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[ 文庫 ]
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40―翼ふたたび (講談社文庫)
・石田 衣良
【講談社】
発売日: 2009-02
参考価格: 660 円(税込)
販売価格: 660 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 200円〜
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・石田 衣良
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カスタマー平均評価: 4.5
40を間近に控えて 20代後半からの10年間があっという間に過ぎてしまい、今私も40まで残り1年半となってしまいました。10年前までは40なんて可也貫禄もあり、社会的地位もあり、家庭も安定しているのだろうと思っていましたが、いざ自分を見つめてみると、外見的な貫禄はいざ知らず、中間管理職として会社で右往左往し、わがまま盛りの小学生の子供たちに振り回され、小遣いも増えないなんとも情けない40歳になりそうです。そんな40代だからこそ、逆に世間から求められている40代になろうと、虚勢を張り生きていこうと考えるのかもしれません。
本書はそんな40歳代に肩肘張らず生きていこうというエールが込められています。笑いあり涙ありの心温まり勇気を与えられる本でした。 現代 内容は少し暗くヘビーな気がしましたが、現代の世の中を表している感じがして。思わず最後まで読んでしまいました。石田衣良さんのいままでの小説だと、なんとなくおしゃれな部分があるのですが、私はこの小説は好きです。40代になり、現代とのギャップに悩む中年男性達、何かのメッセージになればいいなと思いました。 舞い上がれ40! 14(フォーティーン)で主人公達に笑い、 40(フォーティー)で励まされました。 40歳は人生の折り返し地点で、若くはないけど老いてもいない。 会社という小さな世界では、人生の分かれ道でもある。 そんなこんなを自分に照らしながら考えて読んでいたら、本書が元気をくれました。 前向きに生きなさいとメッセージとして勝手に解釈し、勝手に励まされました。 また明日から頑張ります。 みなさんも気軽に読んで笑って、元気になりましょう! 良かったよ 出張のお供にと単行本を物色していると平積みの単行本に石田衣良の文字が目に飛び込んできた
この間まで結構集中して読んでいた石田さんの「40 翼再び」だ
「人生の半分が終わってしまった。それも、いいほうの半分が。会社を辞めて、投げやりに・・・」とちょっと重い話に見えた。
僕も最近自分の人生についていろいろ思うところがある。まさに、40も半ばにかかる自分と重なるタイムリーな内容だと思い、本を手にしてレジに向かった・・・
出張の行き帰りの新幹線で一気に読んだ。40才、人生の半分。輝く前半に対比して行く先々が見えてしまっている後半の生き方。また40にて人生の終演を迎えざる得ない人生・・・
いつもの通り、お人好しの主人公が、少しうまく行きすぎたりする結末だったり、消えゆく命の話だったり石田ワールド全開で好きな人には期待を裏切らない一冊だ。
僕は新幹線と行きつけの焼トンやさんのカウンターで読みながら涙を何度か流していました。
仕事に行き詰まったらもう一度読み返してみたい一冊でした。
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[ 文庫 ]
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竜馬がゆく〈8〉 (文春文庫)
・司馬 遼太郎
【文藝春秋】
発売日: 1998-10
参考価格: 660 円(税込)
販売価格: 660 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 157円〜
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・司馬 遼太郎
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カスタマー平均評価: 5
大政奉還、仕上げのとき 坂本竜馬の物語、全8巻の8冊目である
大政奉還、仕上げのとき
身分故、竜馬はその場に立ち会うことはできない
しかし、敵味方、時代までもが
彼の役者として、舞台を演じていく
そして、竜馬は..
文庫本で3000ページを越す長編
私が読み飛ばしていなければ
表題の文字は、最後の30ページになってやっと出てくる
「街道は晴れていた。竜馬がゆく。」(P369)
すがすがしい。 傑作の完結 天に舞い上がる竜馬 最終巻に来て司馬遼太郎の歴史観人物観は更に磨きがかかり、ありとあらゆる場面で現代社会に生きる私達に生きる言葉を語らせている。
「財政の独立無くして思想の独立は無く行動の自由も無い」
「しかない、というものはこの世にはない。一尺高いところからものを見れば道は常に幾通りもある」
「相場買いの客は大切にせぃそれが時勢に勝つ道じゃ」
「ひとつの概念を喋るとき、その内容か表現に独創性がなければ男子は沈黙しているべきだ」
「男子はすべからく酒間で独り醒めている必要がある。しかし、同時に大勢と一緒に酔態をさらしているべきだ。」
「仕事と言うのは全部をやってはいけない。八分まででいい。八分までが困難な道である。後の二分は誰でもできる。その二分は人にやらせて完成の功は譲ってしまえ」
「われ死する時は命を天にかえし、高き官にのぼると思いさだめて死をおそるるなかれ」
等々肝に銘じておきたい名言に溢れている。
全編を通じて竜馬が自らの手帳に書きなぐっていた語録が出てくるがその中で共通しているのが「自分を躾ける」という一貫した姿勢だ。
