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[ 単行本 ]
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ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
・ヨースタイン ゴルデル
【日本放送出版協会】
発売日: 1995-06
参考価格: 2,548 円(税込)
販売価格: 2,548 円(税込)
Amazonポイント: 25 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・ヨースタイン ゴルデル ・Jostein Gaarder
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カスタマー平均評価: 4.5
哲学入門書 哲学という取っ付きにくい分野をわかりやすく、入りやすくした物語。
哲学者の思想を年代順に紹介しつつ進行する。
とても長いが対話がメインなのですらすら読める。
しかし中盤で大きな謎(宛名の違う葉書)が解けてしまうので、そこからはちょっと辛い。
この本を読んだのは大学生の時だったのですが、
中学生くらいの時に読みたかったです。
妖精とともに、北欧という自然から生まれた文学です! こんなに面白く読めた哲学書は、他になかったように思います。14歳のソフィーは哲学の楽しみがわかってくると、日常の生活や学校の勉強がなんとなくつまらなくなってきました。彼女は哲学的な命題を考えることが生きる喜びそのものであり、自分が存在することのほんとうの意味なのだと感じるようになってきます。それこそが哲学することの価値であり、単なる知識の集積ではなく、自分が存在し思考することこそがほんとうに生きることなのだと。
私たちの人生の多くは、大衆の考えや行動、世間の常識、親の期待や社会の教育によって身につけた価値観という超自我によって支配されています。自分の頭で考え、選択し、生きるということは、そんなに簡単なことではないと、ソフィーは知ることになるのですが、そのソフィーは智恵がつくにつれて、しだいに人間の少女から妖精になっていったのではないかと、私には感じられました。個人的にはそうあってほしいという願いもあり、北欧らしい夢のある文学作品として楽しむことができました。
“精神文化”の違いをイメージさせる参考書 『自分探し』という言葉に関して、日本ではどちらかといえば否定的に扱われる雰囲気が強い。曰く“ヒマなんじゃない?”“それって何の役にたつの?”。それはこの国の精神風土が“お上と下々”的な構造、或いは“役に立つ=正しい”といった偏見に基づく誤解、を未だに有しているからかもしれない。殊に戦後からつい最近までこの国の経済構造は人間を“機械化”することによって猛烈なスピードで走り続けてきた。けれどこれらの思考様式が必ずしも合理的な根拠に基づいているのかと問われたなら、万人を納得させる答えを持つ説明ができるだろうか。少なくとも今の現実に目を凝らすならば、これらの前提はもろくも崩れ去るのがオチである。タイトルの“ソフィー”が“Philosophy”の語尾の部分。“知”であることは既に明らかである。そしてその対象が“自分という存在”の意味であることも明白である。そうした部分に目を向けることができたのは著者が生活するヨーロッパ世界が単なる地域としてではなく精神風土を含めた歴史的存在だからであり、人間は個として存在し扱われる。今の日本のような“使い捨て”は存在しない。そこと日本の間には絶望にも近い違いがあることも否定できない。哲学書或いはその入門書としては少々物足りない部分もあるが、少なくとも“認識”“意味”といった日常ではあまり縁のない言葉に接し、自分の目で社会を見直すきっかけにすることも良いのではなかろうか。 テーマは哲学であって、哲学でないような。 前半部分の西洋哲学の歴史が延々と語られる部分は、正直退屈です。
(私も一度はこの部分で読むのを止めてしまいました。)
そこを乗り越え、後半のストーリ展開にのめり込めば込むほど、クライマックスが驚きに満ちて現れるでしょう。
そして、冒頭でソフィーにかけられた問いが、読者自身に問いかけられます。
「あなたは誰?」と。
前半で語られた哲学の歴史は、そのための舞台装置に過ぎないように思います。
それ故、哲学がテーマではないと言えますが、「自分とは何か」という問いは、哲学の根源でしょう。 中学生も楽しく読める稀な哲学書です。 ソフィーが西洋哲学の世界を旅する。14歳の主人公がソクラテス、プラトン、アルキメデス、デカルトと西洋哲学を創り上げた巨匠たちの考え方をしり、「自分とは何か?」など哲学の究極の問いにも挑もうとする。中学生も楽しく読める稀な哲学書です。
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[ 文庫 ]
