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[ 文庫 ]
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壬生義士伝 上 文春文庫 あ 39-2
・浅田 次郎
【文藝春秋】
発売日: 2002-09
参考価格: 700 円(税込)
販売価格: 700 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・浅田 次郎
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カスタマー平均評価: 5
生き抜く苦しみ 盛岡南部藩を脱藩して新撰組に入った庶民の視点から見た幕末を描いている。
テーマはたった一点、生き抜くこと、だと感じた。
飢饉や戦のために、当時の想像を絶するほどの死の身近さを感じる。
とりわけ、命懸けの真剣での勝負や切腹の介錯をする時の気構え、
当時の飢饉の酷さ等々、死に直面する時の人間の気持ちの描写が生々しい。
人間は弱肉強食の世界に生きる動物で、心がある分、苦しみが大きい。
現代、人間は長寿になり、その分、生への真剣さが失われたが、ほんの少し前まで、
人間はこの様な世界に生き、自分達にも、その血は受け継がれている筈だ、と驚愕した。 長編では、浅田さんの本で一番好き! この本を読んで、浅田さんにはまり、40冊以上読んできましたが、長編ではこの本が一番好きで完成度も高いと思います。以下、2007年9月に「下巻」の方のレビューに書いたものを少し修正しました。
武士道=家族愛という破天荒な価値観を何と新撰組に持ち込んで読者を納得させてしまう作者の筆力に驚愕してしまう。インタビューの形を通して、吉村貫一郎の人物像を浮かび上がらせる一方で、インタビューを受けるさまざまな人の人物像+時代背景まで浮かびあがらせてしまう。それがあまりにリアルなので、ノンフィクションかと思うくらいだが、実はフィクションなのである。
また、最後の大野次郎右衛門の手紙には、国家主義批判が隠されている。人は、自分の妻子のためになら死ねるのであって、主君や国のために死ねという風潮がはびこると国は亡ぶと読める。最後をあえて漢文調にしたのは、作者のこの思いを控えめに主張することを目的としたと思われる。この主張は、「蒼穹の昴」「珍姫の井戸」「天切り松闇がたり」「日輪の遺産」「シェエラザード」にも脈々として流れている。浅田さんは自衛隊出身でもあり、そのヒューマニズムは付け焼き刃ではない力強さがある。 盛岡に帰りたい(泣) 感想に関しては皆さんと同じ。泣きました。
他の方々とは違う泣き所がもう一つ。
私の実家が盛岡なんです。
やっぱり仕事をするとなるとこんな田舎では、と考えて盛岡を離れました。
作品中にでてくる山や橋、地名、城跡、そして石を割って咲く桜(石割桜)。盛岡の方言とおせっかい過ぎるほどの(失礼)人々のやさしさ。はっきりと思い出して泣きそうになりました。非常に丁寧な描写だと思いました。
ちなみに雫石から盛岡の城下町ってかなり遠いんですよ。
幼い「みつ」が兄に付いてきたところでまた涙です。 義士 義(あるいは正義)とは何なのだろう.正義対悪の単純な二元論で満足していた幼少時代.反体制的なものあるいは滅びの美学とでも言うべきものに惹かれていた青年時代.見方を変えることで誰が振りかざす正義にも言い分があり,何が正義なのか分からなくなってしまった今日この頃.そんな私だがこの本には感動に値する義が書いてあった.
風雲急を告げる幕末,吉村貫一朗が貫いた義は多くの人が二分された倒幕でも佐幕でもなく,武士としての矜持でもなかった.藩校の助教を勤めるほどの知性と類まれなる剣術の技量という文武の才を持ちながら,生活に逼迫し家族を養うために脱藩.新撰組に加わったのは志からではなく給金が良いため.金に意地汚く,他者からは「出稼ぎ浪人」と罵られ様とひたすら家族に送金を続ける.鳥羽伏見の戦いで誰よりも勇敢に戦いながら,討ち死にを潔しとせず旧主である南部藩の屋敷に逃げ込み幼馴染に助けを求める.今一度家族に会いたいという想いを果たすためだけに.