どう考えてみても竜馬が恵まれていたとは思えない中、困難に立ち向かい超然とした姿勢の裏には素晴らしい自己規律があった。
竜馬の魅力が溢れる一言は最終巻にもたくさんある。中岡慎太郎に「どういうわけで、そんなに有能な奴が集まるのだ?最初、どうやって見つけるのかね」に「おい来ないか、というだけさ」
人を食ったような司馬遼太郎が描く竜馬がそこにいるようだ。
司馬遼太郎と言う人の物語の進め方、挿話、伏線の張り方、時代背景の説明全てが面白くそれが何度も読み返せる要因にもなっている。読後それぞれが登場した竜馬以外の違う人物の本を読みたいと思えるほどに他の登場人物も面白い。
世に生を得るは事を成すにあり。十分にその役目を果たして、竜馬はあっという間に斬られてしまう。今まで散々斬り付けられながら狙われながら切り抜けてきた竜馬にしては信じがたいほどのあっけなさに、天命があった、といわれても仕方ないか、と思えてくる。
あとがきも面白く、竜馬の残した事業を、竜馬が唯一苦手とした岩崎弥太郎が引き受け三菱帝国の礎にしていくのも面白い。
国を思う気持ちと捨て身の覚悟と理性が日露戦争まではうまくバランスが取れていたが、幕末の決死さが行き過ぎた存在として顕著になって太平洋戦争に突入してしまうという歴史のあやというのは凄い。帝国主義から日本を救った思想が今度は国を滅ぼす方向へと走ってしまう。このバランス感覚こそ幕末の志士たちが最も誇れるものではなかろうか。
傑作。落ち込んだとき、自分を奮い立たせたいとき何度も読み返すでしょう。 国民的名作最終巻、世に生を得るは事をなすにあり 長い長い物語もいよいよクライマックスを迎えます。
維新回天の舞台における竜馬のクライマックスは大政奉還実現のシーン。岩倉具視や大久保利通が策謀していた倒幕の密勅の数時間前に将軍・慶喜が決断したその場面とその報を聞いた竜馬の姿が、ありありと目に浮かぶように描写されていて素直に感動できます。
そして人間ドラマとしては、脱藩後初めて故郷の家族に会えた場面が、その後の死を知るだけに悲しくもほほえましく感じられます。
そして暗殺。この場面は極めて簡潔に語られるのみで、そのことが後に触れる司馬のこの小説を書いた意図をさらに際立たせます。
さて「竜馬がゆく」全体を振り返って。物語最後段で司馬はこういいます。「人は死ぬ。竜馬も死ななければならない。その死の原因はこの小説の主題とはなんのかかわりもない。筆者はこの小説を構想するにあたって、事をなす人間の条件というものを考えたかった」。そして、それは竜馬自身が残した言葉「世に生を得るは、事をなすにあり」がすべて言い尽くしていることでもあります。
子供のころ、ドラマや漫画で竜馬が暗殺される場面をみて、「もっと長生きして欲しかった」と思いましたが、この本を読んで、その死は必然であったと思うようになりました。
竜馬を通じて司馬が教えてくれたこと。それは、いつの時代にも共通する「事をなす人間」の条件、すなわち、常に大きな志を持ち、自分の信念を信じて行動し続けることの大切さ。久しぶりに読み直して、さらにこの作品が好きになりました。
もう40年も前に書かれた作品ですが、特に若い人に是非読んで欲しい司馬作品です。 読中、読後爽快!やはり傑作です。 はるか昔、NHKの大河ドラマで放映されていた。また、この作品が好きだという人の話も何回か聞いたことがある。でも、全8巻の大作に手をつけようとしなかった。
きっかけは、斎藤孝氏の「日本を教育した人々」を読んだことである。斎藤氏は、吉田松陰、福沢諭吉、夏目漱石と共に、司馬遼太郎を挙げた。日本の人々に歴史と生き方を伝えたということらしい。そこで、最もポピュラーな「竜馬がゆく」を読むことにした。そして、すっかりはまってしまった。
竜馬の33年間の生き様を生き生きと描ききっている。幕末の志士たち、竜馬の家族、友人達が多く登場する。ときどき、数十ページ、竜馬から離れ、別の人物の話が挿入されることもある。おもしろいのは、司馬遼太郎が、ナレーターのように作品の途中で、解説に出てくるところである。歴史的背景の説明や取材の裏話など。私は、この部分を大いに楽しんだ。
読後、伏見から京都へ、竜馬の足跡をたどる旅をした。若者のファンも多いことがその旅でも分かった。 最期がいい この小説はとにかく最高です。少し長いなぁと思える所も有りましたけど、この最終巻を読み終えるとそんな事はすっかり忘れていました。特に「この長い物語も、おわろうとしている。」という文の辺りからドキドキしながら最期まで読みました。漫画ならともかく、小説でこういう体験をしたのは初めてでした。今後も小説でこんな体験は出来ないと思いました。後、最期の一文がいいです。個人的にかなり気に入っている言葉です。美しい言葉だなぁと読み終えてから思いました。
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[ 単行本 ]
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最初のオトコはたたき台
・林 真理子
【文藝春秋】
発売日: 2009-04
参考価格: 1,250 円(税込)
販売価格: 1,250 円(税込)
Amazonポイント: 12 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 900円〜
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・林 真理子
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カスタマー平均評価: 0
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[ 単行本 ]
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走ることについて語るときに僕の語ること
・村上 春樹
【文藝春秋】
発売日: 2007-10-12
参考価格: 1,500 円(税込)
販売価格: 1,500 円(税込)
