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[ 文庫 ]
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毒笑小説 (集英社文庫)
・東野 圭吾
【集英社】
発売日: 1999-02
参考価格: 630 円(税込)
販売価格: 630 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 39円〜
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・東野 圭吾
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カスタマー平均評価: 4.5
幅の広い笑いが楽しめる シニカルな「黒笑小説」に比べ、こちらはプッ・・!と吹き出してしまうような笑いがところどころで起きる。
が、中にはしんみりした作品や本業のミステリーも収められており、黒笑よりも幅広く楽しめる1冊ともいえるかもしれない。
思わず声を出して笑ってしまったのが「ホームアローンじいさん」。
家族が出かけた隙に孫のAVを観賞しようと企むのだが、このじいさんの行動がお笑いのコントばりにマヌケで、何度読み返しても笑える。
巻頭の「誘拐天国」も、おじいさんが主人公の話。
孫と遊びたいがばかりに誘拐してしまうのだが、とにかく発想がはちゃめちゃで、怖いもの知らず。
東野流の皮肉が込められた毒あり、笑いありの1冊。 毒のない「つぐない」が特にお奨め 本作は、「怪笑小説」に続くブラックユーモアに満ちた短編集です。
冒頭の壮大な「誘拐天国」から、毒に満ちているのですが、
かえって全12編の中でキラッと輝いているように感じられたのが、
「つぐない」です。仕事一筋の中年男の新たな挑戦の意味は?
償いたい相手とは誰か?幕切れも印象的です。
また「栄光の証言」も、日の当たらない人生を送ってきた男の心理が巧みに描かれています。
ちなみに、古典的名画「12人の怒れる男」にも、
この男のような証言者が現れます。
ふと、著者の着想の源はこれかなと思ったりもしました。 あのー クスリとも笑えない。本当に。いまいちな短篇が集まった感じしかしない。 笑いたいとき、手にとってみては 思わずニヤリとしてしまう短編ばかり。笑いたいとき、
気持ちを軽くしたいとき、そんなとき手にとりたくなる
本だ。
収録されている12篇のうち印象に残ったものを3つ選
ぶとしたら、次の3つだろうか。
塾や習い事に忙しい孫を自由に遊ばせるために誘拐を企
てた「誘拐天国」、
責任を他人におしつえけようとする気持ちを巧みに表現し
責任転換の連鎖を描いた「誘拐電話網」、
笑いからせつなさへ感情をゆさぶられる「つぐない」。
巻末には京極夏彦氏との対談もあり、ミステリー作家と
は別の顔の著者(東野圭吾氏)を知ることができる。
著者の毒のこもった笑いが満載 巻末の京極夏彦氏との対談で、著者が「主人公に悪意を持って書いた部分が、みんなに面白がられているような気がします」と話していて「なるほど」と思いました。
特に本書は、『怪笑小説』以上に、そんな著者の主人公(もしくは主要人物)に対する「悪意」が感じられます。
そんな「悪意」を「ブラックユーモア」の域に持っていくのは、簡単なようで実は結構難しいかと思われ、著者の力量は絶賛に値します。
中でも「マニュアル警察」は、話の進め方に最初から最後まで笑いっぱなしであり、「うまい!」とも感じました。
そして「ホームアローンじいさん」は、『怪笑小説』の「鬱憤電車」同様、「その後」を想像したら肩がブルブル震えるような笑いがこみ上げてきました。
「手作りマダム」も、オチがかなり気に入りましたね。
(2009年4月19日加筆)
本書に収録の「本格推理関連グッズ鑑定ショー」は、同じく東野氏の著書である『名探偵の掟』の「第一章:密室宣言」の外伝(それもブラックユーモアの要素満載の)であることを知りました。
「本格推理関連グッズ鑑定ショー」だけでも十分楽しめることは楽しめます。
ただ私は「本格推理関連グッズ鑑定ショー」→「密室宣言」の順で読んでしまったのですが、これですと、
1)「本格推理関連グッズ鑑定ショー」に、「密室宣言」のネタばれが含まれている。
2)「密室宣言」を読んでおくと、「本格推理関連グッズ鑑定ショー」の背景がわかり面白さがより深くわかる。
そのため、「密室宣言」(『名探偵の掟』)→「本格推理関連グッズ鑑定ショー」(『毒笑小説』)の順で読むことをお勧めします。
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[ 文庫 ]
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殺戮にいたる病 (講談社文庫)
・我孫子 武丸
【講談社】
発売日: 1996-11
参考価格: 600 円(税込)
販売価格: 600 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 198円〜
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・我孫子 武丸
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カスタマー平均評価: 4
友人に読ませたい 「かまいたちの夜」で作者の名前を知って、試しに読んでみました。
最後の1行ですべてをひっくり返されました。
犯人の日常やグロいシーンなど、すべてがラスト1行の伏線になっています。
いろいろなどんでん返しの小説を読みましたが、
これほど鮮やかなどんでん返しは他に知りません。
必ずもう一回始めから読みたくなる小説です。 この作品だけは、、、。 いつも小説を読むときは、先入観を持たずに読むように心がける。
だから、いろんなトリックにだまされる。
それが小説を読む時の醍醐味と思っている。
もっとも最初から頭の弱い俺は、なぞ解きを構えても分かるものは少ないのだが。
しかし、みんなが絶賛しているこの作品は、残念ながら、1/3ほど読んだところで、
あれ、これは、きっとこうだろうと分かってしまった。
非常に残念である。
ただ、こういうグロイ小説は嫌いではない。
また、確かに、よく考えられた小説であることは認める。
これが、途中で気がつかなければ★5だったのになあ。
ネタバレを避けたので、分かりにくいレビューで、申し訳ない。 う?ん 矛盾点はないんだけど、少々アンフェアな気がします。読後の切れ味も悪く、もやもやしながら読み返すはめに。 豪快な投げっ放しジャーマンが決まりました とにかくオチのどんでん返しにつきます。