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片想い (文春文庫)
・東野 圭吾
【文藝春秋】
発売日: 2004-08-04
参考価格: 860 円(税込)
販売価格: 860 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 31円〜
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・東野 圭吾
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カスタマー平均評価: 4
東野作品としてはコクがないかも 作者は学生時代の友情の行方を書きたかったのだろう。それをあぶり出すために、時間経過(各々が社会に出て家庭を持つ)と性の問題を扱ったのだと思う。こういう話の組み立て方は上手い。
ただ、性同一性障害の記述は頭でっかちな印象があり、ミステリーとして提示される謎は魅力が薄い。
もちろん、そういった問題に挑戦しながら人間の暖かい面を書こうというスタイルには好感が持てるが、今まで読んだ東野作品に比べると、ドラマ的にもミステリー的にもコクがないような気がした。 性同一性障害について考えさせられました。 東野氏の作品としては面白さは佳作ですが、社会的な問題を取り上げた作品としては傑作の一つだと思います。
内容としては少し単調な所もありますが、ジェンダー問題を深く考えるきっかけとなる良い作品です。その分、エンターテイメントの要素が低く、社会性の高い作品と言えるかもしれません。
相変わらず人物の心理描写はうまく、共感する場面や考えさせられる一言が何箇所もありました。
ただ、東野氏の作品が初めての人にはおすすめできません。
「流星の絆」や「容疑者Xの献身」などが入りやすいかもしれません。 予想を裏切られるが、壮大な片想い…。 本作は、かつて大学時代に同じアメフト部に所属した男女が、
30代となり、ある事件を契機に運命的に交錯し、
苦楽を共にした過去に思いを馳せるとともに、再出発を図るという印象的な作品です。
ちなみに、現在ではポピュラーとなりつつある、
ある悩ましい社会問題が巧みに織り込まれています。
本作の事件の背景には、その社会問題を巡る当事者の葛藤があるのですが、
喧々諤々の議論を経ながらも、立法的な措置が取られつつあります。
すなわち、時代が本作に追いついてきているともいえます。
なお、タイトルについて言及すると、
いわゆる片想いに、精神と肉体とが「両想い」になれないという、
本作独自の「片想い」の定義が加わることにより、
例えば、中尾と日浦の絆や別離がより切なさや感動を伴って伝わってきます。 代表作とは言えないだろうけど 私の場合、「秘密」から東野作品にのめり込んだのですが、この作品のテーマである「性同一性障害」が、自分にとってはまったく身近なものではなく、そういった意味では、妻子ある私にとって「秘密」と比較して感情移入は難しかったですが、最後までミステリー要素満載で、一気に読み通すことができました。決して代表作とはいえないでしょうが、読んで損はそない作品かと思います。 結局ジェンダーから抜け出せない 性同一障害が今ほど取りあげられていない頃に書かれたそうですが、不自然な記述はなく
(ちなみに一般的な、自閉症を取り扱ったものには間違っていたことが書かれていることが多いのが現状です)
人間の男女の性についての描写、メビウスの輪、グラデーションなど秀逸。
主人公の妻の描写に、作者がどこかで抱いていると思われる、「女は感情的な生き物だ」というステレオタイプな考えが伺えるのは、皮肉というべきか。
夫婦喧嘩のときはイライラしました。
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[ 単行本 ]
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イグナシス覚醒―レジェンド・オブ・レギオス〈2〉 (Style‐F)
・雨木 シュウスケ
【富士見書房】
発売日: 2007-12
参考価格: 1,260 円(税込)
販売価格: 1,260 円(税込)
Amazonポイント: 12 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 700円〜
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・雨木 シュウスケ
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カスタマー平均評価: 5
リグザリオ洗礼よりも・・・ 私、個人の意見ですけどリグザリオ洗礼よりもスラスラと読めました。
あと、ディックファンは必見ですよ!最初の方に微妙に登場します!