Amazonポイント: 15 pt
( 在庫あり。 )
中古価格: 687円〜
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・村上 春樹
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カスタマー平均評価: 4.5
誠実な人柄を受け取る 当然のことながら、走ることについて村上春樹さんが語っている本なのだが、読んでいると彼の誠実な人柄が伝わってきて、読んでいて気持ちいい。それに、彼のような天才が、まじめに「努力」について語っていることに、すごく安心させられる。やっぱり彼は、彼なりの「存在の不安」と、さまざまな方法で向き合っているのだな、と感じられる作品だった。 心に添って走る 村上春樹を読み始めて20年が経ち、私も大人になりました。当時は20年後の自分が走るなんて夢にも思っていなかったはず。もちろんフルマラソンなんて夢のまた夢なヘタレランナーですが(笑)。不思議なのは走るのが好きかと聞かれたら「とんでもない!」と答えるだろうと言うこと。これは村上さんがシドニー五輪の本の帯に「オリンピックなんて全然好きじゃない」と書いた気持ちに少し似ています。走ることについてここまで真摯に語られた本は他にない気がします。この本を私のスポーツクラブの恩師であり、リレーマラソン大会に誘って走るきっかけを下さったコーチの退職に際し、お餞別に…とプレゼントしました。 走れ、はるき!!! 走ること、小説を書くこと、そして村上春樹が経験できる1冊。
「もしもそのころの僕が、長いポニーテールを持っていたとしても」の出だしは、ボストンの川べりをポニーテールの美しいハーヴァードの新入女子大生が抜かしていく風景が自然の美しさを拾いながら、だんだんと走っている筆者に焦点が向く、その流れがすごい。
2時間30分弱かけて、ゆっくり楽しんで読めた。
?僕は小説を書く方法の多くを、道路を毎朝走ることから学んできた
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・筋肉は、負荷を与えただけ応えてくれる
・小説を書くのに必要なことは、才能。そして、集中力と持続力
・日本語で話すとこぼれおちる。外国語なら、言語的選択枝と可能性は必然的に限られる
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ジョギングの友であり人生の友に! 村上春樹がジョギングをしているのは知っていた。多分、健康維持か何かのためにやっているんだろう、その程度に軽く考えていた。この本についても、春樹がジョギングについて書いたエッセイ本だろう位に考えていた。
読み始めて驚いた。この本は春樹の自叙伝ではないか。しかも、春樹の人生哲学のエッセンスが織り込まれている。何故、ジョギングを開始したか。何故、毎日走るのか。どのようにして小説を書き続けているか。それらが、春樹の体験した25のマラソン・レース、北海道のウルトラ・マラソン、ランナーとして経験した運動能力の年齢的なピーク、そしてトライ・アスロンへの挑戦。
ボストンを走り、NYを走り、アテネを走る。書き続けるために走り、走りながら書く。ランニングの才能もなく、小説家としての才能もない春樹が、いかに目標を設定し、毎日、たゆまぬ努力を続けてきたことが真摯に描かれている。
人生とは、どうゆうものかを教えてくれる。 これだけ楽しませてもらってあと何が不満かというと.... 村上春樹の小説のファンには狭量な人が多いらしく、たとえば私がレビューで何を書いても、(他の作家の作品の場合に比べて)大体評判が悪い。完全に自分の意見に一致しなければ、提示された意見を排除したいようである。しかし、仮にあなたが考えていることを、他の誰かが100%代弁してくれたところで、そんな意見は耳に快いだけで、「参考」にはならないのではないか。村上春樹の作品は、そんな狭量さとは本質的に無縁なところにある、というのが私の感想である。もっとも、この作品に限っては、どうも読者層が違うらしい。コアなファン以外にも、かなり読まれているようである。
この作品では、「走る」ことをテーマにして、そのことの意義がさまざまに考察されている。いつもながら文章は明快であり、ちょっとした比喩や言い回しにも独特のセンスが感じられる。箴言・警句・格言らしき文もところどころにみられ、はっとする場面もしばしばである。この人の文章は留保なくすばらしいと今回も思う。
しかし何となく充足感が薄いのはなぜか。まず、統一したテーマがあるとはいえ、やはり寄せ集めた文章の弱み、何かを最初から最後まで見届けるような強力な構成でないことが大きいだろう。各章がある程度長いため、短文を集めたエッセイ集の要領では読めない。その半端さが原因のひとつ。しかしこれは読者側の問題であり、彼の落ち度ではない。もうひとつは、初出誌をみるとわかる。何となく予想していたのだが、思った通り、少なくとも一部は「格好よく生きる男」を前面に押し出すような雑誌であった。この手合いの雑誌には癖があり、何事も安手のドキュメンタリーよろしく、格好のいい「ドラマ」にしてしまう傾向がある。彼ほどの人がそんなことに流されたはずはないが、やはり無意識に文体や口調が変わったのではないか。そのことに私は途中で気づいた。
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[ 文庫 ]
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楢山節考 (新潮文庫)
・深沢 七郎
【新潮社】
発売日: 1964-07
参考価格: 380 円(税込)
販売価格: 380 円(税込)
( 通常3〜5日以内に発送 )
中古価格: 200円〜
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・深沢 七郎
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カスタマー平均評価: 5