何しろ300ページをラスト1ページのための伏線として徹底しているわけですから、
ともすれば、それまでの展開が投げっ放しに感じてしまう程かもしれませんが・・・。
文章力も確かですし、ここまで破壊力のあるオチもそう無いので
一読の価値有りです。 両立させている いわゆるどんでん返しモノとしてはこれまで読んだ中で最高の出来です。オチの見事さだけでなく小説として優れた描写力が発揮されているのが他との違い。猟奇的な場面が頭に浮かびますがそれも文章力があってこそ。「星降り」とは比べ物にならない。
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[ 文庫 ]
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文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)
・京極 夏彦
【講談社】
発売日: 1998-09
参考価格: 840 円(税込)
販売価格: 840 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・京極 夏彦
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カスタマー平均評価: 4
読み物としては面白い。ミステリとしてはどうだろうか。 簡潔なレビューにします。
レビュアーについて:
-大学生
-文学好き
-本格ミステリ好き
-ミステリに関しては多くの作品を読んでいます。
本作を読むにあたって気になるかもしれない点:
-読みづらい文章か?→確かに多少一般的ではない言葉などでてきますが、全体としては非常に読みやすいと思われます。中学生辺りからなら全く問題はないと言えます。
-長くて疲れないか?→京極氏の作品は長いので有名ですが、基本的には内容がとても魅力的なのでがんがん読んでいけると思います。
-怖い・グロテスク?→そういう描写は多少ありますがそれほどではありません。ホラーやグロ小説ではないのでご安心ください。
良い点:
-題材が面白い。京極氏らしい和風で妖怪ちっくな(?)素敵な世界観があります。
-キャラクターが魅力的。漫画やアニメのキャラクターのように、とても個性的な登場人物が多いです。だからと言って非常に非現実的になるわけでもなく、読んでいてそれぞれの特徴が浮き上がって来るので非常に面白いです。
-小ネタ・うんちくが面白い。へぇ、とかほぅ、とうならせてくれる登場人物同士の会話が多いです。なるほどそれは考えたことはなかったなぁと思うような個所も多々あります。こういった小ネタも物語を暗示していたりするので後々気づいてにやりとします。
-すっきりしている。これはトリックなどとは別に、物語として完結しているという意味です。次の作品に続いている、ということはありません。安心してこの一冊だけを購入しても問題ありません。
残念だった点:
-ミステリーらしさがあまりない。確かに物語冒頭あたりから「謎」は出てくるし、それを解くのが本作品の趣旨です。しかし、いわゆる典型的なミステリのように証拠品探しはありません。聞き込み捜査的なものはありますが、これも微妙といったところ。しいて言うならば、「読者参加型・挑戦型」のミステリーではないですね。
-超常現象的なところがある。リアル志向な方にはちょっとこの点は気になってしまうかもしれません。とはいえそこまで物語に影響を与えるわけではないのですが、本格的なミステリ志向の私にとっては「うーん、それってアリかなぁ?」と思ってしまいました。
総括:
-読み物としては非常に面白い。楽しく読めますし、がんがんページが進みます。
-本格的なミステリーではないです。トリックは「なるほど」と思えれば、同時に「それってアリかなぁ」とやはり思ってしまうものでもあります。 一気に読ませるパワフルな小説です。 600ページを越える厚さで、読み手を威嚇しているように見えるかもしれません。
あまりの厚さ、重量感から、この本そのものが殺人事件の凶器になりそうで怖いです(?)
最初の100ページは、人間の意識の話です。
ここはある程度この分野の評論などを読みなれていないと難しいと思われます。
ただ、これは必要な枕なのです!この部分なくしては、謎解き部分の面白さが半減します。
ちなみに私は、ここを読んだ時に、自分の外界認識がぐらつかされ、
女の顔が隙間から覗いているのではないかという妄想に取り付かれ、少し怖かったです。
謎解きの部分は、20ヶ月妊娠している女、その姉、両親、同居人の
過去、生い立ちほとんどすべてが解明されます。そこで読み手は憤り、
また、極限の悲しさを体験することになるかと思います。
語られてきた要素が解決に向けつながっていくのを読む快感を得ることもできます。
特にこの部分は面白くて、飽きっぽい私ですが、夢中で読みました。話は悲しいのですが。
謎解き役の京極堂こと中禅寺秋彦は皮肉屋です。
しかし、彼の頭に入っている知識量、それをつなぎ合わせる的確かつ柔軟な思考力は
驚嘆に値しますし、読み進めるうちに、
皮肉屋の仮面をかぶっているだけで、とても優しいやつなんだと分かります。
1作目は特に、京極堂の魅力が炸裂しています。面白いです。 読者に対する憑物落とし? 分厚い本の多い人だな、という印象しかなかったこの作者の小説を、初めて読みました。まんまとアニメ(「魍魎の匣」)から入りました・・・。
この本も分厚いです。でも一気に読めました。冒頭で長々と続く認識論?からして、「へえー」と感心してしまいます。
日常と非日常、普通の人と「憑物筋」の人は、まったく別個にあるのではなくひとつのものの違った面にすぎない。だから「この世に不思議なことなど何もない」。
一見異常に見えるものも、単にそれ自身の論理に従っているだけで、存在する場所はみんな同じ「この世」・・・その主張は真摯なものだし、共感できました。まっとうです。
でも! だからこそ、事件のこの顛末はなんだかちょっと・・・。
トリックにあたるもの自体は当然の流れによるものです。でもそれがシステマチックというか。そういうことかと理解はできるだけに、重みを失ってしまうというか。
結局やっぱりこっち(探偵側と読者)の理屈で謎解き?と思ってしまうほどに、解説がわかりやすく、てぎわよく進む、ということなのか。
そもそも、「この世に不思議なことなどない」に限っていえば、謎が解かれることはこの話に本当にふさわしいのか? 陰陽師探偵・京極堂は、一貫して非日常的なものにフェアな態度を取りますが、認識を変えることによって不思議だったものが不思議じゃなくなる=憑物落とし・・・というのは、その不思議だったもの本人にとって救いになるの?