聖戦のレギオスしか読んでない人はレジェンドオブレギオスも読んでおいた方が良いと思います。
端末機が何なのかとかも分かりますよ。
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[ 文庫 ]
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すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)
・森 博嗣
【講談社】
発売日: 1998-12
参考価格: 770 円(税込)
販売価格: 770 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・森 博嗣
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カスタマー平均評価: 4
すべてがFになる、というキーワード 森博嗣のすべてがFになる。面白かった。
個人的に一番面白いと思ったのは、
すべてがFになる、というキーワード。
この小説の核心にふれる表現でありながら、
読まない限りこのキーワードからは絶対にその根幹には辿り着けない。
その危うさと読んだ後に来る納得感で、
面白さがジワリと湧いてくる。
ただ、二人の主人公のキャラクターが曖昧であったり、
展開のスピード感が足りなかったりして、
物語にのめり込めなかった感はある。
推理物として読もうとすると、工学的な知識が必要になるから若干読みづらいかもしれない。
心理的な描写や展開も少ないので、感情移入のしづらさもある。
しかしながら、逆にその工学的な知識と論理性が、
この小説に比類ない味わいと奥行きを与えていることは間違いない。
この手の小説が書ける人というのはかなり限られてくると思う。
理系の人とか東野圭吾が好きな人とかは、
結構好きになれる作品だと思う。 常識から離れる快感 これだけの(境界)条件から、科学的に再現可能な他の回答が考えられますか?
物語の終盤での主人公の一言。これがこの小説の特徴を一言で捉えている。
瀬名秀明が巻末で解説している通り、通常ミステリー小説では感情的な動機で殺人が起こる。読者は殺人の動機を探して読み進めるのだが、逆に起こったこと全ての原因をそれで説明しようとして思考停止になってしまう。
この小説では殺人に感情的な動機が存在しない。だからいつもと同じ調子で読んでいた私は途中もどかしい気持ちになったが、謎が解けた時、常識、つまり自分の経験から離れる快感があった。
森博嗣の作品はこれが初めてだったので、ミステリー小説の常識の枠で読んでしまったが、頭を柔らかくしてトリックに挑みたい。 異常な動機を常人が理解しようと思うのが間違い 孤島にある外界と隔絶した研究所の中で、隔離されて生活をしている天才博士、真賀田四季。彼女は14歳の時に両親を殺害した罪で裁判にかけられ、心神喪失で無罪を勝ち取って以後、ずっとそこで生活している。地方の名士の家系である西之園萌絵は彼女に興味を持ち、自分が通う大学の助教授であり、父の教え子でもある犀川創平や研究室のメンバーとともに、この研究所がある島でキャンプを行うことにする。その夜、彼女に会うために研究所を訪ねると、そこで見たのは、ウェディング・ドレスをまといながらも、両手両足を切断され、ロボットで移動する彼女の死体だった…。いわゆる密室ものに分類される作品です。
ボクはあまりミステリーを読む方ではないので間違っているかもしれませんが、多くのミステリーでは、読者は犯人に対して共感なり、反感なりを抱きます。探偵役はそこに至るために、異常な状況を理解できる状況に置き換えます。この際に、動機の解明ということが行われるわけです。
しかし、この作品では、このような動機の解明にはあまり重点が置かれません。そもそも、探偵役が状況を異常と思っているかどうかも疑問です。事実として死体があって、それを実現するにはどうすればよいかを、日常の論理で理解してしまう訳です。まあ、必ずしも読者がそれを理解できるとは限りませんが、それは天才の所業なので凡人に理解できないのも仕方ない。
では、登場人物たちが魅力的ではないかというと、決してそんなことはない。それぞれの思考方法や背景などが随所に埋め込まれ、それが彼らを彼らたるものにしています。個人的には事件と直接関係ないこれらの会話などの方が面白いとも思う。すでに世間的に十分評価されている作品なので、こういったことは十分語りつくされていると思いますが…。 境界条件・・・ 私は理系ではないが、たまたま「境界条件」という言葉を知っていた。
この本だったか、シリーズの他の本だったが忘れたが、
小説の中で、「境界条件」という言葉を見て、新鮮だった。
何かを考えるときに、どこまでを所与と考え、どこからが操作可能なのかを
考えることができない知人にこの本を読ませて、あとからちょっとした解説を
したら、前よりも考え方がスマートに変わった。
読んで楽しく、考え方に関する軽い入門書にもなってよかった。
期待はずれ ミステリー小説でこんなに面白くないデビュー作は初めて。面白かったら二作目を買おうと思っていたけど、もうこの人の本はこれで最後にしよう。
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[ 文庫 ]
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分身 (集英社文庫)
・東野 圭吾
【集英社】
発売日: 1996-09
参考価格: 730 円(税込)