日本の至宝 「日本の至宝だよ」と、尊敬する先輩に贈られた『楢山節考』の解説には、正宗白鳥氏の批評が掲載されている(以下抜粋)。
「ことしの多数の作品のうちで、最も私の心を捉えたものは、新作家である深沢七郎の『楢山節考』である。(中略)私は、この作者は、この一作だけで足れりとしていいとさえ思っている。私はこの小説を面白ずくや娯楽として読んだのじゃない。人生永遠の書の一つとして心読したつもりである。」
その味わいを十分に尽くせたかどうかわからないが、一読すると心の中に敷き詰められ、また読むことになるという確信を抱かされた、存在感のある作品である。 むしろ嬉々として 久しぶりに衝撃を受けた小説に出会った。
主人公はおりんという女性だが 本当の主人公は「村の掟」であると読んだ。
その掟は村人が作りだしたものなのだろうが それが自立した生き物
のように村の中を彷徨い、人々を従わせていく姿が本筋だと思う。食物を
盗んだ一家に対する処分、結婚と再婚の作法、そうして60歳を超えたら
神の住む山にその老人を捨てなければならないという棄老。
村人が「神」と呼んでいるものは「村の掟」に他ならない。
おりんは その「神」に むしろ嬉々として従っていく。自らの死を準備していく
姿には 奇妙な明るさと強さがある。本作が じめじめした親子の情愛譚に
留まらないのは その明るさと強さが放つ「光」が眩しいからだ。岩陰で 雪を
身にまといながら念仏を唱える場面は おりん自身が神になった様を思わせる。
戻ってきた息子に対して無言で手を振って返させているのは もはやおりんではない。
表題作のみで。 四短篇を収録しているが、本レヴューは表題作のみを対象に書く。現代を生きる大多数の者にとっては、悲劇的・理不尽・不条理ともみえるような状況を、しかし当然の日常として生活し、適応し、さらには自らその規範たろうと努め、結果としてその状況下での最大限の幸福を体現するに到る一人の女性が主人公である。作者が何をどこまで狙って書いたのかは知らないが、ボクはこの作品に大変揺さ振られた。「小説を一冊挙げろ」といわれたら、今のところ逡巡なくこの作品を挙げるだろう。文章はぎこちなく、余計な装飾がないため内容こそ素直に伝わるが、下手である。だが、それで些かも作品の価値は減じられることがない。むしろ、この野ざらしの岩石のような朴訥な文体が、この作品にはふさわしいのかもしれない。作者は逸話の多い人物である。人物そのものが下手な小説よりもおもしろい。だが、作者を知るより前に、先入観なく本作品を読んでみることを勧めたい。 星100個でも足りない 貧困に喘ぐ小さな山村が舞台です。村社会独特のしがらみと暗い因習に支配されるこの村では、70歳を迎えた老人は例外なく「楢山」と呼ばれる姥捨て山に捨てられることが掟です。気丈夫で身体の達者な老女・おりんも、70歳の冬のある日、情深い一人息子・辰吉に背負われて「楢山」を目指しますが・・・・。
子が親を捨てることを強要され、まさに今捨てようとする。そんな哀し過ぎる一刹那においてもなお、親子は親子たり得るという厳然たる真実を、これほど美しく描き切った小説が他にあるでしょうか。
たった380円の本で、小一時間で読める短編小説ですが、私はこの本を一生手放さないでしょう。
三島由紀夫など大文豪が激賞したのも頷ける、日本文学史上稀に見る超名作です。 人生永遠の書 私の世代(60年代生)は、純文学、とくに日本純文学を読みもせずにバカにする世代だった。私もその一人だった。それでも文学的素養をつけようと漱石や太宰治などを読んでみたが、正直言って、さほど感激しなかった。私の知的(?)根拠地はビートルズ、ディラン、ドアーズ、ボウイといったロック・ミュージシャン達だった。文学はノロくて退屈なうえ、自分の問題として読めなかった。実につまらぬ事を意味ありげに悩んでいる......アホか、というのが我が日本文学観だった。そんな私を、齢三十を過ぎた時点で「やはり文学というものはバカにできない。あまりナメてはいけないものなんだな。」と気付かせてくれたのが、なにげなく手に取った本書だ。人生最大の衝撃というと大袈裟に聞こえるかも知れぬが事実なのだから仕方がない。とにかく驚愕した。すべて傑作なのだが、とくに「東京のプリンスたち」が凄かった。これはケルアックの傑作「路上」を僅か数十ページで軽々と凌駕していると思う。深沢七郎は正宗白鳥の弟子のように思われているが、両者の文学観はまったく異なっている。深沢が自身の文学上の師としてあげていたのは武田泰淳である。深沢は、人間のあからさまな実相を描くことなどを目的としてはいない。コリン・ウィルソン流に言えば「記述者」ではなくて「説明者」なのだ。その世界観をドストエフスキーのように登場人物の長広舌によって説くのではなく「物語」として展開しているのだ。カフカに似た方法だ。内容は「世界観否定の世界観」「物語否定の物語」とでもいうべきだろうか。やはり荘子思想に酷似している。これは当時の音楽、美術など全ての分野に共通する精神であり、文学では世界中で深沢が一番見事なのではなかろうか。「土に根ざした文学」などというのは全くの誤解であろう。
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[ 文庫 ]
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ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
・村上 春樹
【新潮社】
発売日: 1997-09
参考価格: 540 円(税込)
販売価格: 540 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・村上 春樹
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カスタマー平均評価: 4.5
すまない・・・・・・。 私が馬鹿なのか?それともこの作品が難解すぎるのか?