そのあたりに思うところがあるからこそ、京極堂自身も謎解きに乗り出すのを渋るのだろう・・・ということは読み取れるようになっていますが。
いかに事件を解決するかが肝心のミステリであるにもかかわらず、そんなことを考えさせられてしまいました。もしかすると、読んでいるうちに事件の関係者たちに同情してしまうせいかも。
そういう意味では、無意識に持っている差別的な感情を読者に気づかせてくれる、啓蒙的な価値もある一冊です。読者も憑物落としされるといえるかもしれません。なんかちょっとすっきりしないものが残るにしても・・・。 六百ページ…… 内容に深さもあり、謎解きも「なるほどね」と言わされる。序盤の認識論についての議論は、読書慣れしていないと辛いかもしれない。 難しいからと言って逃げずに中盤まで読むことが出来れば、最後までは一直線の流れにのって楽しむことが出来る。 読み切るのに、だいたい6?8時間は必要かなと思います。 横溝正史風ウンチク満載のミステリ小説 京極夏彦というと「妖怪」とか「おどろおどろしい」というイメージがあり、さけていましたが、あにはからんや「妖怪」はあくまで象徴的な存在であり、京極堂はあくまで、論理的に事件にいどみます。時代が昭和中期、戦後間もない時期ということ、また内容が結構陰惨なことから、横溝正史を連想させますが、妖怪のなりたちや歴史、史実など膨大な知識をベースに事件に挑むミステリ小説です。文系、森博嗣というかんじでしょうか。その厚さ故、レンガ本などと称されますが、ウンチク部分が多い分さほど苦もなく読めます。姑獲鳥の夏は、20ヶ月出産しない女性とその夫の失踪をあつかった事件ですが、事件のトリックは割とかんたんにわかります.とにかく京極堂のウンチクおよび人間そのもののおぞましさを楽しむ小説です。
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[ 文庫 ]
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犯人のいない殺人の夜 (光文社文庫)
・東野 圭吾
【光文社】
発売日: 1994-01
参考価格: 580 円(税込)
販売価格: 580 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 35円〜
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・東野 圭吾
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カスタマー平均評価: 4
全てが良作の短編集 殺人についてはこれは法律上、罪には問えないであろうものや過失致死か正当防衛ではないかというものも見られます。
しかし、この作品の最大のキモは「どうしてこんな悲劇が起きたのか」というもので、いわばミステリーとしての魅力よりもストーリーテラーの魅力だと思います。
無論、ミステリーとしてもトリッキーで意外な結末には驚かされます。
ただ、少々、後味の悪い部分がありますね。一部を除いては悲劇的な犯人ばかりですから。 ダークな後味の短編7本 本作は80年代半ばに著者が発表した短編推理小説を編んだものです。
活字であることを生かしたトリックが印象的な、
表題作と「白い凶器」。
また、未成年の危うい心理を織り込んだ、
「小さな故意の物語」、「闇の中の二人」、「踊り子」。
いずれも結末はダークといえるのですが、
読み応えのある粒揃いの短編集だと思います。
傑作揃いの短編集 意図的なのかどうかわかりませんが、この短編集には東野圭吾が初期に得意としていた青春ミステリ的な作品が数多く収められています。彼はその後、その手法を封印したので、彼の初期作品の味わいを求める向きにはこの短編集はぴったりです。特に冒頭の『小さな故意の物語』はタイトルも含めて、青春の儚さを感じさせる傑作だと思います。『踊り子』もかなり切ないです。青春ミステリとは呼べませんが、『エンドレス・ナイト』も悲しくて美しい物語です。
タイトル作の『犯人のいない殺人の夜』は、タイトルがカッコいい割にはいまひとつ内容との関連が薄いのが気になりましたが、内容的には見事な作品です。事件の概要をあからさまに読者に見せておきながら、見事などんでん返しを見せてくれます。詳しくは書けませんが、こういう人を語り手に設定するという技には度肝を抜かれました。 秀作短編集 1985年?88年にかけて雑誌に発表された短編7本。
高校を舞台に親友の転落死の謎を描いた「小さな故意の物語」,東京?大阪間のアリバイ崩し「エンドレス.ナイト」などいずれも粒ぞろいの秀作。
特に「闇の中の二人」での赤ん坊の笑顔や,煙草の煙害で流産したと思い込んだ母の物哀しい復讐劇「白い凶器」のラストの子守唄などホラーの要素たっぷりで,読んでいてゾクッとする。
東野圭吾の作家としての懐の深さ,ストーリーテラーぶりを堪能できる好短編集。 いくつか読んだ東野圭吾の短編集の中で1番かも。 基本的に、東野圭吾さんの本は長編を選んで読むのですが、この本は、それぞれに面白みがあり、話の展開に意外性があり、どれも最後が気になり、すぐに読めます。
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[ 文庫 ]
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虚空の旅人 (新潮文庫)
・上橋 菜穂子
【新潮社】
発売日: 2008-07-29
参考価格: 620 円(税込)
販売価格: 620 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 185円〜
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・上橋 菜穂子
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カスタマー平均評価: 5
チャグムの成長ににんまり 「精霊の守り人」シリーズの文庫最新刊です。
「精霊の守り人」の主役だった新ヨゴ国の皇太子のチャグムが再び主人公となります。前三作のファンの方なら、「おぉ、、チャグムが立派に成長している」とちょっと感動してしまうと思います。
さて。物語の舞台は、ヨゴ王国周辺を離れて、南の大洋に面した新しい国が登場します。そして、その新登場の国の新しい王の即位式にあわせて、諸外国の人々も登場、そしてまた南の海洋の果ての大陸を統一した帝国までもが暗躍という形で登場します。言い換えれば、今まではチャグム、バルサ、トロガイ、タンダたちの生まれ故郷やその周囲だけだった物語が、一気に広がりをもって厚みをもちました。おそろらくは、彼らの運命が,最初の半島だけにおさまるものでなくなり、また、旅人や守り人の物語が他の各地でも起きるのでしょう。