販売価格: 730 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 199円〜
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・東野 圭吾
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カスタマー平均評価: 4
クローン技術の是非と個の人間の在りよう 違う環境で育った二人の女性がクローン技術によって造られ、そして互いにあるきっかけをもとに自分たちの生い立ちを追うことになる。
クローン技術についての応用や道徳感についても軽妙に織り交ぜられており、近い将来の人類のあり方を考えさせられた。
同時に、人とは?とか、アイデンティティとは?など個人の生き様、表し方にも考えることがあった。
本来は星5つにしたいところだったが、この二人の女性が出会う過程があまりにも出来すぎていて、というかショートカットされている感があったところが星1つ評価を落とした。
作者の狙いがその過程のプロットに重きを置かれていないと考えれば、伝えたかったことが他にあったのかどうか知りたいところである。他の方のレビューも参考にさせてもらっています。 生命倫理 本作は、1993年に単行本として出版されたものであり、
二人の若い女性の数奇な運命を、最先端の科学技術の話題を絡めつつ、
サスペンスも織り交ぜながら描くものです。
また、ラストシーンの美しさにも注目していただきたいところです。
本作には、上述したように、常に注目を集めている、
生命倫理を巡る話題が巧みに絡められています。
生命倫理といえば、知識人が抽象的にその是非を論じていますが、
本作では、登場人物の実感という形で、
科学技術の行き過ぎによって生ずる事態のグロテスクさを表現しており、
秀逸であると思いました。
鞠子と双葉の心理の移り変わりに引き込まれました 鞠子と双葉、それぞれ違う環境で育った二人が、それぞれ身の回りである事件が起き、それをきっかけに自らの生い立ちに疑問を持ちそれぞれが独自に調べ始めます。
「サスペンス」となっていますが、謎解きという点に関してはそれほどおもしろさがあるわけでもありません。
それよりも真相を知っていく過程での二人のそれぞれの心理の移り変わりに引き込まれ、最後まで読み進めました。
特に「双葉の章 その十一」は、あまりに悲しすぎて強烈に胸が締め付けられました。
そして「鞠子の章 その十四」も。
そのためラストは、そんな暗闇にさした1筋の光とも感じました。 2人の女の子 ガリレオシリーズのようなおもしろさはなかったのですが、2人の女子大生がとてもよかったです。サスペンスと言うよりも、東野作品は心理状況の変化がとてもおもしろいです。2人の全く違う女の子。自分たちの出会った運命をうけつつ、未来はどうなるのか?揺れ動く心がとてもよく描かれていました。 悪くはないが 話としてはそれなりに楽しめるものの、ミステリーとしてはいまいちです。
特に意外な展開も無く、ドキドキしながら読むということも出来ませんでした。
ネタが10年以上も前の先端医療なので、今では色あせてしまったのかも知れません。
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[ 文庫 ]
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魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)
・京極 夏彦
【講談社】
発売日: 1999-09
参考価格: 1,090 円(税込)
販売価格: 1,090 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 440円〜
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・京極 夏彦
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カスタマー平均評価: 4.5
長いのに、読むのが苦痛になりません。「はこ」の中みたいなあ…。 バラバラ殺人、美少女殺人未遂事件、少女誘拐事件が絡まりあって
解きほぐすのは不可能と思われる謎を形成しています。
キーワードは本書のタイトルにもなっている「魍魎」と「はこ」です。
1点目。拡散していくように思える真相を、謎解きパートでしっかり明かしてくれる場面。
前作「姑獲鳥の夏」でもそうでしたが、ここは心地よい。(ただし話は悲しい。)
それまでは京極堂以外の登場人物と同化して、読者もいまいち真相にたどり着けず
いらいらしながら読むことになります。
しかし、この「いらだち」は決して不快なものではありません。
脳みそをフル回転させる心地よい疲労感です。
そうして、真相の6割くらいまでは頑張れば到達できるのです。
しかし、そのさらに奥深くにあることを京極堂に見事に指摘されて悔しくもあり、
すっきりもしました。この快感、開放感は素晴らしい。
2点目。ネタバレなしで、話の内容について感想を書きますと、
人は「何か」にとらわれるととてつもない行動を平気でしてしまうのかなあと思いました。
人をとらえるものは、愛情だったり、妄執だったりします。
それが謎解きの部分でどんどん明かされます。
(ただし、京極堂は明かす前に本人に言ってよいのか確認をとってから話すのです。
ここにぶっきらぼうな彼のやさしさが見えます。じつはヒューマニスト?)
