの背景説明がやや多めで、
ちょっとくどい感じもしましたが、
謎がそれなりに解けたのでマイナス要素にはならないかと。
期間限定特典の番外編「華の追憶」がネットから読めます。
前編にも初版限定の番外編小説がありましたが、
今回は「期間限定」(2009年1月9日まで)ですので、
無理して初版本探す必要はないと思います。
全3巻予定だった華鬼ですが、なぜが全4巻に変更になりました。
このペースだと完結は2010年(汗)。
気長に待ちましょう。
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[ 単行本 ]
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ZOKURANGER
・森博嗣
【光文社】
発売日: 2009-04-21
参考価格: 1,785 円(税込)
販売価格: 1,785 円(税込)
Amazonポイント: 17 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,100円〜
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・森博嗣
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カスタマー平均評価: 0
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[ 文庫 ]
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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)
・村上 春樹
【新潮社】
発売日: 1988-10
参考価格: 580 円(税込)
販売価格: 580 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・村上 春樹
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カスタマー平均評価: 4.5
幻想的な現実感 村上作品はノルウェイの森以来2作目。
ハイテンポで現実的なハードボイルドワンダーランドと
ローテンポで幻想的な世界の終わり
その相反する二つの世界が繋がり重なり合う。
「私」が使うことが出来るシャフリングという能力に隠された謎。そのキーである「世界の終わり」という言葉。突如手にする事になる一角獣の頭骨。計算士と記号士。やみくろという謎の種族。システムとファクトリー。太った女とリファレンス係の胃拡張の女。そして博士。
「僕」が訪れた「世界の終わり」という街。心を持たないが故に穏やかな永遠の日々を暮らし続ける人々。「僕」の記憶の大半を持つ引き剥がされた「僕」の影。街に住む一角獣。古い夢と呼ばれる一角獣たちの頭角。夢読みである「僕」の手伝いをする図書館の女の子のなくしてしまったはずの心。「僕」の影の脱走計画。
全ての謎が優しく、それでいて複雑に絡み合い二つの世界は除々に重なってゆく。
本当にいい作品に出会えた。 村上春樹からの壮大なメッセージ 世界から脱出しようとする「世界の終わり」の「僕」と、世界から消滅しようする「ハードボイルド・ワンダーランド」の「私」。 二つの異なる世界は次第にシンクロしながらもそれぞれの結末へと歩を進め、それは誰にも止める事はできない。 村上春樹の谷崎潤一郎賞受賞作、堂々の完結。 自らの意思とは無関係に不条理に翻弄される「僕」と「私」。 一貫して繰り返される世界における己の存在に対する問答、そして、逆境に立たされた人間の絶望。 巧みなのは、理不尽や悲哀を下地にしながらも、「世界の終わり」の詩情に満ちた情景や、「ハードボイルド・ワンダーランド」の軽快さと哲学を織り混ぜた躍動というギミック。深甚なるテーマを扱いながらも、著者の衒学趣味やアイロニカルなレトリックの挿入で、肩肘を張らずに読ませる手法は、大いなるを実験性を秘めた文学の挑戦であって、まさに、喪失の文学たる村上春樹作品の王道と呼ぶにふさわしい意欲作だ。 ラストでの「僕」と「私」の選択は実に対極的である。 共に世界に弄ばれながらも、宿命に対して、抗う「僕」と、従う「私」。 充足への疑念と喪失への達観という対極的な二人の主人公の対応は、人がアプリオリとして持つ「意思」という名の原罪のメタファーでもある。 アイデンティティーを保て、そして、自我に忠実であれ。 そんな村上春樹の投げ掛けるテーゼに、読み手は射抜かれる事なる。 真に高尚なる文学は、作品としてアーティスティックたる事、かつ、読み物として満足できる事。 だが、現実には万巻の書の中でも、この条件をクリアできるものは稀少なのが実状。 故に、現代の日本文学において、この作品はまさに、至宝といえるのだ。 これは、不死という幻想を通して、人間の魂を描く、破格の物語だ。 何時の時代もBobDylanはいい 1985年(昭和60年)にオリジナルが出た本書は、平成20年を過ぎた今も面白く読むことがきる。
パラレル・ワールドを描く本書は、「カフカ」の先駆けのようなものだけに興味深いが、それにしても、当時は"Positive Fourth Street" "Watching the River Flow" "Menphis Blues Again" そして「激しい雨」が一本に収まったテープがあったんだなあ。 食べ物、音楽が・・・ 村上春樹初期4部作、他4冊ほど読んでそれなりに面白かったので今回この世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
を読んで見たのだが、
食べ物、音楽の曲名がこまごまと書かれていてうざったく感じた。
食べ物、音楽に関しては村上氏の小説の手法ではあるが他の作品では、
あまり感じなかったが今回は特にうざったく感じた。食べ物、音楽でなければその時の感覚を表現できないのだろうか?
その食べ物、曲を知らない人には何も意味をなさないのではないか?
村上氏は読者が皆自分と同じように食べ物、曲を知っていると思って
いるのだろうか?
この小説を読んでいて村上氏にちょっと失望した。
〈私〉の目覚める時 前々からこの作品の続編が噂されている。著者のファンである私もにわかに期待している。にわかに期待し続けてもう10年になるだろうか。後の長編ダンス・ダンス・ダンスで主人公である僕が、ある朝目覚めた首都高沿いの住居の一室で僕の居る場所の確認を再認識する場面があるが、その後に続く村上春樹作品に伏線として登場する〈私〉或いは〈僕〉の影のような存続性を垣間見せるところがあるように感じられる。 作品としてはふたつのパラレルワールドが同時進行する現実とも異世界ともどこかで繋がっていても決して不思議でないふたつの異なる世界で展開される。〔世界の終わり〕では、受動的な世界に居る〈僕〉は、分身である〈影〉を他界に送り出した後で〈彼女〉と共に新たな生活を選択する。〔ハードボイルドワンダーランド〕の世界では能動的な現世の中で半永久的な眠りに付く〈私〉は、目覚めることがあるとすれば果して本当は何時誰にどのように目覚められるのだろうか。ストーリーテリング溢れる、いろいろと想像力を掻き立てられる作品だと思う。 ふたつの世界の主人公である〈僕〉と〈私〉は巡り会うこと或いはひとつになることが出来るのか。果たしてそうなることが本当によいことなのか。 世界はもう終わっているのに。
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