彼が最後まで貫いた家族愛に元ずく正義.涙無しに読むことはできなかった. 2008年、この本に出合えて良かった。 「壬生義士伝」
タイトルから察するに、切った張ったの剣劇小説 ・・・と思いきや・・・
浅田次郎さんって、こういう小説を書く方なんですね。 嬉しい誤算でした。
新撰組、最強とも謳われた吉村貫一郎。
故郷に残した家族への仕送りの為、彼は剣を振るう。
「わしは死にたかね。死にたかねから、人を殺したのす…」
「…わしは一所懸命に働いて、 必ずや銭こば送るゆえ、しばし辛抱して呉ろ」
読み慣れない南部訛りは何時しか耳に馴染み、
盛岡の美しい山野さえ目に浮かびました。
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[ 単行本 ]
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少年譜
・伊集院 静
【文藝春秋】
発売日: 2009-02
参考価格: 1,575 円(税込)
販売価格: 1,575 円(税込)
Amazonポイント: 15 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,200円〜
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・伊集院 静
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カスタマー平均評価: 4
作品により出来 不出来がある。
短編集なので作品により出来不出来があるが、個人的には
最初の2編 「少年譜 笛の音」「古備焼」が好き。
得にこの表題にもなっている「少年譜 笛の音」が良くこの作品は
長編小説として読みたい内容であった。
全体的に場面 ホタルや山林などの自然描写が、目の前に浮かんでくる様な文章
作品によって異なるが感動のツボは捕えてるというか、内容のある作品が書ける作家さんだと思う。
何と手練れな 今まであまり触手が伸びなかった作家であったが、読んでみてその上手さにびっくり、ただし全編ではない、が、泣かせどころに、まんまとはめられる。ちょっと他のものも読んでみようか、という気にさせられる。これはもてるわけである。 やっと読むことができた「トンネル」 10年以上前、誰だったか記憶は定かではないのだが、
伊集院静の原点とも言える、初期の短編として「トンネル」という作品を挙げていた。
(多分、北上次郎ではなかったか……)
ほとんど激賞とも言える内容で、
私はそのあと伊集院静の本を探しまくったのだが、
どうしても見つからなかった。
新しい文庫本が出るたびに、「今度のには収録されているだろうか」と探したものだ。
そのうちあきらめかけていたとき、この「少年譜」が出た。
そしてその中に、「トンネル」が収録されていたのだ。
わずか10ページ少しの、短編というより「掌編」と言ったほうがよい作品。
私は迷わずこの本を購入した。
あっという間に読めてしまうのだが、
なんというか……すごいものを読んだ気持ちさえした。
「海峡」「春雷」「岬」……の三部作と微妙にリンクしている素材。
伊集院静の原風景を見ることができる17年前の短編である。
この作品を読めただけで、この本を買ってよかったと思った。
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[ 文庫 ]
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ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)
・村上 春樹
【新潮社】
発売日: 1997-09
参考価格: 740 円(税込)
販売価格: 740 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・村上 春樹
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カスタマー平均評価: 4.5
兄の歪んだ欲動に魅入られた妹とその夫の愛と孤独な闘いと救済の物語 この3部作に出会えたことで、現在or未来の夫婦が例え一握りでも、離婚という形を取らず、また形骸化した夫婦関係でなく、お互いを支え愛し合える夫婦でいられたなら、小説とは何と大きな力を持ち得るのでしょう。
