前巻辺りまでには余談や後日談などやや冗長な表現が続く事もあり、この巻も決してそれらが少ない訳ではないが、多くは薩長同盟の性格を知る上で必要不可欠なものであったり、時に歴史の核心を突いた見解であったりして、話が途切れる様な歯切れの悪さは無い。又、この薩長同盟の記述は、現存する文書を現代語に書き換えた文章を利用している箇所が多く、竜馬の手による文も所々に見受けられて面白い。その点、やや薩長連合に関する文章が短めに終わってしまい、大きな山場にも関わらず今一つ胸躍らせる様な場面が少ないのだが、それは司馬遼太郎の粋な計らいと取る事にしよう。それが時代小説の性格でもあろうはずである。