神風連の鎮圧には、後の日露戦争の立役者、児玉源太郎が活躍した。このとき若干24歳。みごとな統制で夜襲の混乱を建て直し、一気に乱を押さえ込んだ。大物の片鱗が見える。
天下泰平のための天下三分の計。それも曹操の天下統一であってはならないとする理念によって孔明の言動を記述しようとする、小説でしかなしえない新鮮な見方が面白かった。
猛獲の七擒七縦を、孔明と猛獲との芝居であるとする解釈はさすがにどうかと思うのだが。 諸葛孔明(上)東南の風を祈祷しなければ、北斗七星の旗を掲げた神軍も登場しない。そこには堅実な智謀により、乱世を収束させようとした孔明の姿があった。血に塗られた戦いのシーンは極力避けられ、立場や心情、綿密な時代背景の描写によりストーリーが展開していく。ここ一番の派手さはないが、孫権が奏案(テーブル)を切ったのも、孟獲が七度放たれたのも、孔明演出の出来レースだったという設定がおもしろい。詭計よりも入念な地固め、行き届いた根回しによって策を展開する。気配りは天下一品、己を滅して和を重んじる反面、読者サービスなのか内なる感情を暴露する事も忘れない。妻が重要な役割を担っている点も、女性読者である私には嬉しい限りだった。神格化された清廉潔白な孔明よりも、努力家で家庭のにおいも感じさせる孔明…陳舜臣の諸葛孔明は、今までに読んだどんな本よりも、私を満足させてくれた。…何作か三国志作品を読まれた方には特にオススメの本です。
黒田清隆の妻斬殺事件のエピソードが興味深かった。大久保利通は、この事件を揉み消したことが、のちの暗殺の一因となった。全編を通して、決して私利私欲や出身藩への利益誘導に走ることのなかった大久保がなぜ、黒田に対して厳しい措置がとれなかったのか。謎は多い。