ある種の人間が持ち得てしまう歪んだ欲動、それは本書の第2次大戦中のソ連の将校・皮剥ぎボリスの欲動であり、自らの妹(主人公の妻の姉)を少女期に死に追い込み、更にその妹(主人公の妻)をそのsurrealな力で性的な方向感覚を狂わせて心身を破壊する兄(ワタヤノボル)が持つ欲動。そしてその歪んだ欲動に魅入られ絶望的な状況に追い込まれる夫婦。
そんな中、弁護士事務所で便利屋として働いていた負け組足る夫(=主人公=オカダトオル)が、エリート一家にあって孤独感を抱えながら育った妻(クミコ)への果てなき愛、何が起こっても何を言われても信じて疑おうとしない自らへの妻の愛、そして自らの力、それらを信じ、底知れぬ遠い暗闇の世界から妻を救い出す物語。
私は本書を読み初めて自らの罪の本当の深さと意味を、そしてそれが取り返しのつかないことを悟りました。もっと早く本書に出会っていれば主人公が妻を救い得たように私のそれもまた違っていたのかも知れません。この救済の物語に出会い、一組でも多くの現在or未来の夫婦が救済されることを願ってやみません。それはまた村上さんの意思でもあるように思えるのです。
構成力の弱さ 日常の中に潜む些細な出来事が実は深い意味を持っている。その意味に気づくことは幸せなのだろうか?運命付けられているかのように受け入れるしかないいくつかの出来事。 透明な悪意に満ちた世界にパステル調の色彩のヴェールで紗をかける。そして人の心の奥底にそっとメスを入れる。独自の世界観を大上段に構えるわけではなく、静かに語りかけるように説き続ける筆者。
今、村上春樹を語る時に使われている此れらの修辞は、良きに付け悪しきに付けこの作品にこそ相応しいと思う。
しかし、いかんせん構成、展開ともに凡庸で最後まで読み通した充実感が無い。部分的には印象的なエピソードが多いだけに、はっきり言って途中で読むのを止めても読後感は大差無いかもしれない。
蛇足になるが、主人公がひたすらカタカナフードを飲み食いしているだけといった印象が残る。 現代日本文学の至宝 期待感のない小説だ。ノーベル賞をとっても驚きはしないからだ。また読みおえた人を不幸にする小説だ。これよりよいものにめぐりあうことは今後そうないと思えるからだ。それ以外けなしようがないほどの大傑作。これ一冊で村上春樹の偉大さが十分わかる。
奇妙な鳥の声に気づくと間もなく愛猫が姿を消す。主人公岡田トオルの平凡な日常は徐々に変貌し、ついに妻クミコまで謎の失踪をとげる。何かが狂ってしまったなら、もとに戻すしかない。ねじまき鳥の声が止まると、岡田トオルの静かな戦いが始まった。行く手を阻むは綿谷ノボルほかに象徴される悪。時空をこえ世界を支配する強大な敵だ。普通人、岡田トオルは、はたして勝てるか。だが魂の彷徨を続けるなか、彼は多くの人にめぐりあい、学び、力をつけていく。登場人物、エピソードはそれぞれが深い洞察に満ちたメタファーだ。複雑なこの世のすべてが記されているといっていい。さまざまに読みとけるだろうし、それ自体また楽しい。この本の魅力を語るだけで分厚い本が書けるだろうし、事実、出版されている。
一見シュールで難解だが、愛するものを奪還すべく悪と戦うシンプルさが核。古典的で普遍的なテーマを追求した清々しい物語だ。多くの読者をひきつけてやまないゆえんだろう。意味不明だがとにかくこの話が好きという人が多いのは、頭ではなく魂で読む優れた読者をそれだけとりこにしているあかしだ。
物語同様、簡潔な文章は、澄明で流麗。だから読みやすい。これからもより多くの人に愛されることを願う。
初村上春樹 とても壮大で複雑怪奇で取り留めのないような作品ですが実は色々なことが絡み合いリンクしているんだなと思いました。よく読んでいけばヒントが隠されていたりしますし。でもそのヒントも読み手によって違うし感じ方も違うんじゃないかと思います。でもそういう作品なんだと思いました。多くの謎を謎(一般的にみれば)のまま終わらせているのもそのためじゃないかと思いました。一回読んだくらいじゃまだほんの一部を触ったくらいなのかなとも思いました。日常はえてして非日常にすぐ飲み込まれるんだなってすごく感じましたしとりあえず登場人物が味のあるキャラばかりで作風も好きでした。 皮を剥ぐ男 壁にかかった人皮 本屋で立ち読みしたときに読み出しがとてもいい感じ
っだたので、一気に3部買ってしまいました。
買ってしまった手前読まなくては勿体ないと思い読破しましたが、
感想としては、正直しんどかった。
読んでいても頭にイメージがわかず、読んでいる目の前の文字がそのまま頭に浮かんでくる
感じ(アマゾンのレビューで改行もせずに横もいっぱいまで使って
書いてある長文を読まされているような??)でぜんぜん入り込めませんでした。
独特の世界観や、読者に結末を委ね色々深読みさせるというスタイルが
好きな人ははまるのでしょうか?