そういう意味ではこの巻を楽しむだけでなく、先に繋がる大きな楽しみを約束してくれた巻でもあります。で、話戻して、今回のお話では、チャグムがその即位式に新ヨゴ皇国の帝の名代としてやってきたところ、王位継承の儀式の裏で、巨大な侵略の魔の手が王国に伸びていました。第二王子に呪いをかけて第一王子を殺させようとしたり、配下の島々の長を寝返るように秘密交渉をしたりと、ただ単に力押しの武力で攻めてくるよりも厄介な搦め手で攻めてきます。話の行きがかり上でその陰謀に立ち向かう事になったチャグムが、部下の星読のシュガに語る彼なりの帝としての心構えがすごくよかったです。
帝として国をおさめる為政者である以上、人を見殺しにしなくてはいけないこともある。だが、自分には、そういう時でも黙ってやらずに必ずそれを事前に教えて欲しい。そういう覚悟の為政者になろうとしているところに、理想だけでなく現実をも見ようとしているチャグムの成長がしっかりと見えました。こういう少年が経験と智慧をつけて為政者となっていく国はきっと立派な国になるのでしょうね。
あぁ、日本とはえらい違いだ。と全然関係ないこともちょっと思ってしまうような本読みでした。
しかし、、、これで文庫は全部読了。あとまだハードカバーが6巻もあるんですよねぇ。文庫落ちまで我慢できるかなぁとそれが心配。 今までとは違います。 シリーズ4作目になって「守り人」から「旅人」になりました。今までは女用心棒バルサが主人公の話。今回の「旅人」は皇太子チャグムが主人公です。バルサはチャグムの記憶の中でしか登場しません。
バルサで守り人シリーズに親しんでいるせいか、今作はちょっと今までと違う感じがしました。14歳になったチャグム、チャグムの相談役として側に仕えるシュガ。2人の成長と変化。それに世界も広がります。
舞台となる国は違いますが、1作目の精霊の守り人のあとに続くストーリーとして、守り人シリーズだと感じさせられます。闇の守り人で登場したカンバル王と王の槍の登場は世界の繋がりを感じさせます。
サンガル王国で再びナユグの世界を感じるチャグム。王国内で動き始める陰謀、遠い南の大陸からの侵略が始まろうとしています。同じ年のタルサン王子との出会いでチャグムの皇族としての心の闇と希望を感じさせる作品です。今まで違うのは、この先に戦争という脅威があるということ。激動の波がこの先に迫っているという事実が、早く続編を読みたい!という気持ちにさせます。ゆったりと流れていた時間が急速に加速しだし、今後のバルサとチャグムをどう飲み込んでいくのか、気になって仕方ありません。 力と虚空 このシリーズ、ここまでは、一定のパターンで物語が進みます。
著者の筆力は確かで、数ページで読者を独特の世界観のなかに引きずりこみます。
主要人物がナユグに引き寄せられてゆくかのように。
今回も、一気に読みきりました。
楽しめる作品です。 チャグムの、皇子としての成長 守り人シリーズ、第4作。
「旅人」で終わるこの作では、
新ヨゴ皇国の皇子・チャグムが中心です。
皇子として、友好国であるサンガル王国の
新王即位式に出席するため、出かけるチャグム。
海の民の国、サンガル王国の自由さ、
王族の仲の良さに惹かれるチャグムですが
ひそかにたくらまれる反乱に巻き込まれ。。。
他国との外交が表にたち、
これまでとはすこし印象の違うお話でした。
チャグムの、王族としての成長と
バルサがチャグムに与えている影響の大きさが印象的でした。
このお話ではバルサは登場しないにもかかわらず
チャグムの中で大切に生きているバルサの言動が
バルサを感じさせます。
サンガル王国の女性の連携は、
萩原規子の「西の善き魔女」を思いだしました。
解説を読むと、お二人とも同じ作品に影響を受けているとか。
不思議なつながりも楽しかったです。 苦難のなかで、14歳のチャグムが人間として大きくなっていく姿に、ぐっときます 『精霊の守り人』の冒険から三年がたち、14歳になった「新ヨゴ皇国」の皇太子チャグム。彼と、星読(ほしよみ)博士のシュガが、招かれたサンガル王国で危難に遭遇する物語。「守り人(もりびと)」シリーズ全体のなかでは、第4巻。バルサではなく、チャグムが主人公の「旅人」シリーズとしては、第1巻となります。
チャグムの成長と、彼の人間味あふれるあたたかさにふれて、胸がじんとしましたね。今回、女用心棒のバルサは登場しませんでしたが、チャグムの行動の背後に、バルサとの身分を越えた心の絆を感じて、そんなところにもぐっときました。チャグムとシュガの間に、生死をともにするほどの強い信頼関係が結ばれたのも嬉しかったです。
チャグムのよき補佐役を務めているシュガ。『精霊の守り人』の初めの頃とは、印象が全く変わりましたね。チャグムに付き従い、彼の言動に触れるうちに、シュガも人間としてでかくなっていってるんだなあと、その変化が好ましく感じられました。
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[ 単行本 ]
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テンペスト 上 若夏の巻
・池上 永一
【角川グループパブリッシング】
発売日: 2008-08-28
参考価格: 1,680 円(税込)
販売価格: 1,680 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 759円〜
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・池上 永一
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カスタマー平均評価: 3.5
小説じゃなければ… 話の設定としては面白いのかもしれないが、文章が軽すぎる。
この本についての評価を低くつけている他の方々と同じように感じました。きっと漫画だったらすごく楽しめたのではないかと思います。
図書館で借りてよかった。 映画化された時の主人公を想像して ストーリー展開が面白くて、ページが次々に進んでいく
フィクションではあるんでしょうけど、あまりに面白くて、結局琉球史をちょっと調べてみようというところまで、引き込まれてしまいました。 つい映画化されたときのことを想像して、主人公は誰になるんだろうって。
一気に下巻へと突入していきました どっちつかずというか…。 面白いといえば、面白いのでしょう。
作者が考えうるエピソードの全てを注ぎ込んだような波乱万丈なストーリー。
でも胸焼けしてしまうくらいに男としても女としても最上の才能を持っている
にもかかわらず、びっくりするくらい主人公に魅力が無いのが致命的。
登場人物の誰もがあっさりと裏切ったり心変わりをしたりで誰にも感情移入できません。
ライトノベルのようなキャラクター小説としてはとても読めない。
コメディなんだかシリアスなんだかもよくわからず。
そのため読んでいて最初から最期まで「中途半端」な上滑りしている印象を拭えません。
ファンタジーだからと割り切って読みたくてもそもそも主人公真鶴が
男装したり女装したりすることであっさりと別人に変わるのに無理がありすぎる。
この大前提を受け入れられるか否かと文章のカタカナ語や陳腐な言い回し、
お約束過ぎる漫画的表現を受け流せるかどうかがこの物語を面白いと感じられるか
どうかの境目のような気がします。
唐草模様の風呂敷を背負って部屋を追い出されるって何それ?