3点目。バラバラ殺人事件の謎解きの時、気が遠くなりました。
切る側の「ある思い込み」のため、切られる側は「最上級の苦痛」を与えられます。
さらりと書いてある(うっかりすると見逃すかも)くせに、これはすごい場面でした。
現場を想像すると痛さが伝わり、恐ろしいのです。被害者からしたら絶望的な恐怖です。
下手な悲鳴などいらない。京極堂の冷徹な語りさえあればいい。
想像力豊かな方は気をつけてください。失神するかもしれません。
スプラッターやゾンビ大好きの私も、ここの恐怖には心底震えました。
文学ってすごい!(なんかあほなまとめ方になってしまいましたが。)
今回も夢中で読ませてくれました。文句なしの☆5です。 京極夏彦の最高傑作という名にはじない作品 京極夏彦2作めにして最高傑作として名高い本作。作中にはさまれる幻想的な「匣の中の娘」女子高生の自殺未遂事件、連続バラバラ殺人事件、戦時中の不気味な研究を続ける医学研究所、匣をあがめる新興宗教など禍々しいが、一見無関係に見える事件が一気に収束してゆくラストが圧巻です.戦後のこの時期に免疫学や遺伝子操作などの言葉自体もありませんし、そういう意味で時代背景と京極堂の説明はやや齟齬がありますが、科学と伝奇ものが絶妙に組み合わされた傑作であることはかわりありません。現代の医学水準で考えれば四肢のない状態で生きていくことも人工臓器、臓器移植などある程度可能な技術です。究極は体のサイボーグ化、脳移植や意識の電脳化などでしょうが、これが本当にヒトといえるのか、元の本人と同一のものなのか、考えさせられます.特に臓器移植に関しては我々はもう一度その是非について考える必要があるのではないでしょうか?猟奇的ミステリ小説の傑作、ぜひご一読されることをお勧めします. 伝奇ミステリー “ヤンデレ”多すぎ(笑)
すっきりしたとも後味が悪いとも云えない独特の読後感でした。
姑獲鳥の夏よりストーリーの構成は向上していると思います。
お勧めです!! 匣の中には綺麗な娘がぴつたり入つてゐた。 女子中学生が深夜の駅で線路に突き落とされ、重症を負う。
そばには、泣きじゃくる同級生がいた。
偶然とおりかかった刑事木場は、同級生の身柄の保護を頼まれ、
一連の事件に巻き込まれていく。
別の場所で起こったバラバラ殺人事件。
箱を持ったお払い師
奇妙な正方形の研究所
登場人物も事件の舞台も不思議な雰囲気をもち、
小説の中に時折挟み込まれる作中人物が書いたとされる小説が
不気味さに拍車をかけていきます。
物語の後に行くにつれ、
最初に投げかけられていた言葉や出来事が伏線だったのがわかり、
とても面白く読みました。
厚い本のうえ、登場人物も多数なのですが、混乱する事も無くすんなりと読めます。 ほぅ。 本作のみでも十分に楽しめますが、前作を読んだほうが、関係者のつながりがより深くわかって、お勧めです。
ここでもやはり飛ばし読みは厳禁です。話についていけなくなります。しかし、きちんと読んだ人には優しいです。
猟奇性の強い作品なので、バラバラなどに抵抗のある人にはお勧めできないかもしれないですが、物語としては秀逸で大変読み応えがある内容なので、興味のある人は是非♪
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[ 単行本(ソフトカバー) ]
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DOG & DOLL
・森博嗣
【エフエム東京】
発売日: 2009-03-13
参考価格: 1,600 円(税込)
販売価格: 1,600 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,098円〜
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・森博嗣
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カスタマー平均評価: 0
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[ 単行本 ]
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おそろし 三島屋変調百物語事始
・宮部 みゆき
【角川グループパブリッシング】
発売日: 2008-07-30
参考価格: 1,785 円(税込)
販売価格: 1,785 円(税込)
Amazonポイント: 17 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 649円〜
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・宮部 みゆき
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カスタマー平均評価: 3.5
おもしろいっ そして、こわいっっ!!