村上春樹の小説は題名のセンスのよさに惹かれ手に取るのですが
やっぱり僕には合わないようです。
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[ 単行本 ]
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ま、いっか。
・浅田 次郎
【集英社】
発売日: 2009-02-26
参考価格: 1,470 円(税込)
販売価格: 1,470 円(税込)
Amazonポイント: 14 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 670円〜
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・浅田 次郎
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カスタマー平均評価: 5
絶品のエッセイ 浅田氏のエッセイ集はどれも非常に面白い。小説もいいがエッセイもかなりいい作家である。
自身の苦労話やその時勢に即した話がとても面白く描かれているため、いつも一気に読んでしまう。
本書は「男の本音」や「ふるさとと旅」、「ことばについて」など各ジャンル毎に章纏めされているがどの章も全く期待を外すことはない。また、面白いだけでなく、相応に教養も身に付くような気がする。
軽い話が多いのでリラックスしたい時にお薦め。
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[ 文庫 ]
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粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯 (文春文庫)
・城山 三郎
【文藝春秋】
発売日: 1992-06
参考価格: 500 円(税込)
販売価格: 500 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・城山 三郎
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カスタマー平均評価: 4.5
「正々堂々の気骨!」 時代に置き去られ、今はなくなってしまったの? “エイブル able マン”できる男の本懐
正々堂々 fair & square
気概 spirit & 覚悟 preparedness
野心(分をこえた望み)ambition も私心 selfishness もない、
あるのは素心(偽りなく飾らない)mind と侠気(義侠心)chivalry
リーダーシップ:
○○でしかできないことだけをやり、決断をするが、実務はすべて□□以下に任せ(弁解はしない)、責任はとる
好んだのは座頭市、
水戸黄門は「印籠を持ち出して威張る(権威を振りかざす)ので×・・・嫌悪した」 ガッツ石松さんの座右の銘 「粗にして野だが卑ではない」??ガッツ石松さんが色紙に書いていた有名なコトバ。石田さんのような怖い人が、いまの日本には必要です。 卑(mean)でない生涯の実録 昨年(2007年)城山三郎氏が世を去られ、取り上げられることが多くなった。
以前学生時代、作者の本は数冊読んだが、本書は題名に惹かれ読んでみた。高齢になってから国鉄総裁を引き受け、自らを『ヤングソルジャー』と称した石田禮助。その人となりが、想像を喚起させてくれるエピソード、読みやすい文体で綴られている。
『粗にして野だが、卑ではない』
現在の日本の指導者で、「卑ではない」と己を言い切れる人がいるだろうか。否、日本国民に「卑でない」生き方をしている人がいるだろうか。藤原正彦の「国家の品格」や坂東眞理子の「女性の品格」が売れたということは、昨今は「粗にして野、しかも卑である」生き方がまかり通っている証であろう。強ければ「卑ではなく」いられようが、人間は弱いときに卑怯・狡猾になるものである。そして、いつも強くいられないのが人間なのであり、だから城山三郎は「卑ではない」生き方、気骨のあるいき方を通した石田禮助に惹かれ、その生涯を書きたかったのではないだろうか。
明治の人の気骨のある生き方を読み取れる良書。
粗にして野だが卑ではない この言葉が最近頭からは離れません。
時代を超えて若い自分にまで鮮烈に響いた言葉である。
今の時代が本当に必要としている偉人なのかもしれない。
当時の石田礼助のやり取りを想い描くと時折クスッと笑いがこみ上げる
まっすぐで裏表が無く意思のある姿勢に惹かれました。
是非一読をお勧めします。 自分らしく生きるということ 石田 礼助さんの一本筋の通った生き方。今の時代にこのような生き方が出来る人はなかなかいないと思う。『祖にして野だが卑ではない』という意味をこの本より痛感することが出来た。とっても素晴らしい生き方であると思った。この世の中・・・何が大切かを考えさせられる一冊です。
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[ 文庫 ]
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壬生義士伝 下 文春文庫 あ 39-3
・浅田 次郎
【文藝春秋】
発売日: 2002-09
参考価格: 700 円(税込)
販売価格: 700 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・浅田 次郎
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カスタマー平均評価: 5