このような表現の連発には正直うんざりしました。
面白い材料がこれだけ揃っているというのに…調理方法を間違って出来た料理のような作品。
それを新しい料理と呼ぶか失敗作と呼ぶかは人によってかなり分かれるでしょう。
私の口には合いませんでした。
堅苦しい歴史小説を期待している人は読まない方がいい 話題の本だし、とりあえず上巻だけ読んでみるか、と安易な気持ちで買ってみたら面白すぎてすぐに下巻が欲しくなってしまった、個人的にとても厄介な作品です。
普段ファンタジーものをよく読む人にはすんなり入っていけると思う。キャラクターもいちいち魅力的で、彼らの人生に引きずり込まれること間違いなしです。ヒロインはなんでもできるスーパーウーマンなんだけど、なぜか嫌みじゃなくて、応援したくなるから不思議だ。彼女の恋の行方も気になるところ。
逆に歴史小説が大好きで、「小説っていうものは難しい文章でなければならない」「ファンタジーなんて子供だましで大人の読むものではない」「ライトノベルは本じゃない」などと思っている人には不向きな作品です。レビューで低評価をしているのはそんな人なのでは。こればっかりは好みの問題なのでどっちがいいとか悪いとかじゃないですが。
確かに文章はまったく堅苦しくなく、歴史っぽい世界観なのにカタカナも平気で出てきますし、最初は違和感あったんですが、物語のスピード感がすごいのですぐに気にならなくなります。私は、沖縄には全然興味なかったんですが、これを読んで興味を持ちましたね。今まであまり見たことのない独特の世界観に惹きつけられる。
若い女性が主人公ということで、おじさん向けじゃないかな。(作者は男性ですが)女性が読んでも妙な男性くささを感じず、そこには少しも違和感がない。女性登場人物も男性登場人物も、ヒーローも悪役も、いずれも魅力的。映像化になっても面白いんじゃないかな。。
「文章が軽すぎ」「ご都合主義」「ファンタジーは低俗」とのたまう方は他の小説を読んでください。
男装の麗人、華やかな王宮絵巻、初々しく切ない恋模様、どうしても続きが気になるストーリー、軽妙な語り口……を求めている読者にはぴったりの小説です。 読み手で感想が分かれるのはうなずける。私は面白かった。 新聞広告で読んだ時は
大人向けの歴史物だと思ったのだか、
読んでみればこれは若い人向きかなと思った。
読む人によっては歴史を面白おかしく脚色していて
いい評価をしないかもしれないが、
物語としては面白い。
沖縄の歴史を殆ど知らないで読んだのだが、
とれもわかりやすく書いてある。
読み始めは、
登場人物の身分の琉球表記がなじまなかったが、
挟み込みの「主な登場人物」「用語一覧」を見ながら読み進めるうちに
慣れてくる。
昨年の大河ドラマ「篤姫」と同じ時代なので
登場人物に関連性があって
へぇ?と思うところもあった。
最後は死んで終わりかなと思ったら
陳腐といわれてしまうかもしれないがヒロインが幸せになるところで終わる。
肝心の息子は最後どうなるの?と思いはしたが、
読み終わりは悪くなかった。
沖縄が好きで何度も行っているが
この本を読んだ後は
地名や名所を違った目で見ることができそうだと思った。
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[ 文庫 ]
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黒い家 (角川ホラー文庫)
・貴志 祐介
【角川書店】
発売日: 1998-12
参考価格: 700 円(税込)
販売価格: 700 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・貴志 祐介
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カスタマー平均評価: 4.5
怖い 運の悪いことに私がこの本を手に取ったのは和歌山毒カレー事件の後でした。
そのため登場する人物の容姿に「あの二人」がチラついてしまって想像力をそれ以上膨らますことはできませんでしたが・・・・。
保険金殺人自体はこれまでに何度も起きていますし、小説の題材としては珍しくもなかろうと思いますが、実際の事件を(容疑者の人格まで)予言してしまったという点でこの作品はちょっと普通ではないですね。
これってホラーなの?と疑問を呈する人もいるかと思いますが、ミステリー、サイコサスペンス等さまざまな要素をハイレベルで融合していて簡単に1ジャンルで括れなくなったからそう感じるわけで、中身のエグさは間違いなくホラーですね。 ラストの後味の悪ーいオチなんかしっかりホラーの王道行ってると思います。
ドブ猫の悪夢 保険会社について書かれているのだが、わかりやすく妙にリアルである本の表紙も内容に合っておりどこか冷たい不気味さを感じさせる最後まで恐怖が伝わってくるそしてラストの続く日常はドブエボリューションであるホラー小説としては良い終わり方だと思います イワワ軍曹・これは深夜に読むべきだ宇宙人のぶ・トイレに行けなくなったのは、バイオハザード以来だよ ラスト1/3は寝る間を惜しんで読みました 怖い本を読みたくて評価のいいこちらを購入してみました。
保険金について全くの無知の私でも、簡潔で丁寧な説明がされているので話についていけなくなることもなく
どっぷりと本の中の世界に浸かることができました。
私は登場人物が多いとすぐ、どれがどの人か分からなくなってしまうんですが
筆者の書き方が上手いんでしょうね、人物が混乱してしまうことも無かったです。