タイトルが『おそろし』ですが、ホントに怖かったです。
宮部さんの江戸ものはハズレなしですが、今回は長編なこともあり
少し深いお話です。
宮部さんの怖いは、文章の厚みから滲み出す感じがして・・・
おたかさんの話の当りを油断して寝る前に読んでいたら怖くて怖くて・・・
おちかさんまではいかなくても、こういう後悔とか不満とか天災みないな不幸とか
多かれ少なかれきっと誰にでもあることで、それをどうやって乗り越えて行くか、、、
みたいな事が描かれていて、最後は心が柔らかくなりました。
〆が物語風に終わっていたのが、かわいくて私は好きです。 泣けない… うーん。この構成だと、最終章では主人公と同調して癒しを体験したい。涙の一つも流したりして。
そういう枠組みの、小説だと思います。
しかし…うーん、泣けなかったですね。私、結構泣き体質で、つまらなくても、白けてても泣き要素入っていればそれだけで泣けるんですが。
個人的には、4話がどうしても作者の意図したような「どんな辛い目に遭った人でもいつかは笑える日が来る」という話として読めなかったのが最大の理由でした。「いや、これで片付けちゃダメだろうこの話」と思っちゃって、そればっかり最後まで気になってしまったので、全然癒しの流れに乗れなかったのです。
1話の方向性でずっと行ってくれたら嬉しかったのですが。
全然関係のないはずの話が、要素でだけつながっている、という形式は好きでした。
読売新聞でやっている続編がより良い形で進んでいってくれることに期待して、☆3つです。
本当にがっかり 宮部みゆきさん、大好きだったんですけど最近のものはあまりおもしろく感じられなくて、離れていました。機会があって久しぶりに手にとってみて「やっぱり・・・」と再びがっかり。
話運びは相変わらずお上手で、ぐいぐい読ませるのですが、ところどころで「え?この人がこんなこと言う?」とか、「その展開には必然性が感じられません!」という気持ちが湧いてきて話に没頭できなくなり、最後のオールスターで「ありえないだろ???!」と机をひっくりかえしたくなりました。
・登場人物の像が完成されていない
・話が単調(特に殺し方の類似)
・無理やり作者の望む方向に話を持っていき強引に終わらせている
無理にまとめたり解決したりしなくてもいい問題を、解決しようとして間違った答えを出した感が強いです。
杉浦日名子さんの百物語を例にあげてる方がいらっしゃいましたが、同感です。全て説明がつく物事ばかりでこの世が構成されているわけではありません。うらみつらみと関係なく不思議が存在し、理解できないしする必要も無いそれらを蛍光灯でてらして解剖してみたところで無粋なだけです。
宮部さんは昔、本作品では脇役におかれたお吉さん、宗介さんのような人を主役にして珠玉の小品を書かれていたんですけどね・・・救われがたい運命に落ち込んだ市井の人々。改めてかえりみられることのなく、自ら声をあげることもなく静かに世を去っていく人々を。
多分続編ではおちかと清太郎がいい仲になるんでしょうね???全然読みたいとは思いませんが。 確かに新しい形のくゎいだん ただ怖い話を並べるわけでもなく,百物語の「人が語る」という面白さを活かし,なおかつ一つ一つが主人公の心のしこりを解いていくという趣向は新鮮である。
第5話は大団円にしてあるが,映画だったら魂が抜けたおちかと心配する周辺の絵がだせるからもっと分かりやすかったろうに。
読売新聞で続編が連載中。 深いテーマを淡々と綴る「物語」 人は、人に語ることの無い物語を、人生の中で溜め込んでいく。
それは、澱のように人の中に沈殿し、発酵していく。
主人公の少女は、そんな澱を内包し、人生のまだ出だしの段階でその人生を表現する事を閉ざしてしまっている。
そんな中で、起きる様々な偶然。それはまるで、あやかしが彼女の人生をこじ開けようとからかっているような。
この本の評価が分かれるのは、この小説を物語として読むか、人生の示唆として読むかの違いなのだと思う。作者は多分、閉じてしまった人生が明かされることでの妙を表現しようとしたのだと思う。それが、静かに語られる事を良しとしない場合、この本の評価は下がるだろう。