言いたい事は何と無くわかるのだけれど、抽象的過ぎてついていけない……。
そうかこれが純文学か!
一応三巻全部読破するつもりだが、起承転結がなくて挫けそうになった。なんというかけれんみがないから余計に辛い。森博嗣を初めて読んだときと同じ置いてけぼり感を食らってしまった。
主人公がこの手のにありがちな透明さがあったという以外は……一巻は特に面白みがなかった。ここまで読み手を試す本は初めてだ。 ねじまき鳥の登場と猫の失踪で動き始める、避け得ぬ苦難を迎える夫婦の愛(哀)の物語の序章 「あなたは私と一緒に暮らしていても、本当は私のことなんかほとんど気にとめてもいなかったんじゃないの?あなたは自分のことだけを考えて生きていたのよ。きっと」
この三歳で祖母に預けられた経験を持ち、主人公と出会うまでは絶対的な孤独を背負い生きてきたクミコ(主人公の妻)の言葉に彼女が抱える深き苦悩と夫を心の拠り所としていることが如実に現れています。
最後半、二人がお世話になった預言者である本田さんの第2次大戦時の上官・間宮中尉の外蒙古での諜報活動が独白される中、恐らく陸軍中野学校卒の上級情報将校がソ連の将校・ボリスに全身の皮を剥がれる様が描かれますが、それはまたクミコが抱える苦悩や心の痛みの大きさが比類なきものであることの暗示でもあるのでしょう。
アムステルダムでの最後の英会話でフリージャーナリストの26歳の英国系女性は「ねじまき鳥クロニクル」のsurrealな世界にとても魅かれたと言っていました。ある種の人にとっては限りなく深い意味を持つ、村上さんの幾分かは自伝的な小説です。 個人的に人生のベスト3に入れると思う とある大物芸能人が昔、
「ある女優さんの話なんだけど、その人は『この世界とは別のもうひとつの世界へ行き来することができる』って言ってて。
あっちの世界はこちらの世界とほとんど何も変わらなくて、瓜二つなんだけどあっちの世界では争いがなくてみんな幸せに暮らしてるんだってさ」
とテレビで喋っていた記憶があります。仔細は間違ってるかもしれませんが概ねこういう内容だったはずです。
読まれた方はご存知とは思いますが、この作品の中で主人公は似たような体験をしていきます。
個人的にその話とこの作品を頭の中で並べたとき――
その話は単なる作り話ではなく、
この作品は単なる物語ではないのではないか、という疑問に駆られてしまいます。
作品中ほぼ主人公の一人称で『性質も場所も時代もまったく異なる複数の物事(それ自体が随分と現実実がなく、荒唐無稽な話も少なくない)』聞いたり経験していきます。
全く関連性の無いそれらに対し、主人公は整合性に欠けているのを自覚しながら、説明のつかない、証明しようがないなにかを見出し、あるはずのない共通項を拾い上げ、縫い合わせていく。ある場所に辿り着くために。
他の評価の低い方のレビューを見て、まぁしょうがないかもな、という感覚もあります。
無茶苦茶だし気取りが鼻につくからなぁw
でもこんな表現ができる作家さんってきっと滅多にいないでしょうね。
一部の後半では読んでいて体の震えが止まらなくなりました。本を読んでいてこんな経験は人生初(最後かも)でした。
見えるものだけが、科学で証明されるものだけが全てではない、と思っている方には是非読んでいただきたいです。
ちなみにはじめの大物芸能人は誰かというと『昼メガネ』と再ブレイク芸人にあだ名をつけられていた方ですw
以上、長文失礼しました。 構成力の弱さ 日常の中に潜む些細な出来事が実は深い意味を持っている。その意味に気づくことは幸せなのだろうか?運命付けられているかのように受け入れるしかないいくつかの出来事。 透明な悪意に満ちた世界にパステル調の色彩のヴェールで紗をかける。そして人の心の奥底にそっとメスを入れる。独自の世界観を大上段に構えるわけではなく、静かに語りかけるように説き続ける筆者。
今、村上春樹を語る時に使われている此れらの修辞は、良きに付け悪しきに付けこの作品にこそ相応しいと思う。
しかし、いかんせん構成、展開ともに凡庸で最後まで読み通した充実感が無い。部分的には印象的なエピソードが多いだけに、はっきり言って途中で読むのを止めても読後感は大差無いかもしれない。
蛇足になるが、主人公がひたすらカタカナフードを飲み食いしているだけといった印象が残る。 設定もストーリーも重要ではない不思議な作品 わたしは普段はSF小説以外の小説はほとんど読まない‥のだが、突然、村上春樹を一作品くらい読んでおこうかと思い立った。理由はいくつかあるのだが余り意味がないので省略。
どの作品にしようかと思ったが、迷った末に村上作品が初めて戦争を扱ったという本書にしてみた。
SF小説の場合は重要なのは設定とストーリーになる。どんな世界で、どのような事件が起こり、そしてそれが如何に解決されていくかが重要だ。逆に言えば、そこを要約してしまうと、その作品が魅力的かどうかそれなりに見当が付く。
ところが、本書ではそういった部分にはあまり意味がない。本書の主人公は奥さんと二人暮らしで、司法浪人しながら法律事務所で働いていたらしいが先日退職して今は雇用保険をもらいながら主夫業をしている。結婚直後から飼っていたネコが行方不明になってしまったので、働いている奥さんの代わりに家事の合間に探す努力もしている。
というのが設定であり、スタート時点のストーリーということになる。