怖いのを期待していたのですが、全ページの2/3程迄読んだ時点では
「本当に怖いのか、これ?」という感じでした。
ただ、犯人が分かってからの展開?最後までは本当に怖かったです。。
最後の方で明かされる黒い家の秘密辺りでは、思わず眉をしかめてしまいました。
怖いところを読んでいるときの時間帯が朝ではあったけど、家族が全員仕事に出掛けていて自分一人だったので
部屋の外の小さな物音などに一々ビクビクしながら読み終わりました。笑
記憶に残る、すごい作品 これは、記憶に残り続け、忘れられない作品となった。
この人の作品として「天使の囀り」も、非常に良くできた作品だ。
この作者は天才的だし、努力家でもある。非常に良く調べている。
これらの作品から多くの言葉を学び、人間を学んだ。そして、ますます人間が怖くなった。
人間の持つ恐ろしさを上手に表現したこの作者は、私の一生の思い出の一つになる。
ホラー小説において、これ以上の緻密な作品は、なかなかお目にかかれない。
人に紹介しても、中古本屋に売りに出そうとは思わない良品である。 本気で怖かった これを読んだのは数年前ですが、今だにこれを超える怖さの本に出会っていません。
マジで怖い!
最初の数十ページは正直面白くなく、ハズレかな、と思いながら読み進めていましたが、
そんな普通のサラリーマンの日常もただの前振り。後半はもう怒涛のようです。
怖いものっておばけでもなんでもなく、人間だ、というのを現した本です。
本読んでるだけなのに、殺人鬼に追いかけられる恐怖がありありと・・・。
家で一人で読んでいて、「ひ??・・・」とか言いながら頭からふとんをかぶって
殺人鬼に追いかけられる気分が味わいたい方はぜひどうぞ。
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[ 単行本(ソフトカバー) ]
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1/25(イチガツニジュウゴニチ) (ダ・ヴィンチブックス)
・多部未華子/恩田陸
【メディアファクトリー】
発売日: 2009-01-21
参考価格: 2,100 円(税込)
販売価格: 2,100 円(税込)
Amazonポイント: 21 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,699円〜
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・多部未華子/恩田陸
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カスタマー平均評価: 5
こんなに美しかったのか、多部未華子! ぱっと見、ごく普通の女の子。特別美人、とも思わなかった。
でも、ドラマで見る演技がとてもチャーミングで、彼女には注目していました。
露出、多くない。甘えた顔、しない。
だけどただ立っているだけで、レンズを見つめているだけで、ドキッとしてしまいました。
強く、だけどいつ壊れてしまうか心配になるほどまっすぐに清らか。
媚びることを知らない、自然体で素朴な魅力がぎっしり詰め込まれています。
そんな多部未華子が、私は大好きです!
朝ドラ初の写真集「つばさ」も引き続き素晴らしかったですよ。
2冊セットで、オススメです! 前よりもっと、多部ちゃんが好きになりました。 恩田さんのファンなので、書き下ろし小説があるというので、
注目がさらに大だった今回のフォトブック。
もうめちゃくちゃかわいかったです。
小説を読んでいると意識しなくても自然と
その女の子のイメージが多部ちゃんになってて、
さすが恩田さん!というかんじなのですが、
そこから抜け出したかのようなあとに続く多部ちゃんの写真の数々。
寝起きっぽい写真とか、もう、どうしようって感じです。
凛とした雰囲気+ちょっとした幼さ、というのが、
多部ちゃんの魅力かなーとおもうのですが、
そのギャップの混在する瞬間をかなりうまく切り取ったものが
満載された1冊です。
あ。バレエをしてる多部ちゃんもすきだなー。
あと、自分へのお手紙みたいなのがあって、それもよかった。
かわいい 多部未華子さん待望のフォトブックです。写真集ですがさすがに水着はありませんしページ数もさほど多くありませんが、キャミソールなど普段見れないカットなどもあり満足でした。素の表情がグッドです! 多部ちゃん! まるで、ひとつの映画をみたような濃密な本でした。
フォトブックなので、もちろん8?9割は写真なのですが、ただの写真集ではありませんでした。
『夜のピクニック』恩田陸さんが多部ちゃんをイメージして書き下ろしたという小説、ロングめのインタビュー、多部ちゃん自身が書いた手紙風エッセイ、そして多部ちゃんらしい写真の数々……そのひとつひとつすべてが、衝撃的というか(という言葉が適当なのかどうなのか自信ありませんが)。いまこの瞬間にしかいない多部ちゃんがものすごく鮮明に焼き付けられていて、そして、次の瞬間には多部ちゃんが「今」を脱ぎ捨ててゆく予感さえも感じられて、かわいい、とか、いい、とか、一言ではまとめられない。いとおしいような、せつないような、いろんな感情にさせられる本でした。
いや、もちろん、多部ちゃんは、とってもかわいいし、ちょっとドッキリさせられる写真もあって、ふつうの写真集としての満足度も十分高いです。
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[ 文庫 ]