生き抜く苦しみ 盛岡南部藩を脱藩して新撰組に入った庶民の視点から見た幕末を描いている。
テーマはたった一点、生き抜くこと、だと感じた。
飢饉や戦のために、当時の想像を絶するほどの死の身近さを感じる。
とりわけ、命懸けの真剣での勝負や切腹の介錯をする時の気構え、
当時の飢饉の酷さ等々、死に直面する時の人間の気持ちの描写が生々しい。
人間は弱肉強食の世界に生きる動物で、心がある分、苦しみが大きい。
現代、人間は長寿になり、その分、生への真剣さが失われたが、ほんの少し前まで、
人間はこの様な世界に生き、自分達にも、その血は受け継がれている筈だ、と驚愕した。 泣けて仕方ない作品 以前、電車の中で下巻を開いたところ、涙が止まらなくなり大変な思いをしました。
今でも「嘉一郎の母への想い」の部分を数行読んだだけで、ツーッと涙が出てくるスゴイ本です。
私の一番の感動作です。しかも主人と仲良くなるきっかけにもなった本で、今では歴史小説が好きになりました。 よい本と思いますが。。。。 さすが浅田次郎さんの小説だけあって、とても読み応えはあるし、話の進め方がとても計算されているし、どんどん先を読みたくなるほどの小説であることは、このサイトの皆さんのレビューの通りです。
でも、感情移入はできませんでした。涙線も残念ながら熱くなりませんでした。
あまりにも家族に対する愛を誇張し過ぎているからかもしれません。
あまりにも理想的なお父さんであるからかもしれません。
このくらい家族のために自分を犠牲にできるくらいの父親が理想なのでしょう。
私も父親をやっていますが、私には少々重い内容かな と思ってしまいました。
面白い、読んでいて全く飽きが来ないし、もっと読みたくなる小説のことは確かです。
でも、新鮮組に関する小説でいえば、司馬遼太郎の「燃えよ剣」の方が熱くなれると思いますよ。(司馬遼太郎のファンであるという贔屓もありますが、、、)
いろいろ感想を述べましたが、読んで損は絶対ない小説です。そして、浅田次郎さんの小説をこれからも読み漁るつもりです。
いまさらですが、浅田次郎さんの小説は、私のマイブームとなっていますからね。 武士道、家族愛、国家主義批判 武士道=家族愛という破天荒な価値観を何と新撰組に持ち込んで読者を納得させてしまう作者の筆力に驚愕してしまう。インタビューの形を通して、吉村貫一郎の人物像を浮かび上がらせる一方で、インタビューを受けるさまざまな人の人物像+時代背景まで浮かびあがらせてしまう。それがあまりにリアルなので、ノンフィクションかと思うくらいだが、実はフィクションなのである。最後の大野次郎右衛門の手紙には、国家主義批判が隠されているように思います。人は、自分の妻子のためになら死ねるのであって、主君や国のために死ねという風潮がはびこると国は亡ぶと読めるのです。最後をあえて漢文調にしたのは、作者のこの思いを控えめに主張することを目的としたのかもしれません。 ただただ人として 丁度新選組に興味が出てきた頃に初めて読んだ。
男として、義を貫く愚直な人々の物語。
けれど義というのは価値観にも似て、これという定義が難しい。
私は本作を読む中で、「義」とはとてもシンプルなのではと思った。
それは、『大切なもの・人・志を守りたい』ということではないかと―。
そして、動乱の幕末で、たったそれだけの望みがどれだけ難しかったか。
それが分かっていてなお、足掻く人たちに泣かされた。
「死ぬのは自分たちだけで沢山だ」と怒る不器用な永倉に。
賊軍と共に配流先に向かう道すがら、吉村の故郷で慟哭する斉藤に。
会津藩士に必死に声をかける南部の人々に。
生涯の友に死ねと言わねばならない次郎衛に。
小さないのちを守ろうとする人たちに。
映画・ドラマ化され、それぞれ評価されているけれど、
原作の筆力には遠く及ばない。それだけ浅田次郎氏の、
まるで自分がその世界にポンと置かれた様なリアルさが見事。
吉村やその息子に関わった人達による語りで物語が紡がれて
いくのも面白い。
難しい幕末時代を扱ってはいるが、気負わずに最後まで読める。
余りにも心揺さぶられて泣けてしまうので、通勤途中等ではなく、
一人でじっくり読んだほうがいいと思う。
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[ 文庫 ]
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峠 (下巻) (新潮文庫)
・司馬 遼太郎
【新潮社】
発売日: 2003-10
参考価格: 620 円(税込)
販売価格: 620 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 250円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 4.5
スッキリ行かないよ、人間なんだよ 人生を考えるに十分耐え得る作品でありましょう。
河井の美意識に釈然としない自分に気づきましたが、
そこが己自身をまた知るうえで、
貴重なヒントになりました。
「われわれ―読者やこの稿の筆者―は後世にいる。
後世にいる者の権能はちょうど神に近く、
事態の直面者である継之助の知らぬことまで知っている。」
なるほどそうで、「灰の中に忘れた骨」もありましょう。
家老、執政、総督として身を始末できる。
それほどに、己に忠実に生きる姿に感銘します。
知らない史実、圧倒的な筆力 数多くの司馬作品が映画やドラマになり、今まで読んだ作品もそういった主人公が登場する物語りばかりだった。河井継之助は勿論、北越戦争も知らずに読んだ。
歴史の結末を知らないだけに上巻、中巻と進むうち、どんどんのめりこんでしまい、下巻に至ってはあまりに鮮烈な内容に圧倒された。
