ストーリーとしては、かつては日本一の選挙参謀といわれた主人公が現在はおちぶれてしまい、復活をかけて自分の故郷の現職市長の再選依頼を受けるが、相手は若いやり手の市議会議員。普通にやったら勝ち目はないと思われるところをどうするか、というもので、これを選挙の手法や応援の市議会議員や国会議員などの関係も絡めて選挙の結果が出るまでを描いています。
ストーリーとしては、なるほど、こういう展開もあるのかという驚きと、主人公の屈折した内面に関する共感があり、楽しむことができました。
選挙の方法の勉強としても、なかなか参考になりました。「裏でお金を渡す」といったものは実際にはなかなか使えないですが、選挙カーでの演説や駅でのあいさつ、人心掌握の方法などは、「こういう方法、考え方もあるのか」と感心しつつ、今後何らかの形で生かしていこうと思いました。
地名などはどうやら架空のものらしいですが、人名は実在のものも使われているようです「大前健一」「野末陳平」氏といった方たちの名前や方法論が記載されているので、これが本当かどうかも含めて興味をそそられるところでした。 おもしろかった!!選挙の裏側を細かく書いてあり、立候補者や対立候補の心情が、よく解った。 また、心ひとつ、一言で、こんなに人が変わるものかと、 思うと選挙は恐ろしい。
続編はうってかわって銀行内部のちまちました人事抗争の話に終始する。金融システムが腐っているから経営陣も腐るのか、はたまたその逆なのかはわからないが、クズの銀行役員同士のゴミのような人事抗争。それに振り回される銀行員たち。この話もおおむね事実に即しているのだろうから(モデルは某銀行)、こういうカスのような話は多かれ少なかれ実在したのだろうがそれにしてもあほくさい。
フィクサーが出てくるのもいただけないが、主人公と若い女子行員との不倫の話も現実感が乏しい。おやじ好きの若い女は何らかの意味でファザコンの素因なり家庭環境を持つのだが、そういう背景を書き込まずにすませた著者の安易さが気に入らない。
かろうじてこの本を読んで収穫があったとしたら、国民的英雄と目される人物が実体は全く違う人物であることを繰り返し繰り返し強調してあることか。
日本の「失われた十年」が依然終わらないまま、さらに年月を空費しているのは、すべての銀行経営者を投獄しなかったからだというのもうなづける。