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放課後 (講談社文庫)
・東野 圭吾
【講談社】
発売日: 1988-07
参考価格: 600 円(税込)
販売価格: 600 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・東野 圭吾
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カスタマー平均評価: 3.5
それぞれの放課後とは 乱歩賞受賞の東野圭吾デビュー作。推理小説として斬新なトリックとしっかりした構成を備え
てるにも関わらず、愛好者が読むとどこか場違い的に感じてしまう作品ですね。何といっても
舞台の女子高で繰り広げられる情熱と冷静の間のような感覚が一種凄まじい。青春と銘打って
あるが、瑞々しさを期待すると・・・
いかにもな演出と奇抜な密室仕掛け、強力なミスディレクションと読み応えはあるが、評価の
分かれ目としては、どうしても平衡を欠く動機や変にストイックな少女像に共感できない人が
多いからだろう。だが、考えようによっては東野独自の読み手に問いかけるようでいて突き放
す独自の皮肉が一作目にして存在しているかの様にも受け取れる。
結局の所、誰も幸せになれないような描写・魅せ方には、ある種逆説的に然るべき立ち位置に
いて然るべき事をやれと云う痛烈なメッセージも感じられ、わざと安直・軽薄にみせることに
よって普遍的な時間軸での価値をこえてダイレクトにその時分・テーマとゆう空間軸に価値を
見出していると思う。まあそれ故にこの作品またはこの作者の評価は極端に二極化すると思う
のですが。まあ、あんまり深く考えると、それこそ終わらない放課に... 「すべてはこの1冊からはじまった!」。この名キャッチコピーが、全てを物語っている 私は、「パラレルワールド・ラブストーリー」を皮切りに、数冊の作品をピックアップして読んだ時点で、すっかり東野圭吾にハマってしまった。以後、彼の著作の足跡をたどるように、デビュー作のこの「放課後」から著作順に読み進めていったのだが、結局、最後まで気持が離れることもなく、彼の全作品を読み終えてしまった。
東野圭吾の最大の魅力は、その筆致が簡潔明瞭で、非常に読み易いということだろう。他の作家と同じ読書時間しか割かなくても、彼の作品はスラスラと読み進められ、ページ数がどんどん進んでくれるので、読む方としては、ストレスが溜まらず、本当にありがたい。また、「簡潔明瞭で読み易い」ということは、まかり間違えば、「中身がない」ということにもなりかねないのだが、この人のシリアスな作品では、簡潔明瞭な筆致であるにもかかわらず、しっかりと人間が描かれているのだ。「簡潔明瞭にして、高い筆力」。これが、彼の本当に凄いところだと思う。
さて、私は、そんな彼の作品群を読み進める中で、色々な意味で印象に残った作品が幾つかあるのだが、全作品の読了を契機に、改めてこれらの作品を読み直し、少しずつ、レビューにしたためていきたいと思っている。
作家によっては、デビュー作とその後の作品との間には、同じ作家の作品とは思えないほどの落差を感じることもあるのだが、この人の場合には、このデビュー作にして、すでにその原型が完成していると感じる。多少の生硬さも感じないではないが、淀みなく、流麗に流れる筆致は、東野圭吾そのものであり、一見、単純そうに見せながら、結構、凝ったトリックを施し、ラストに意外な結末を用意している点や、女子高生のデリケートな女心もそれなりに描かれている点にも、東野圭吾らしさが出ている。「すべてはこの1冊からはじまった!」。この本の帯に付された名キャッチコピーが、この本の全てを物語っていると思う。
驚きの動機と切ない結末 本作品は女子高を舞台にした、東野圭吾のデビュー作である。
近年の作品にどっぷりはまっていると、初期の作品を読むと「イマイチ」な感じがするかと思っていたが、そんなことは全くなかった。
密室殺人の、トリックは、犯人の動機は何なのか?
進むにつれ徐々に狭まってくる犯人像。
驚きの犯人と悲しくも切ない動機。
そして、結末は誰もが予想しない展開になる。
読んでいるときは、「犯人予想」に集中、結末に「驚き」「悔しさ」、読後は「爽やかさ」「考える」、これらは東野作品に共通していることだと思う。
これは初期から踏襲されたものなのだと本書をよんでわかった。
最近の東野作品を読んで好きになった人にはぜひ読んでほしい。
きっと、初期の作品を読みたくなるはずだ。 やや登場人物が多過ぎるような…。 本作は、著者の江戸川乱歩賞受賞作であり、
女子高を舞台にした連続殺人事件の解明をテーマとする推理小説です。
著者と属性のかぶる、数学教師にしてアーチェリー部顧問の前島。
クールな彼の周りの女子高生や同僚教師たちは個性的である。
そんな中、第1の殺人が起こり…。
本作は、部活や体育祭の描写に懐かしさを覚えさせますが、
気になるのは、登場人物の多さと、真相の複雑さ。
前者は、真犯人をカモフラージュするのに役立っていますが、
エピソードが拡散し、やや作品を散漫にしている印象があります。
後者については、余りに精緻に組み立てられており、
現実にそんなにうまくいくものなのかという印象を受けました。
とはいえ、20代半ばで書かれたという事実に、
ただただ驚嘆するばかりです。十分な面白さを備えた作品です。
本格推理小説の時代の素晴らしい異端作品なんだぞ! ガリレオや容疑者を読んでから・・・という人が今更こんな古い小説を読んで楽しいなど思うわけもないではないか!