そのストーリーの中で主人公たちと関わる人たちが紹介され、その人々が自分の身の上を語っていく。それなりに面白いエピソードもあり、すいすいと読ませてくれる。しかし、肝心のネコが見つかる気配はなく、ストーリーが進展したと感じさせる部分は第一部の範囲ではほとんどない。最後の方で登場するノモンハン戦のエピソードを語る人物の部分が「戦争を扱った」ということだとすれば、これはまた随分と意外な形での扱い方であった。
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[ 文庫 ]
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沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)
・山崎 豊子
【新潮社】
発売日: 2001-12
参考価格: 700 円(税込)
販売価格: 700 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 7円〜
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・山崎 豊子
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カスタマー平均評価: 4.5
こんなサラリーマン人生で正気でいられるはずがない。 アフリカ含め10年の島流し。で、帰ってきたら未曾有の墜落事故の遺族世話係・・・。
この小説のモデルとなる某航空会社は就職人気ランキングで常に上位ですが、この小説を
読むと自分の子供を入れたいとは絶対に思いませんね。主人公・恩地には実在のモデルが
いるというのもビックリですが、この本の映画化にその会社が大反対したというエピソード
も何となく頷けます。あの暑かった夏、TVも新聞も毎日このニュースばかり。そんな日々
が眼前にまた蘇るような、生々しくかつテンポのよいストーリー展開。アフリカ編同様、
あっという間に読了しました。 素晴らしいが、フィクションかノンフィクションか、悩ましい。 本作は、全5冊からなる「沈まぬ太陽」の最大の山場ともいえる、
第3巻・御巣鷹山篇で、周知の通り、1985年夏のJAL123便墜落事故をモデルとしています。
事故の再現に始まり、事故現場の凄惨な様子、遺体収容を巡る人々の憤り、
航空工学の関わる事故原因の究明、遺族への補償交渉などなど、
多岐にわたる取材に基づき、多角的に世界最大最悪の航空機事故が再現されています。
主人公は、先のアフリカ篇で日本帰国が叶いながらも閑職をあてがわれていた恩地元であり、
誠実な彼が、再びより過酷な仕事、すなわち、事故現場における調整役及び、
憤る遺族に対する補償交渉に携わって苦悩し、また人間性の美しさに打たれていきます。
さて、本作は非常に密度が濃くて充実しています。
中盤の、有名な遺書のクダリや、息子を失った母親の手記には、落涙してしまいました。
そして、このような悲しくも美しいエピソードには実名が用いられています。
むろん、著者の、主にご遺族に対する敬意と誠実さの表れであろうし、
以下、自分の抱いた感想が卑しいもののように思えるのですが、
本作では、架空の登場人物と実在・実名の人物とが入り混じって描かれており、
読み手としては混乱をきたしてしまいます。
例えば、序盤に(実名の)生存者に無断で卑劣にも接触してしまう、恩地の宿敵行天は、
複数のモデルの人格を掛け合わせた全くの架空の人物とされています。
明らかにJAL123便墜落事故をモデルにしているものの、大河「小説」である以上、
このような混交があっては、読者としてどう向き合えばいいのか…。
本作の価値を認めるのにやぶさかでないだけに、複雑な思いがしました。 涙なくして読むことができない 事故当時、中学生でしたが、この墜落事故は鮮やかに覚えています。この御巣鷹山篇の冒頭の管制室の緊迫したやりとりで、当時の記憶がよみがえってきました。乗客の、家族の、救援者の、そして管制室の、事故にかかわってその無事を思った人すべての無念と、絶望を思うと、想像を絶します。また、被害者への応対についても、あまりにも家族の気持ちを踏みにじる補償の進め方に、憤慨しました。関係者の無念、家族を失ったことの空虚な思い、こういったことに想いを馳せると、読んでいて涙が止まりませんでした。
前篇でアフリカから呼び戻され、幸福の兆しが垣間見えたかに思えた主人公の恩地もまた、この事故にかかわります。一度狂った歯車が、狂い続けている状況に直面し、読者の私もやるせない気持ちになりました。作品中では、一企業がここまで執拗に一個人に対して報復をするのかという調子で書かれていますが、恩地の扱いが永田町でも話題だと書かれていた文章を見逃すことができませんでした。つまりは、企業のみならず、一国家が恩地に対する攻撃を後押ししていたということです。ふとしたきっかけで職責を果たしたばかりに「アカ」のレッテルを貼られ、一企業どころか、国家からこうも攻撃されるという理不尽が許されていいものかと感じました。