河井継之助の評価や武士としての生き様を感じる前に司馬作品の深さとこういう小説を読めた幸福感すら覚える秀作と思う。 すべての矛盾において人は・・・ 歴史に「もしも」はない。
けれど坂本竜馬を筆頭として、「もし」この人たちが明治を生きていたら日本はどんな変わったろうと思わせる幕末の戦乱期に倒れたつわもの達が数多くいる。
河井継之助のその中の一人になるような、後世の人々の心を揺さぶる人であった。
歴史の中で有名でない人を扱い、ここまで仕上げた作品はすばらしい。
人生観を変える一冊かもしれない。 悔し涙 私は、本を読んで泣いた事はなかった。(あんまり読書をしないのも理由だけど…)だけどこの「峠」を読んで泣いてしまった。しかも、悔し涙…。感動とか、泣ける、とかではなく無性に悔しくなって泣いてしまった。一体どこの場面で、といえば「会津が戦場に長岡の五段梯子(藩印)を放った」ところだ。長岡を同盟軍に引き込むために…。悔しくて泣いてしまった。せっかく河井が中立を貫こうと働いている最中なのに、というのと、まさか会津が…。というのが交ざって悔し涙してしまった。いくら涙するといっても、所詮は他人の話で悔し涙するなんてまったく初めて。私は長岡が地元なので、やっぱり私にも長岡人として骨の髄にしみ込んでいたのかなぁ…と思ってしまった。文中にもあるように、「河井は悲しかったでしょうね。」 やはり戦うべきだったのか 武士というとすべてが仁義を
通していたと思いがちだが
司馬氏の本を読んでいると
江戸末期の武士は
どちらかというと今の官僚に近いことがわかる。
(先例主義、大勢迎合)
しかし、河合継之助は違う。
立場を重んじ、立場に死んだ。
どうすれば生き残れるかを十分に
わかっていたにもかかわらず、
革命の大きな流れに飲み込まれてしまった。
このような人物が明治維新の陰に存在したことを
知ることができて本当によかった。
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[ 単行本 ]
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小学五年生
・重松 清
【文藝春秋】
発売日: 2007-03
参考価格: 1,470 円(税込)
販売価格: 1,470 円(税込)
Amazonポイント: 14 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 969円〜
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・重松 清
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カスタマー平均評価: 4
ほっと安心する世界 重松清は大好きな作家だが,小学生?高校生を主人公にした小説は余り好きではなかった。子供が余りにも大人びた考え方で行動しすぎて,「小さな大人」にしか見えなかったから。
ただし,小学生が主人公で,子供の世界をそのまま描いたような作品では,そうした嫌らしさがなくて好きだ。『小学四年生』なども,よかった。
本書も,『小学四年生』のような連作ではなく,純粋な短編集ではあるが,よかった。子供のころの世界を素直に楽しめたような気がする。
特によかったのは,「おとうと」。私にも弟がいる。大好きなんだけど,外で自分の友達と遊んでいるところにこられると邪魔でつい泣かしてしまう。子供のころの兄と弟の関係って,確かにこんな感じだったなぁ,と懐かしく思った。
「カンダさん」も,よかった。近所のお姉さんとその彼氏(婚約者)。大好きなお姉さんの彼氏に優しくしてもらうのって,なんだかとてもうれしかったものだ。
こういう作品なら,もっと読んでみたい,と思う。
子供から少年へ 16の短編集。病院の待合室で待っている間の2時間足らずでさくさく読み終えることができました。重松氏の子供をテーマにした作品はずいぶん読みましたが、今回も本当に繊細な心の動きをうまくついてきますよね。小学五年生を通ってきた人には、必ずどこか懐かしい記憶が呼び覚まされる書のはずです。
私が一番心打たれたのは「バスに乗って」でしょうか。母の入院する病院へ行くために買うバスの回数券。全てを使い切ってまた回数券を買うときの心細さ、涙がにじみました。
ほんわか 小学生らしさを持っているけれど、少し、大人びた視点も入り混じっている素敵なお話です。現役小学五年生でもさくっと読めますし、大人も、少年少女時代を振り返ってみながら、青春を味わえます。 懐かしい少年時代 十六話の男の子の短編集。
小学五年生 年齢的に自我に目覚め、異性が気になりだし、子供なんだけどちょっと大人考えも判ってくる頃だったのかな?
変なことにドキドキしたり、興味をしめしたり、意地を張ったりしていた、自分自身ですら忘れていた小学生の頃の自分に向き合わせてくれて、懐かしい気持ちをよみがえらせてくれる、重松さんだから、書けた1冊だと思う。
5年生にしか経験できない思い 17編の短編の主人公はすべて「小学5年生の男の子」。
急に女子を意識しはじめる男の子。
家族の死に直面する男の子。
転校で友達と離れ離れになってしまった男の子・・・。
それぞれが自分のこれまでの経験値ではいっぱいっぱいの思いを抱え、
経験を重ねながら成長していく姿を描きます。
そういえば、小学5年生くらいの時期って、
体の面でも心の面でも子供から大人への変化が最もよく感じられる年頃なのしれません。
この年頃の女の子は体が一気に大人の女性へと変わりつつあり、
それと並行して態度やしぐさも女っぽくなり、まさに男女の差が大きく出る時期です。
(あと一年もすれば男子は声変わりがはじまり、さほどの差はなくなるのだけれど)
こんな時期って人生の中のほんの一瞬にすぎないのに、
ここにうまく焦点を当てるなんてさすが重松さんです!