「静か過ぎる」と。
が、静かに進行する物語の中のそこここで、叫びだしたいような「思い」はちりばめられている。是非、その思いを見つけて欲しい。
見過ごしてしまいそうな、静かな、けれども叫びだしたいような強い思いに、自分が生きている中で出会う周囲の人々も自分も、実は囚われているのではないかと思い至る事ができるきっかけをこの本は見せている。
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[ 単行本 ]
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赤い指
・東野 圭吾
【講談社】
発売日: 2006-07-25
参考価格: 1,575 円(税込)
販売価格: 1,575 円(税込)
Amazonポイント: 15 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 354円〜
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・東野 圭吾
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カスタマー平均評価: 4
読者によってかなり評価がかわる 介護、痴呆、引きこもりなど現代家庭の問題が盛りだくさんであり、もし登場人物と似たような立場の知り合いがいたらいやな気分になるだろう。私は真犯人に近い意識の人間が近くにおり、読んでいてブルーになった。
東野さん得意のヒューマンドラマであり、最後に救いがあるのは助かる。読んだ後、離れ住む親に電話をしたくなった。 親子のつながり ここに出てくる前原昭夫と妻:八重子、息子:直巳に対しては、いい感情は全く持てません。
誰もかれもが自分中心。わが身を守るべく、刑事に対してついた嘘には、本当に虫唾が走りました。
唯一の救いと言えば、警察に行く前に、真相があのような形で明らかにされたことです。
とはいえ、やってしまった嘘の内容が内容なだけに、壊れてしまったものがあまりに大きく、ハッピーエンドとは決して言えません。
しかし、「認知症の家族の介護」「少年犯罪」など、現代社会の問題点を見事に織り込んでおり、読んでいてわが身にも起こりうることと考えさせられましたので、評価は高めにしました。
もちろん、加賀恭一郎の洞察力の鋭さも健在。
前原一家のついている嘘は、ごく一部をすり替えただけであとはほぼ真実なため(そのごく一部が残酷なのですが)、普通の洞察力じゃ、その嘘は見抜けないと思うのですが、さすが加賀恭一郎。警視庁捜査一課のお偉いさんが一目置くだけあります。
そしてもう1つ、事件とは別にここでも加賀とその父とのエピソードが出てきます。
加賀と従兄弟関係にあたる警視庁捜査一課の松宮の登場もあり、少々イライラさせられる部分もありますが、全てが明らかになった時、なんだかんだ言っても親子のつながりを感じさせられます。
前原昭夫と直巳のような、間違った親子のつながり、昭夫とその母、政恵の、すれ違ってしまった親子のつながり、そして加賀の父と松宮のような、血のつながりはなくても存在する、親子以上のつながり、そして加賀とその父のような、一見わかりにくくても確実にある親子のつながりと、さまざまな「親子のつながり」を垣間見ることができた1冊でもありました。 赤い指の意味 この作品のいくつかのレビューに胸をえぐられるようなという
表現がされていますが、内容的には年配者のほうがより強く
感じられるかと思います。
実際、高齢者をもつ家族や被害者の立場からすればその思いは
より強いことでしょう。
それぞれの年代が抱えている現代社会の問題をあらゆる視点から
あぶり出しています。
赤い指が2回でてきますが、2回目の意味するものは重いです。
もやもやした思いの中で、加賀恭一郎の慧眼だけが冴えています。
最後は加賀の人柄も垣間見えて、納得できるラストでした。
ある年代に達したらまた読み返してみたい作品です。