まだ、3篇目までを読んだところですが、企業の社会責任とは何なのか?多面的に考えさせられます。 文芸ではない! 毎年、8月近くになるとどうしても思い出す日航機事故。事故に関しては、いくつも本が出ていますが、それでもこの本は、事故を無視できない人は読むべきです。他の究明本にない、独自の視点がいくつか盛り込まれています。著者の本は、どれもそうですが、事実に裏づけられた迫力に脱帽です。 百万の言葉を弄するより、心を打たれたのは この作品は、取材した事実に基づき、小説的に再構築した作品である、
という事になっている。しかし、航空史上最大のジャンボ機墜落事故の
克明な記録として、遺族の遺体確認や補償交渉のリアリティー、生々しさ
には圧倒される。作者の詳細な取材力には感心する。
しかし、もっとも心を打たれたのは、迷走する飛行機の中で家族に向けて
書かれた遺書を読んだ時だった。百万の言葉を弄するより、手帳に書か
れた短い文章の中に家族への思いや無念さが伝わって来る。
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[ 文庫 ]
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劒岳―点の記 (文春文庫 (に1-34))
・新田 次郎
【文芸春秋】
発売日: 2006-01
参考価格: 720 円(税込)
販売価格: 720 円(税込)
( 通常2〜5週間以内に発送 )
中古価格: 197円〜
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・新田 次郎
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カスタマー平均評価: 3.5
測量官の記録として 平成20年の年越しに本屋に行ったところ、平台に置いてあったので即買いしました。
内容は、測量官の記録だと思えば面白く、小説だと思えば稚拙な内容です。
山が好きな方は、読んでも損はしないでしょう。
ただし、加藤文太郎伝を読まれた方はガッカリするかも? 日本の技術力にびっくり。 今度、映画化されるという話を仕事を通じて知り、キャストも気になったので
読んでみました。
浅野忠信さんの配役はわかりませんが、日本の明治時代の技術力がこんなに高いものだとは思いませんでした。
初めて、剣岳に登頂しようとする山岳会、それを断固阻止しようとする測量隊。
そのはざ間に揺れる技術者。
そして、剣岳を登ろうとするその時、ドラマが起きる。
本当に内容が濃いです。ぜひ、映画化される前に予習の意味で読んでみることをお勧めします!
映画化も非常に楽しみです。
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[ 文庫 ]
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流星ワゴン (講談社文庫)
・重松 清
【講談社】
発売日: 2005-02
参考価格: 730 円(税込)
販売価格: 730 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・重松 清
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カスタマー平均評価: 4.5
そんなにいい作品とは自分は思いませんが・・・ 彼の作品を読むのは本作が初めてですが,
自分には合いませんでした.
(これはセンスの問題なのでどうしようもないですが・・・)
性的描写を否定する気はありませんが,
いまいちリアリティに欠けるんですよねぇ.
嫌悪感しか抱きませんでした.
ストーリーテリングも凡庸な印象を受けます.
一般の評価が高いだけに残念です.
おそらくこのレビューを見る人はこの作品に興味があって
見るのでしょうが,好みは人それぞれということで
許してやってください. 心にしんみりと響く一冊 緊迫感のある作品ではなく、心にしんみりと響く作品である。読み終えたときに、色々と感じることが多い作品だと思う。
さて、本作品の内容である。
物語は、主人公・永田一雄(通称カズ)が「死んじゃってもいいかな…」と思うところから始める。カズには、妻と息子がいるが、妻は浮気で、息子は登校拒否&家庭内暴力という状況。さらに、カズ本人は、リストラにあって無職。まさしく、サイテーで最悪の状況。
そんな折に、現われたのが、“流星ワゴン”に乗る橋本さん親子。
カズは、流星ワゴンに乗って、過去を振り返る旅に出る。
果たして、カズは現在のサイテーでサイアクの状況を変えることができるのか?…というのが本作品だ。
物語は、常に主人公・カズの視点で語られる。カズは、父であり、夫でもあり、さらに息子でもある。そういった様々な立場のカズが、何を思い、何を考え、どう行動するか?これが本作品の見どころである。
どちらかという男性向けの作品なのかもしれないが、女性にも読んで頂きたい一冊である。
自分の生活を見つめなおす。 妻との離婚、息子の登校拒否、暴力、失職など積み重ねてきたことが
崩れていき、追い詰められた主人公カズ。
彼の前に5年前に交通事故で死んだ初対面の親子が現れた。
彼らの車オデッセイに乗せられ、時間軸を超えて彼は自分の過去と向き合っていく。
自分とはまったく境遇が違い、性別も違うけれど
得るものはありました。
自分が先が見えている状態で、まだ完全に心が離れていない過去の家族たちと向き合う。
未来が崩れていくことを知りながらどう接するのか
未来は変えられるのか