重松さんでなければこんな温かいまなざしで少年たちを見つめることはできないでしょう。
懐かしさと、かけがえのない時間のまぶしさが愛おしい作品です。
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[ 文庫 ]
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孤高の人 (上巻) (新潮文庫)
・新田 次郎
【新潮社】
発売日: 1973-02
参考価格: 620 円(税込)
販売価格: 620 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 250円〜
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・新田 次郎
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カスタマー平均評価: 4.5
2008年のNo.1 「氷壁」「神々の山嶺」から山岳小説にハマり、有名どころはほとんど読んだと思う。 山岳小説と言えばコレが一番に挙げられるのを知りながら、出版年月日の古さから長らく手が出なかった。 舞台は海外の名峰でもなく、岩壁でもなく…。 なんとなく「難しい山に登る話の方が、より感動するはず」という根拠のない思いこみもあったように思う。 戦前のこの時期に、当時の装備で単独で、剣などの日本アルプスに登ることは、現在海外の名峰に挑戦することに匹敵する…のかどうかは分からない素人である。 そこを理解できなくても、「人間 加藤文太郎」に胸うたれたのである。 今読んでも全く古くない! むしろ、これほどの作品、今はなかなか出会えないのではないだろうか! 「孤高」という言葉の意味を、初めて理解出来た気がする。 今後、私の中では「孤高」=「加藤文太郎」だろう。 「孤高」という言葉を、軽々しく使って欲しくない。そんな気にさせられる一冊だ。 「孤高」とは、こんなにも厳しく、気高く、凄烈なものなのだ。 ノンフィクションとしておもしろい 現在,連載中のマンガ「孤高の人」を読んでいるので,小説「孤高の人」を読みました。
名作と言われるだけあっておもしろく,2日で一気に読みました。
しかし,いろいろ調べてみると,(下の方で書かれている人がいますが)遭難のきっかけを作った宮村健のモデルである吉田登美久は,実際には相当に実力のある人物で,加藤文太郎とも信頼関係があり,加藤文太郎に誘われて一緒に雪山を登ったこともあるということでした。
小説なので,当然,脚色があっていいとは思いますが,加藤文太郎が死亡することになった関心部分についての,しかも,客観的な資料に反する脚色がされているようです。
このような脚色をするのであれば,加藤文太郎という名前を使うべきでなかったと思います。
そのような内容は(亡くなっていますが)加藤文太郎の意志にも反するのでは?と素人なりに思いました。
フィクションとしては,とてもおもしろかったです。
調べなければよかったな・・・・・
宮村健のほんとうの姿 かなりの分量だが、内容は面白い。一気に読める。登山をする人なら尚更だ。
しかし、共感できない。違和感だけが残る。
小説にはモデルになった人物がいる。
主人公の加藤文太郎はもちろんだが、宮村もその1人だ。
遭難時のパートナーとして徹底的に自己中心的で無謀な若者として描かれている。
しかし、実際は、だいぶ違う。
加藤自身の山行記録「単独行」や当時の文献、同行者の談話を少し調べれば分かることだ。
宮村のモデルである宮田は、加藤に匹敵する実績と力量を持つ登山家であった。
そして、加藤とパートナーを組んでの登攀も初めてではなかった。
実力を見込んで加藤から山に誘われたものだった。
そして、難易度の高い冬山登攀を成功させ、お互いに謙虚に称えあっている。
まさしく信頼できるパートナーであった。
加藤自身も孤独を好む社交下手のように描かれているが、そうではなかった。
チームで上ることも何度かあったし、不慣れというほどではなく、むしろうまくやっていた。
遭難時の槍ヶ岳でも、あかたも急に4人で登ることになったように書かれているが、それは最初からの計画だった。
そして天気は晴れるから行ける、との判断には加藤も加わっていた。
作者は小説の中で遭難の原因を宮田1人にあるかのように書いているが、なぜ事実に反してまでここまで彼を侮蔑的に書く必要があるのだろうか。
小説では作者の意図に合わない都合の悪い事実はすべて隠されており、一言も触れられていない。
「孤高の人」という表題に付けた通り、加藤はあくまで孤独でなければならず、絶対に穢されてはならぬ存在だったのだろうか。