納得いかない結末 今まで東野作品が好きで多数読んできましたが、この作品だけは、高齢者を世話する立場の人間として理解できないオチでした。東野さんはもしかして、お年寄りと暮らした経験がないのでしょうか。高齢者が100人いれば100人全員が認知症にだけはなりたくない、人に迷惑をかけたくない、と思っているはずです。好んで老いる人はいません。かつて浅田次郎氏の作品にも同じ話がありましたが、全体が架空でユーモアを含んでおり、それもアリかと思われました。今回東野さんの作品ではミステリーの核となる部分であり、どうしてもあり得ないと思ってしまいました。ミステリーと割り切って読めば良い作品ですが、人間ドラマとして見れば高齢者の現実にそぐわず、どこが『もう1つの愛』なのか苦しむ作品です。高齢者の家族でなくては見えない事もあるのです。 序盤は気が重くなる様な展開ですが・・・ ある家族の繋がりを表現した作品。
序盤は人間の悪いところばかりを表現した感じで気が重くなる様な展開ですが・・・・
実はこの作品、シリーズものでして、『加賀恭一郎シリーズ』です。
中盤以降はその凄腕刑事の加賀が残酷で卑劣な犯罪を犯す一家の真相を全て見抜いた上で仕掛ける、ある一つの問いかけ。必読ですね。
一気に読み切ってしまいました。そして相変わらず東野圭吾の作品はラストの1行で泣かされるんですよね。なんか切なくもあり、寂しくもなる内容でした。
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[ 単行本 ]
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ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
・伊藤 計劃
【早川書房】
発売日: 2008-12
参考価格: 1,680 円(税込)
販売価格: 1,680 円(税込)
Amazonポイント: 16 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,180円〜
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・伊藤 計劃
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カスタマー平均評価: 4
筆力に感心 虐殺器官、ハーモニーの二冊だけでの読者ですが、世界観の構築といい、ストーリーの展開といい、会話文の妙といい、実力のある作家でした。
次も次も楽しみにしていましたが残念です。
良い本ですのでご一読をお勧めします。
ディストピアの限界 環境管理型権力或いはフーコー的生権力が前面に押し出された高福祉近未来の絶望感を描いた作品。古典的ユートピア(≒ディストピア)がビッグブラザー的規律訓練を描いていたのに対して、世相を反映してか高福祉型社会の究極の息苦しさというものをひとつのテーマにしている。
その点に関して問うならば、生まれるべくして生まれた作品ともいえるが「何を今更」という感もなくはない。
ただし相変わらずのSFガジェットの描写の面白さや著者本人が闘病中という背景情報を頭の片隅に置いておくと楽しめる。
ただし、途中からプロットがまんま「パトレイバー2」になるのはいかがなものかと思った。 「虐殺器官」の続編 著者の前作「虐殺器官」の続編(少なくとも世界観的に矛盾しない)。
ストーリー展開は,新世紀エヴァンゲリオンやアップルシードを思い起こさせる。 圧倒的なラストに驚愕!!!!! デビュー作『虐殺器官』で
かの「PLAYBOYミステリー大賞」を受賞した
奇才・伊藤計劃さんの最新刊『ハーモニー』。
脳に埋め込まれたチップによって
完全な「平穏、安全、平和」が実現した世界を舞台に
それに抗う者と守る者
かつて、ともに死のうとした二人の女性の運命が交錯し
世界に真の「ハーモニー(調和)」をもたらす―
前作をはるかに凌駕する独創的な舞台設定と
スピーディーなストーリー展開
特にラスト数ページはまさに圧巻!!!!
物語上級者にこそ手に取っていただきたい作品です☆☆
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