涙を流すほどの感動はなかったけれど、自分のこれからの生活、
家族との付き合い方を見直すきっかけとなると思います。
精神的に弱いカズは自分のことしか見えないようなところがあって、
過去の妻と息子の行動を知ることによりショックを受ける。
このときから始まっていたのかという自分が見抜けなかった悔む思いと、
いまからでもどうにか変えることができるのではと必死になる。
でも進んだ未来は変えられない
悩んでいた妻と息子を知ることで二人のことを考えてあげる気持ちが強くなっています。
現実は変わらないけど、自分自身の心掛けがかわることで、
まだこれからの未来は修復できる、という考え方を伝えてくれました。
若い父チュウさんとのやりとりも橋本さん親子とのやりとりも息子との距離を縮めてくれました。
生きることを見つめなおしたいときにおススメしたい本です
流星ワゴン 大絶賛されているのを事前に知っていたので期待が大きすぎたかも。
驚くような展開とかわくわく感があるような物語ではなく、
しんみりと心に響くような本だった。
自分の親が「親」という役割を通してではなく、一人の人間、
それも自分と同い歳の時にどういう人間だったのか。
興味はあるが、怖い。 父と子の愛情に泣ける・・・ 読み終えて、母と子はよくあっても、父と子の愛情をここまで描く作品ってあまりないんじゃないかと思った。落ち込んでいる人、今しんどい人にとって、前向きになり、元気がもらえる本。
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[ 文庫 ]
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博士の愛した数式 (新潮文庫)
・小川 洋子
【新潮社】
発売日: 2005-11-26
参考価格: 460 円(税込)
販売価格: 460 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円〜
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・小川 洋子
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カスタマー平均評価: 4.5
「ああ、静かだ」 事故の後遺症で80分しか記憶が持たない数学博士と、その博士の元に派遣された家政婦親子のふれあいを描いた詩のような小説です。
記憶が持たないがために起こる色々な齟齬を主人公の家政婦が上手く乗り越え、博士との会話を楽しみはじめる様子。
家政婦の一人息子を√と名づけ、愛情をそそぐ博士の様子。
それらが、博士の語る数学の式を織り込んできれいな文で綴られています。
博士が一人で暮らす寂しい印象の離れの一軒屋。
主人公が家政婦としてやってきてから清潔感がもどり、家政婦の息子が訪ねてくるようになると賑やかになり、読んでいるとホッとした気分になってきます。
愛情をそそがれて喜ぶ子供と、愛情をそそぐことを喜ぶ老人の姿に読んでいて暖かい気分になれます。
難解な数学の問題を解いたあとに「ああ、静かだ」とつぶやく博士の様子がとても印象的です。
胸にじわっとくるのもありよね。ちょっとしんみりしたい、本。 透明な、あまりに透明な。
本当にスイマセン、小川洋子さんという名前があまりに平凡で逆に覚えられず、
そんなこんなでしかも映画化?
売れちゃうとね、あまのじゃくでね、遠ざかっちゃうんですのよ。
まぁいいか、そのうちご縁があれば読むだろう。くらいに思っていた。
薬指の標本と並べて、一気に読んだ。
あぁ、コトバがたらない。
ほんわりした温かい光の差し込む、ほこりっぽい小さな部屋に毛布を持ち込んで、
ひざを抱えて本を読む、ほっぺたの真っ赤な女の子のイメージ。
なんだそりゃ。
でも、そうなんだってば。
ストーリーを説明したら、多分3行で終わってしまう。
80分しか記憶の持たない教授と、お手伝いさんと息子の物語。
エンドも明らかに見えているし、散りばめられたエピソードもタイガースのそれ以外は、もうまっこう予定の範囲内。
だのに、なぜかこの話は、多分自分でも気づいていない、自分の一番シアワセな心象風景を、
むんずと掴んでつきつけてくるような、気がついたらすっげぇ素直になっちゃって自分でもびっくり、
そんなシアワセな驚きに満ちている。 やさしい気持ちになりました。 矛盾点が気になりながらも、最後までゆったりした気持ちで読める小説でした。
博士の優しさが親子を癒していて、親子の優しさが博士を支えていて、
間を取り持つ数学と野球??
必要以上の起承転結を求めない私にとって、
この独特の空気感としみわたる優しさがとても心地よかったです。 陳腐 全体的にほのぼのした話で、80分しか記憶が持たない数学オタク教授という、
ちょっと目先の変わった設定があるおかげで、
いかにも今受けしそうな本だけど、私からすれば非常に陳腐な本。
一言でいえば、起承転結がない本。
だから、つまらない。
延々、数学話で引っ張る。
はじめは「へぇー」と思うけど、同じネタを繰り返されても・・・。
大好きな本です。 穏やかな、でも心が痛くなるような物語です。
文章や感覚が女性的な感じで、女性の方にお勧めです。
大好きな本のうちの一冊です。
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