この作品が書かれた時代は、まだまだ現在のような「ミステリー」とは違って、
いわゆる「推理小説」全盛期だった。
殺人トリックの技量と意外性を競い合っていた頃なのである。
その中でこの作品は、本当に驚きであった。
今では意外性もないストーリーかもしれないが、
当時はものすごい衝撃だったのだ。
そして、この数年後から、現在に通じる社会派ミステリーが続々と登場することを思うと、
東野圭吾のこの作品抜きにミステリーは語れない思いである。
この気持ちを分かってくれる乱歩賞ファンはいないのか!
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[ 単行本 ]
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テンペスト 下 花風の巻
・池上 永一
【角川グループパブリッシング】
発売日: 2008-08-28
参考価格: 1,680 円(税込)
販売価格: 1,680 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 839円〜
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・池上 永一
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カスタマー平均評価: 4
琉球の風になれ 話題になっていたので読んで見ました。
ストーリーは、琉球王朝末期の沖縄を舞台に、類まれな美貌と才能を持つ女性が性別を偽り、官僚となって活躍するも、ある事件が元で失脚。宮廷を追放されるも、今度は王の側室として舞い戻る・・。という波乱万丈のストーリー。
こう書くと重厚な歴史物語を思い浮かべるかもしれませんが、中身はいたってライトなノリで、エンターテイメント性にあふれた小説です。
琉球という独特の文化を持つ舞台設定、ジェットコースターのようなストーリー、エキセントリックな登場人物など、楽しんで読むことができました。
ただ、長い。そして、多い。
上下巻に詰め込めるだけ詰め込まれた情報量。そして、キャラクター。
これにはちょっとおなかがいっぱいになってしまいました。
また、個性豊かな脇役に主人公が埋もれてしまった印象も受けました。
もう少しコンパクトに、主人公を際立たせて欲しかったような気もします。
連載ものだからしかたないのかもしれませんが・・・。
全体的に辛口になりましたが、おもしろい小説であることは確か。
ただ、上に書いたように非常に長く、情報量が多く、アクの強い小説であるので、自分に合うかどうか、上巻だけ買って試してみるのが賢い選択かもしれません。
沖縄のチャングム、男装の令嬢版 まじめにじっくり読むには文体に違和感があり、一人一人のキャラクターはあまりにもいかにもという感じで造形されていて、奥の深い感じはやはりしない。大きなストーリーラインは韓国歴史ドラマのチャングムと(意図的とも思えるくらい)そっくりなのだが、あちらが安定した時代背景なのに対し、こちらは王朝の滅亡直前を背景にしているのに、こんなに同じで良いのか、違和感を感じる。
特に問題を感じるのは、主人公が生まれたときからずっと持っているはずの超常現象的な力がまるで用いられず、そのために引かれたと思われる伏線がすべて無駄になってしまっていること。また古典的教養が重んじられる科挙の時代から、欧米列強の影響力のもと科学が力を振るうようになっても、官僚に求められるものがほとんど変わったように描かれていないのも気になる。
とはいえ、主人公はとても魅力的で、逆境に負けずどこまでも理想をつらぬこうとする様(これはチャングムとそっくりだが)はさわやかだし、女としての自分と性別分業がはっきりした男の世界に入り込んでしまった自分との葛藤には、多くの人は共感できるだろう。
特に中国からの宦官の性的誘惑の場面など、不自然に「伝奇ロマン」的な部分は読みづらく、読み飛ばしたくなるところも多々あったとはいえ、最後まで楽しく読めた。
華麗な琉球王国を垣間見て。 あんまり歴史物は得意ではないのですが、この本は読みやすかったです。
上下のボリュームはありますが、だれもがきっとその厚みはあまり感じず、
あっという間に読み終えてしまうと思います。
主要な登場人物の絵が付いている装丁の勝利だと思うのですが、
カラフルな琉球の様子が目に浮かび、
とても楽しく最後まで読めました。
上巻はまさにジェットコースター・ストーリーで、
「なんと!」という終わりでした。
そしてとても期待して開いた下巻でしたが、
一人二役の「真鶴」と「孫寧温」があまりにも簡単に変装するので、
少しリアリティにかけた感があり、残念でした。
そこがマイナス点で評価を☆4つとしました。
ただ、一人一人のキャラクター分けが素晴らしく、
登場人物がみなキラキラ輝いて見えました。
この「テンペスト」が、突出した作品であることは間違いないです。
ラストは美しく、胸に迫るものがありました。
この作品を一言で言うなら、「ポップな歴史小説」ですかね。
宝塚向きの題材かも!と思いました。
見事、大団円! 宦官として王宮に入った寧温の八面六臂の活躍を描いた上巻に対して、下巻はその表紙の色、紅型の赤の示す通り真鶴の運命を描いている。
圧巻なのは最終章である。琉球王国の滅亡は誰もが知るところだが、それを悲劇に終わらせないところがこの物語の優れた点である。
国の終わりとともに身を投げた登場人物たちは、まるで沖縄戦で自決した人たちの心を代弁し、魂までも浄化したような錯覚に陥る。
琉球の死は、日本にとってもウチナンチュにとっても意味ある死として現代までつながっていることを、陰にも陽にも訴えている。
実際の歴史をもとに突飛なフィクションを融合させた本書には読み終わってもなお、もっとこの世界に浸っていたいと思わせる中毒性がある。
間違いなく池上永一の代表作と言える。 人物・心情描写がすばらしい 主人公の友人・兄の愛憎が混じったまさにアンビバレントな感情
同じ側室でありながら何かと手をさしのべてくれる主人公の親友。
家柄・財産・美貌・教養・人柄すべてを持ち合わせているのに同じ女性として、読んでても全然腹がたたない。
そして、飛びぬけた知能と、美貌を持ち合わせた主人公。
ここまで完璧で純粋な人間いるわけないやんと思わせる余地のないほど描く筆力にはただただ感心するばかり。
形あるものはいつかは滅びるということと
長年の別離にも関わらず変わらないものもあったということ
見事に対比させたラストシーンは、普通によかったと思いました。
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