加藤文太郎に近づきたい・・・ 人それぞれ生きかたがありますが、この人ほど真の一匹狼であった男は少ないと思う。名誉や金銭、物欲に縛られず純粋に生き、しかも社会人としてエンジニアの仕事もこなす。『狼は帰らず』という森田勝をモデルにした作品の場合、すべてを犠牲にして山にのめりこんでいくが、文太郎は家庭も持ち、最期は同行者を見捨てれば自分だけ生き残れる場面でも諦観ともいえる死に方をした。山行ではなく日常生活における文太郎の心情描写がすばらしい。当然、小説として脚色してあるにせよ、私自身はその価値観に共感し、何度も読み直した。山岳小説というよりも伝記に近い。 ノンフィクション ノベル 主人公の加藤文太郎は実在の人物です
実在の人物を主人公にして小説を書くことは昔からあります
ビクトル・ユーゴーのレ・ミゼラブル
フォレスたーのホーンブロア
ゲーテのファウスト(もっともこれは戯曲です)
孤高の人はすぐれたノンフィクション・ノベルです
昔から優れた作品にはモデルがいます
新田次郎の名作「栄光の岩壁」は芳野満彦がモデルです
新田次郎は実在の人物をモデルにして優れた作品を作る名手です
私は新田次郎を尊敬します
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[ 単行本 ]
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猫を抱いて象と泳ぐ
・小川 洋子
【文藝春秋】
発売日: 2009-01-09
参考価格: 1,780 円(税込)
販売価格: 1,780 円(税込)
Amazonポイント: 17 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 1,250円〜
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・小川 洋子
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カスタマー平均評価: 4.5
美しきもの 小川洋子さんの作品を読んで感じることはいつも「美しさ」。文体の美しさももちろんだが、今回のテーマである「チェス」にも確かに美しさを感じる。駒やチェス盤の美しさは静謐な美しさ、そしてその駒たちが紡ぎ出すゲームの美しさ。
筆者は『博士の愛した数式』では「数学」の美しさを、本書では「チェス」の美しさを描き出した。一見どちらも整然とクールな印象だが、それを愛する者にとっては詩のように美しい。
ただし『博士?』では読者の誰もが驚きと共に数式の美しさを感じることができたが、本作品ではリトルアリョーヒンの美しい一手に驚いているのは登場人物だけで、読者は置いてけぼりを食ったようなもどかしさを感じてしまうかもしれない。
ビショップはいったいどのような軌跡で奇跡を起こしたのだろうか。想像できない自分がもどかしい。 じっくりと楽しみたい とても静謐で、しっとりとした物語です。
主人公を取り巻く世界。チェスを通じて世界を見る。
チェスの棋譜に人が現れるという言葉に、ドキドキさせられました。
そして、この本を読んでいる時間はとても幸福でした。 感想 作者を良く見てみたら小川洋子だった。
ああ「博士の愛した数式」の……。どうりで文章に既視感を覚えたわけだ。
相変わらず詩美に溢れた繊細な話を書く人だと思った。
こういう話はわかりやすいハッピーエンドを好む人や、エネルギッシュな作品を好む人とは相容れないだろうが、こういう「閉じた世界」ではない「自分のいるべき世界」をテーマにした本を読んで欲しいと思った。きっと視界が広がるはずだ。 美しい作品です。 静かに流れる時間、美しい人々…。
小川さん、文章が美しい。
構成も、話の展開も素晴らしく、全てに無駄が無い。
小川洋子さん、恐るべき作家さんです。
小川ワールドにすっかり翻弄されました。
人間チェスに使われた衣装は、ゲームだけなのに一夜にしてボロボロになる。
「それだけチェスの戦いが厳しいものだからジュないかしら」というミイラの言葉。
人間チェスの駒になることを拒んだけれども、駒にならざるを得なかったミイラ。
片時もミイラのそばを離れることが無かった鳩が鳴き、姿を消したミイラ。
ミイラの身に何が起こったのか…。
う?ん、知りたい…。 100年に一度の金融危機に直面する今だからこそ、小さくても雄大に チェスを知らなくても、猫が好きでなくても、象に興味がなくても、心静かに楽しめます。主人公はチェスの詩人アリョーヒンの小さいバージョン。でも、彼の小ささなど忘れてしまうほどの交響詩的な作品です。ゲームから生まれる緊張感から猫を抱き、棋譜が織り成す壮大さから象と泳ぎました。ゆっくりと読み進めたい美しくほのかに悲しい作品です。
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